化 学 (有機化学)

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 【有機化学とは】

 我々の日常生活には,驚くほど多種類の物質が関与している。食物や衣料など自然の産物から,それに似せて作った人工品が多数開発されている。これらにより人間は,健康で文化的な生活を営むことができる。
 これらの物質は,有機物(有機化合物),無機物(無機化合物)の何れかに分類できる。
 
 【無機化学の基礎】でも紹介したが,広辞苑における用語「有機化学」,「有機化合物」,「無機化学」,「無機化合物」の解説(抜粋)は次の通りである。
 「有機化学」( organic chemistry )とは,“化学の一分野,有機化合物を研究の対象とする学問”,( inorganic chemistry )については,“化学の一分野,すべての元素及び単体・無機化合物について研究する学問”と解説している。
 「無機化合物」( inorganic compounds )に対しては,“有機化合物以外の化合物の総称。炭素の酸化物や炭酸塩は無機化合物に含める。”と解説され,「有機化合物」( organic compounds )に対しては,炭素を含む化合物の総称。ただし,炭素の酸化物や炭酸塩などは無機化合物。”と解説されている。
 
 広辞苑では,さらに“以前は有機物すなわち動植物を構成する化合物および動植物により生産される化合物を,生命力なしには人為的に合成できないものと考え,無機化合物すなわち鉱物性の物質と区別して有機化合物といったが,今日では単に便宜上の区分。”と解説している。
 すなわち,有機化合物の数は,生物由来の化合物より人為的に合成された化合物の数が圧倒的に多くなった今日では,用語としての“有機化合物”はふさわしくないとも言えるが,広辞苑に解説されるように,化学の歴史で便宜上の区分として有機化合物と無機化合物が用いられてきた。

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 【有機化合物とは】

 有機化合物には,炭素原子( C )を骨格として,水素( H )のみで構成するもの,水素に加えて酸素( O )や窒素( N ),硫黄( S )および塩素( Cl )などのヘテロ原子が炭素鎖に結合するものなど,化合物の構造は多種多様である。
 ヘテロ原子( hetero atom )とは,有機化学分野で,炭素と水素以外の原子を指す。

 これは,【電子雲の重なり】で紹介したように,複数の混成軌道( sp3 混成軌道,sp2 混成軌道,sp 混成軌道)で分子を形成できることなど炭素の特異な性質による。
 また,有機化合物の一般的な特性として,分子集合である液体や固体は,無機化合物に見られる金属結合,イオン結合や水素結合などに比較し,比較的弱い分子間力(ファンデルワールス力)で凝集する場合が多いため,沸点・融点の低いものが多い特徴がある。

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 【参考】

 有機化合物から除外される炭素を含む化合物の例
 グラファイト,無形炭素,タイヤモンドなどの炭素単体,炭化ケイ素( SiC ),炭化カルシウム( CaC2 )などの炭化物,一酸化炭素( CO ),二酸化炭素( CO2 )などの酸化物,二硫化炭素( CS2 )などの硫化物,窒化炭素( C3N4 )などの窒化物,炭酸ナトリウム( Na2CO3 ),炭酸カルシウム( CaCO3 )などの炭酸塩,ニッケルカルボニル( Ni(CO)4 )などのカルボニル化物,シアン化水素( HCN ),シアン酸塩(例えば NaCN )などのシアン化合物,チオシアン酸( HSCN ),チオシアン酸塩(例えば NaSCN )などのチオシアン化合物などである。
 
 ハロゲン化物のホスゲン( COCl2 )は無機化合物に分類されるが,例えば,CCl4 無機化合物として扱う場合は四塩化炭素( carbon tetrachloride )と呼び,有機化合物として扱う場合はテトラクロロメタン( tetrachloromethane )と呼ぶことが IUPAC名として許容されており,必ずしも有機化合物の区分に明確な規定はない。
 
 有機物(有機化合物)の用語由来
 【化学のはじまり】で紹介したように,17世紀に化学が錬金術から決別し科学になろうとする運動が始まり,1774年のラボアジェによる“質量保存の法則”の発見で,化学が学問として独り立ちしたといわれている。
 
 有機物( organic matter(s) )は,17 世紀から 18 世紀にかけての生命の不思議を研究する科学(生気論)の概念“有機体(生物: organism )の体内でしか製造できない化合物”に対して,19世紀はじめに生物学者(イェンス・ベルセリウス)によって命名されたといわれている。
 これによって,物質は,有機物と無機物(有機物ではない物: inorganic matter(s) )とに区分されることになった。
 その後まもなくして,無機物のアンモニア( NH3 )とシアン酸( HOCN )から得られるシアン酸アンモニウム( NH4OCN )の加熱で,生物からしか生成されないと考えられていた尿素( CO (NH2)2 )の合成法(ヴェーラー合成)が発見( 1828 年:フリードリヒ・ヴェーラー)された。
 これを契機に,各種の有機化合物が生物の関与なしに合成できるようになり,有機物は本来の定義から逸脱することになった。しかし,その後も用語は変更されずに,今日に至るまで生物由来とうい概念を外した形での有機化合物(=有機物)として,無機化合物との便宜的な区分に用いられ続けている。

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