第四部:無機化学の基礎 生活と無機(建築材料)
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ここでは,構造物・建築物に用いる材料の紹介し際し, 【構造物とは】, 【建築物とは】, 【構造物・建築物用材料について】 に項目を分けて紹介する。
構造物とは
「社会資本とは」で紹介するように,構造物( structures )と言った場合に,一般的には,鉄道,道路,ダム,堤防,ビルなど,複数の材料や部材で構成され,基礎で重量を支る構造の造作物をいう。
「土木・建築にかかる設計の基本」(国土交通省)
分野として,土木分野および建築分野の両分野において設計される構造物全般を対象としている。ここでいう構造物とは,「目的とする機能を持ち,作用に対して抵抗することを意図として人為的に構築されるもの」としている。
また,次に紹介する建築物を除く構造物を土木構造物と総称され,単に構造物といった場合には,後者の土木構造物を指す場合が多い。
構造物は,主要部材を構成する材料により分類される。例えばコンクリート材料を主に用いて作られるコンクリート構造,主要な部材を鋼材で作られる鋼構造,木材を主に用いられる木質構造,盛土のように土を使用した土構造に分けられる。
【参考】
構造( structure,construction )
広辞苑
① いくつかの材料を組み合わせてこしらえられたもの。また,そのしくみ。くみたて。「柔―のビル」
② 全体を構成する諸要素の,互いの対立や矛盾,また依存の関係などの総称。「汚職の―」
デジタル大辞泉
1 一つのものを作り上げている部分部分の材料の組み合わせ方。また,そのようにして組み合わせてできたもの。仕組み。「家の構造」「体の構造」「文章の構造」「構造上の欠陥」
2 物事を成り立たせている各要素の機能的な関連。また,そのようにして成り立っているものの全体。「汚職の構造が明らかになる」「経済の二重構造」「社会構造」「精神構造」
3 ある集合で,演算または二点の遠近関係の規定などの数学的性質が与えられるとき,この集合の要素間の関係。数学的構造。
鋼構造(steel structure)
鋼材のみから構成される構造物。一般には整備された工場で部材を作成し,これを現場に運搬・架設して構造物とするものである。鉄鋼は現在までに約 200年の歴史を持っており,構造的に信頼性が高いこと,現場での作業が他の構造のものに比べて容易であること,現場での工事期間が短いこと,我が国は良質の鋼材の生産国で熟練度の高い専門の製作業者に恵まれていることなどのため,広い範囲の構造物に用いられている。(「第二版 鉄道技術用語辞典」丸善)
鋼管構造(steel tubular structure)
鋼管を部材として使用した構造。一般には,柱部材として橋脚やラーメン脚に用いられることが多い。鋼管内部をコンクリートで充填し,梁あるいはアーチ部材として使用されることもある。(「第二版 鉄道技術用語辞典」丸善)
コンクリート構造(concrete structure)
コンクリートを主要材料に用いた構造をいい,棒鋼などで補強された構造として,鉄筋コンクリート構造,プレストレストコンクリート構造などがある。また,鋼繊維,炭素繊維などの繊維で補強されたものもある。
鉄筋コンクリートやプレストレストコンクリートでは,コンクリートは主に圧縮力を分担し,鉄筋は主に引張力を分担する。(「第二版 鉄道技術用語辞典」丸善)
合成構造(composite structure)
異種の材料からなる部材を合成して一体化した構造。合成桁や SRC桁などの総称。(「第二版 鉄道技術用語辞典」丸善)
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建築物とは
建築物( architecture,building )とは,一般的には,ビルなどの建築された物体,構造物をいうが,法律用語(建築基準法)では,建築物は土地に定着する工作物のうち,
① 屋根及び柱若しくは壁を有するもの,
② ①に附属する門若しくは塀,
③ 観覧のための工作物,
④ 地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所,店舗,興行場,倉庫その他これらに類する施設(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨線橋,プラットホームの上家,貯蔵槽その他これらに類する施設を除く。)をいう。
なお。刑法や文化財保護法では,用語として建造物が用いられているが,建造物には建築物の他に土木構造物の一部も含まれる。
建築物を建てるために使用される材料は,建築材料(建材)といわれる。建材には,石材,木材,鉄鋼材,非鉄金属材,ガラス材,粘土焼成品(瓦,煉瓦,タイルなど),高分子材料(プラスチック,合成繊維,ゴム,アスファルト,塗料,接着剤など),モルタル,コンクリート,石膏,植物繊維(わら,紙など)などのあらゆる材料が用いられている。
この中で,主要部材での使用量の多い材料は,基礎・柱・梁・壁等に用いる鉄筋・鉄骨等の鋼材,及びコンクリート材である。
【参考】
建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)
第一章 総則
第一条(目的)
この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。
第二条(用語の定義)
この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 建築物
土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)、これに附属する門若しくは塀、観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨こ線橋、プラットホームの上家、貯蔵槽その他これらに類する施設を除く。)をいい、建築設備を含むものとする。
