化 学 (物質の構造)

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  【電気陰性度とは】

 分子内の原子同士の結合を理解するため,【分子内結合】で解説した「価電子」,「酸化数」,に加えて「電気陰性度」の理解が必要である。
 
 電気陰性度( electronegativity )とは,化学結合にあずかる電子(共有電子対)を引き寄せる力の強弱を表す尺度である。
 この尺度を直接測定することができないので,分子内の電子分布と直接関係のある分子の諸性質の中で,観察可能なものに基づいて,電気陰性度の尺度を決める方法が種々提案されている。
 例えば,二原子分子の解離エネルギー,イオン化エネルギー,電子親和力,核四極子モーメント,双極子モーメントなどを用いて求める方法が複数提案されている。
  この中で,広く用いられているのは,二原子分子の解離エネルギーから求めたポーリング提案の値である。
 
 ポーリングの式
 電気陰性度は,ポーリングにより結合のイオン性(電子移動の度合)という概念を分子の解離エネルギーに基づいて定義されたものである。
 すなわち,元素 A と B の 2 原子分子 AB の結合エネルギー D(AB) は、各元素の等核 2 原子分子 A2 の結合エ ネルギー D(AA),B2 の結合エ ネルギー D(BB) の平均よりも大きくなるのは A – B 間の結合がイオン性を帯びている(電子が一方の元素の方に移動)ためとし,A – B 結合のイオン性を定量化する式として
      ⊿= D(AB) – ( D(AA)・D(BB) )1/2
を提案し,電気陰性度(χ)の差は,イオン性の平方根に比例するものとして,
      |χA – χB| ∝ ⊿1/2
 と定義したのである。
下表にポーリングの提案した主な元素の電気陰性度を示す。
 
 ● 一般的には,電気陰性度の小さい元素は,陽性が強く(陽イオンになり易い),大きい元素は,陰性が強い(陰イオンになり易い)と考えてよい。
 ● 電気陰性度に差のない酸素( O2 )などの 等核二原子分子などは完全な共有結合になる。差の大きい原子の分子( 例えばNaCl など)は,イオン結合になり易い。差の程度が中間的な化合物は,差に応じて共有結合性とイオン結合性の程度が異なる。
 例えば,【参考】に示したように,電気陰性度の差が 0.4 の結合( C – H )については共有結合性 97 %,差が 1.0 の結合( H – Cl )については共有結合性82%と評価されている。


主な元素の電気陰性度(ポーリング)
出典:日本化学会編,「化学便覧:基礎編Ⅱ」(丸善)から抜粋
周期 1 族 2 族 13 族 14 族 15 族 16 族 17 族
1 H : 2.1
2 Li : 1.0 Be : 1.5 B : 2.0 C : 2.5 N : 3.0 O : 3.5 F : 4.0
3 Na : 0.9 Mg : 1.2 Al : 1.5 Si : 1.8 P : 2.1 S : 2.5 Cl : 3.0
4 K : 0.8 Ca : 1.0 Ga : 1.6 Ge : 1.8 As : 2.0 Se : 2.4 Br : 2.8
5 Rb : 0.8 Sr : 1.0 In : 1.7 Sn : 1.8 Sb : 1.9 Te : 2.1 I : 2.5
6 Cs : 0.7 Ba : 0.9 Tl : 1.8 Pb : 1.8 Bi : 1.9 Po : 2.0 At : 2.2
注:実際の環境でイオンになり易いか否かは,別途に「イオン結合」で説明する。電気陰性度は分子内結合の共有結合性,イオン結合性の評価など分子内結合の評価に用いられる。
 ポーリングの電気陰性度は,原子価状態の違いを反映していない欠点を有する。この欠点を補うものに,イオン化エネルギーと電子親和力の平均から求めたマリケンの電気陰性度がある。

 

  【参考】

 ● ポーリング
 アメリカの物理化学者ライナス・カール・ポーリング( 1901 ~ 1994 ),結晶構造,分子構造の研究,量子力学的共鳴理論を確立。共有結合半径やイオン半径を決定。1954年ノーベル化学賞,1962年ノーベル平和賞受賞。
 ● イオン結合性と共有結合性
 分子の結合のイオン結合性の評価には,ポーリングの電気陰性度の差を用いた評価の他に双極子モーメントと原子間距離とから評価する方法がある。
 電気陰性度の差による評価


電気陰性度の差とイオン結合性
  電気陰性度の差    0.0    0.4    1.0    1.2    1.7    2.0    2.4    2.8    3.2 
  イオン結合性(%)    0    4    22    30    51    63    76    86    92 
  共有結合性(%)    100    96    78    70    49    37    24    14    8 

 双極子モーメントと原子間距離からの評価
 双極子( dipole )とは,分子内に生じた電子の偏りを原因として発生する電荷のひずみである。
 双極子の程度を比較する場合に,電荷の大きさδ,電荷の正と負の重心間の距離γとすると,双極子モーメント(方向ベクトルと大きさの積)μ = δ・γ が得られる。
 二原子分子の場合,分子の構造を考慮する必要が無いので,【双極子とは】で紹介したように,実測した双極子モーメントと原子間距離からその分子のイオン結合性と共有結合性が評価できる。

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