第一部:化学と物質構造・共有結合
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共有結合とは
共有結合( covalent bond )
原子間で電子を共有しあうことで生じる化学結合である。
イオン結合は,既に紹介したように,結合する 2原子間の電気陰性度の差が大きい場合に,電気陰性度の小さい原子の最外殻電子が,電気陰性度の大きい原子に引き寄せられる。
この際に,電気陰性度の小さい原子のイオン化エネルギーが小さく,電気陰性度の大きい原子の電子親和力大きい場合には,結合に関わる電子対が電子親和力の大きい原子の電子軌道に帰属することで安定し,これにより発生する両原子間の静電的引力による化学結合である。
しかし,【電気陰性度】,及び【双極子とは】で解説したように,分子内結合をイオン結合と共有結合とに明確に区別できる化合物は少なく,多くの化合物では,電気陰性度の差に応じた電子対の帰属程度,すなわちイオン結合性と共有結合性の寄与度で区分される。
例えば,水素( H2 ),酸素( O2 )などの同種元素による等核二原子分子では,電気陰性度の差がなく,共有結合性 100%の分子になる。
一方,例えば,塩化水素( HCl )のように,電気陰性度の異なる異種元素の二原子分子では,【双極子とは】で紹介したように,分子内結合を共有結合性 82%,イオン結合性 18%と評価される。
このように,共有結合性が高い分子が,共有結合の分子として扱われるのが一般的である。
【参考】
共有結合( covalent bond )
原子同士が電子を共有しあうことで生じる化学結合である。
イオン結合( electrovalent bond )
正の電荷を持った原子,又は分子(陽イオン)と負の電荷を持った原子,又は分子(陰イオン)とが静電気力(クーロン力,静電的引力と静電的斥力)によってできる結合をいう。
配位結合( coordinate bond )
結合する二つの原子において,結合に関わる電子対が一方の原子のみから提供される化学結合である。
配位結合は,ルイス酸とルイス塩基との結合でもある。電子対を受け取る物質はルイス酸,電子対を与える物質はルイス塩基となる。
金属結合( metallic bond )
いくつかの電子を出した陽イオン(正電荷を持つ金属の原子核)と,自由電子(全体に広がる負電荷)とによる結合。
イオン化エネルギー( ionization energy )
気体状態の単原子(又は基底状態の分子)から原子やイオンなどから電子を取り去るのに要するエネルギー,すなわち,取りだされた電子の結びつきの強さの目安で,エネルギーが小さいほど陽イオンになり易く,陽性が強いという。
電子を 1個引き抜くのに必要なエネルギーを第一イオン化エネルギーといい,電子を 1個失った状態からさらに 1個引き抜くときのエネルギーを第二イオン化エネルギーという。
電子親和力( electron affinity )
電子親和力は,1個の原子(又は分子)に電子を付加する際に放出するエネルギーである。放出するエネルギーが大きいほど電子を受けとった状態(陰イオン)が安定であることを意味する。
エネルギーがマイナスの場合は,電子を受け取るためにエネルギーが必要であることを意味し,陰イオンになり難いことを意味する。
電気陰性度( electronegativity )
化学結合にあずかる電子(共有電子対)を引き寄せる力の強弱を表す尺度である。
この尺度を直接測定することができないので,分子内の電子分布と直接関係のある分子の諸性質の中で,観察可能なものに基づいて,電気陰性度の尺度を決める方法が種々提案されている。
例えば,二原子分子の解離エネルギー,イオン化エネルギー,電子親和力,核四極子モーメント,双極子モーメントなどを用いて求める方法が複数提案されている。
この中で,広く用いられているのは,二原子分子の解離エネルギーから求めたポーリング提案の値である。
双極子( dipole )
分子内に生じた電子の偏りを原因として発生する電荷のひずみである。すなわち,分子構造の中で,正の電荷の重心と負の電荷の重心が一致しない電荷の配置を双極子という。
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