二 特殊建築物
学校(専修学校及び各種学校を含む。以下同様とする。)、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、市場、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、旅館、共同住宅、寄宿舎、下宿、工場、倉庫、自動車車庫、危険物の貯蔵場、と畜場、火葬場、汚物処理場その他これらに類する用途に供する建築物をいう。
三 建築設備
建築物に設ける電気、ガス、給水、排水、換気、暖房、冷房、消火、排煙若しくは汚物処理の設備又は煙突、昇降機若しくは避雷針をいう。
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構造物・建築物用材料について
構造物は,主要部材を構成する材料により分類される。例えばコンクリート材料を主に用いて作られるコンクリート構造,主要な部材を鋼材で作られる鋼構造,木材を主に用いられる木質構造,盛土のように土を使用した土構造に分けられる。
コンクリート構造には,ダム,橋台やアンカーレージに用いるコンクリートのみの無筋コンクリート構造( Plain Concrete ),柱やスラブなど通常のコンクリート構造に用いる鉄筋で引っ張り力を補強した鉄筋コンクリート構造( Reinforced Concrete ,略称 RC ),長大スパンのコンクリート橋,タンクなどに用いる鋼線に強い引張応力をあらかじめ作用させたプレストレストコンクリート構造( Prestressed Concrete ,略称 PC )に分けられる。
鋼構造に用いられる鋼材は,用途に適した合金成分,特性を付与した各種鋼材が準備されている。
例えば,建築物の鉄骨など一般構造用に用いられる一般構造用圧延鋼( Rolled steels for general structure;SS材),橋梁,船舶,車両,石油貯槽,容器及びその他の溶接構造物に用いる溶接構造用圧延鋼(Rolled steels for welded structure;SM材) ,建築構造物に用いる建築構造用圧延鋼(Rolled steels for building structure;SN材), 橋梁,建築,その他の構造物に用いる溶接構造用耐候性熱間圧延鋼(Hot-rolled atmospheric corrosion resisting steels for welded structure;SMA材) ,車両,建築,鉄塔及びその他の構造物に用いる高耐候性圧延鋼(Superior atmospheric corrosion resisting rolled steels;SPA材) がある。
特殊用途に用いられる鋼材には,ステンレス鋼(Hot-rolled stainless steel;SUS材) ,溶融亜鉛めっき鋼(hot-dip zinc-coated steel sheet and strip;SGH材,SGC材) ,溶融55%アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼(hot-dip 55% aluminium-zinc alloy-coated steel;SHLH材) ,溶融亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金めっき鋼(hot-dip zinc-aluminium-magnesium alloy-coated steel;SGMH材) ,耐摩耗性又は耐化学腐食性のある鋼又は合金を,低炭素鋼,低合金鋼などの母材と張り合わせたクラッド鋼板(clad steel plates sheets) などがある。
構造物などのインフラストラクチャーの概要やそれらに用いる鉄鋼材料については,「社会資本とは」で紹介している。また,鋼材を含む各種金属材料の特徴と腐食・防食に関しては,「腐食・防食とは」に紹介している。
この章「建築・土木材料」では,金属以外の主要な無機材料として,建築物に多く用いられているコンクリート材料(セメント,モルタル),石膏(漆喰),ガラスについて紹介する。
【参考】
鋼(steel, ferrous metal)
読み「はがね」,「こう」,鉄を主成分として,一般に約 2%以下の炭素と,その他の成分を含むもの。【JIS G 0203「鉄鋼用語」】
炭素鋼(carbon steel)
鉄と炭素の合金で炭素含有率が,通常 0.02~約 2%の範囲の鋼。少量のけい素,マンガン,りん,硫黄などを含むのが普通である。便宜上,炭素含有量又は硬さ(強度も含まれる。)によって炭素鋼は,更に次のように分類される場合がある。
炭素含有量による分類(低炭素鋼,中炭素鋼,高炭素鋼),硬さによる分類(極軟鋼,軟鋼,硬鋼)。【JIS G 0203「鉄鋼用語」】
鉄鋼(steel, iron and steel)
鉄を主成分とする材料の総称として使われるが,普通は炭素鋼 (鉄と炭素 2.0%以下の合金) を意味する。
工業的には純鉄,鋼,鋳鋼,合金鋼,銑鉄,鋳鉄,フェロアロイ (→合金鉄 ) を鉄鋼ということが多い。純鉄は工業材料としては限られた用途しかなく,大部分の鉄は炭素との合金すなわち鋼として,あるいは他の元素を含む合金鋼として使われる。世界中で使われている金属材料のうち重量で 95%が鉄鋼である。
合金鋼(alloy steel)
鋼の性質を改善向上させるため,又は所定の性質をもたせるために合金元素を 1種又は 2種以上含有させた鋼。【JIS G 0203「鉄鋼用語」】
コンクリート( concrete )
セメント(cement)に砂(細骨材),砂利(粗骨材),水などを混ぜ,凝固させた硬化物をコンクリートという。なお,セメントを水で溶いて混ぜたものをセメントペーストといい,セメント,水,細骨材のみの硬化物をモルタル(mortar)という。
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