第四部:無機化学の基礎 無機化学とは(基本)
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ここでは,無機化学の基本に関連し, 【無機化学とは】, 【扱う元素の分類について】 に項目を分けて紹介する。
無機化学とは
我々の日常生活には,驚くほど多種類の物質が関与している。金属,鉱物,食物や天然繊維など自然の産物から,それに似せて作った人工品が多数開発されている。これらにより人間は,健康で文化的な生活を営むことができる。これらの物質は,有機物(有機化合物),無機物(無機化合物)の何れかに分類できる。
次に,用語「有機化学」,「有機化合物」,「無機化学」,「無機化合物」について,広辞苑における解説を抜粋して紹介する。
「有機化学」( organic chemistry )
“化学の一分野,有機化合物を研究の対象とする学問”,
「有機化合物」( organic compounds )
“炭素を含む化合物の総称。ただし,炭素の酸化物や炭酸塩などは無機化合物。
以前は有機物すなわち動植物を構成する化合物および動植物により生産される化合物を,生命力なしには人為的に合成できないものと考え,無機化合物すなわち鉱物性の物質と区別して有機化合物といったが,今日では単に便宜上の区分。”と解説している。
「無機化学」( inorganic chemistry )
“化学の一分野,すべての元素及び単体・無機化合物について研究する学問”,
「無機化合物」( inorganic compounds )
“有機化合物以外の化合物の総称。炭素の酸化物や炭酸塩は無機化合物に含める。”と解説している。
このように,無機化学は,有機化学の対概念として定義されている。このため,無機化学は非有機化合物を研究対象とする化学と考えてよく,対象とする元素,化合物の多様性と複雑性のため,それらの性質を簡単な理論で説明できない分野でもある。従って,無機化学は,研究対象により細分化されている。
その中には,錯体化学,有機金属化学,地球化学,鉱物化学,温泉化学,海洋化学,大気化学,宇宙化学,放射化学など,特異性に注目した分野として確立しているものも少なくない。
【参考】
炭素を含む無機化合物の例
一酸化炭素( CO )や二酸化炭素( CO2 )などの酸化物,炭化ケイ素( SiC ),炭化ホウ素( B4C )などの炭化物,貝殻や石灰岩( CaCO3 )など炭酸( H2CO3 )と金属の化合物である炭酸塩などが挙げられる。当然のことながら,炭素単体(黒鉛,ダイヤモンドなど)は無機に分類される。
錯体( complex )
配位結合や水素結合によって形成された分子の総称で,古くは錯塩と呼ばれていた。狭義には,金属と非金属の原子が結合した構造の化合物(金属錯体)をいう。
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扱う元素の分類について
【元素と周期表】や【元素の分類】で紹介したように,元素は,その化学的性質により典型元素と遷移元素に分けられるが,他に金属特性に注目して,非金属元素と金属元素にも分けられる。なお,分野によっては,金属元素と非金属元素の両性質を持つ元素を半金属元素として分類する場合もある。
金属( metal )に関する明確な定義はないが,一般には,水銀を除き固体状態で, 塑性変形が容易で,展延加工ができ,不透明で輝くような光沢(金属光沢)があり,電気および熱をよく伝導する物質を金属と称している。
無機化学の解説では,高等学校教育などで扱われる分類,すなわち,これまでの解説に用いてきた下に示す周期表で,半金属元素と分類される元素の中からより非金属に近いホウ素( B ),ケイ素( Si ),ヒ素( As ),テルル( Te ),アスタチン( At )を非金属元素に,残りの半金属元素のゲルマニウム( Ge ),アンチモン( Sb ),ポロニウム( Po )を金属元素に分類して扱う。
ここ【無機化学の基礎】では,無機物質の特性(光,色,電気特性など)と評価方法の基本について紹介する。
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