第四部:無機化学の基礎 生活と無機(建築材料)

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  ここでは,建築物などに実用されるガラスに関連し, 【ガラスとは】, 【けい酸塩ガラスの分類例】, 【機能・用途によるガラスの分類】 に項目を分けて紹介する。

  ガラスとは

 化学的には,物質のある状態をガラス状態といい,ガラス状態の物質に対し物質の種類を表す言葉としてガラス( glass )が用いられている。
 すなわち,窓ガラスなどの古くからの一般的なイメージであるガラス(けい酸塩ガラス)は,ガラスの一種類である。

 ガラス状態( vitreous state ,glass state ,glassy state )
 多くの物体では,融解液体の温度を徐々に下げると,一定温度(凝固点)で固化(結晶化)する。
 適当は条件下で,液体を急激に冷却すると,融点以下でも固体にならない過冷却状態を経由して,明確な凝固点を示さず急激に粘性が大きくなり,液体状態の粒子配置(無秩序な配列)が保持された状態(非晶質)で固化(ガラス化現象する。この状態をガラス状態という。

 ある温度でガラス化する場合に,物性値(熱膨張率や比熱など)が不連続に変化する。この変化をガラス転移( glass transition )と呼ぶ。
 ガラス状態の物質(非晶質の固体)を加熱してゆくと,ある温度(狭い温度範囲)で急激に剛性や流動性が変化し,液体やゴム状態に変わる。この温度をガラス転移点( Glass transition temperature : Tg )という。
 なお,ガラス転移点は,同じ組成の結晶固有の融点とは異なり,加熱条件などに依存して変わり,物質特定の値ではない。すなわち,融点は物性値となるが,ガラス転移点は物性値とはいわない。

 ガラス状態をとりうる物質は,最も身近なガラスであるけい酸塩の他に,ホウ酸塩,リン酸塩などの無機塩,硫黄,セレンなどの単体,ゴム,アクリル,ポリエステル,ポリエチレンなどの有機高分子材料,薄膜や微粒子を作る PVD 法(物理蒸着法: Physical Vapor Deposition ),CVD 法(化学蒸着法: Chemical Vapor Deposition )やゾルゲル法( sol gel process )で作られた物質などがある。
 ここでは,最も一般的なガラスとして,土木・建築分野で用いられるけい酸塩ガラスについて紹介する。

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  けい酸塩ガラスの分類例

 けい酸塩ガラスは,古代から用いられるけい酸塩を主成分とする硬く透明な物質である。その一般的な特徴としては,
 「① 透明で異方性が無い,② 硬いが物理的,熱的衝撃に弱い,③ 多くの水溶液に溶けず変質し難い,④ 耐熱性が高い,⑤ 電気を通し難い,⑥ 成形や加工が容易い,⑦ 組成の組合せに制約が少ない」などがある。
 このなかで⑥と⑦の性質に優れるので,繊維から管状,棒状,板状などの形状自由度が高く,光吸収・反射特性の制御など様々の性質を付与したガラスが得られ,日常生活用品から技術分野での用途まで幅広く利用されている。

 ソーダ石灰ガラス( soda-lime glass )
 現在最も広く利用され,ソーダガラスとも呼ばれる。組成中に炭酸ナトリウムソーダを相当量含むガラスで,ソーダライムガラス,軟質ガラスともいう。
 主な用途板ガラス,ガラス瓶,電球ガラス,食卓用ガラスなど一般器具に広く利用される。
 構造けい素原子,酸素原子からなる正四面体構造が連なったけい酸イオン中にナトリウムイオン( Na+ ),カルシウムイオン( Ca2+ )が入り込んだけい酸塩の構造をとる。
 主成分けい砂( SiO2 )や珪石,石英に炭酸ナトリウム( Na2CO3 ),炭酸カルシウム( CaCO3 )を混合して得られる。
 一般的な成分組成は,SiO2( 70~74%),Na2O( 12~16%),CaO + MgO( 10~13%),Al2O3( 0.5~2.5%)である。
 特性ソーダ(炭酸ナトリウム)の混入で,融点が下げられ,ガラス転移点 730℃,融点約1,000℃,熱膨張係数 10-5K-1 程度である。なお,ソーダが多いので低温で溶融し,成形は容易だが化学的耐久性は硬質ガラス(崩珪酸ガラス)に劣る。

 硼珪酸(ほうけいさん)ガラス( borosilicate glass )
 硼珪酸ガラスは,ほう酸( H3BO3 ,又は B(OH)3 )を混ぜて熔融し,酸化ほう素( B2O3 )として 5%以上含むけい酸塩ガラスをいう。
 ほう素を添加することで,熱膨張係数が低下し,耐熱衝撃性が増加する。さらに,耐酸性,耐候性や電気的性質も改善される。
 一般的には,耐熱ガラス,硬質ガラスとして知られるガラスで,商標の「パイレックス」がこの種の一般名称のごとく用いられることもある。
 主な用途耐熱衝撃性,耐熱性,耐薬品性が期待される理化学器具(寒暖計,化学実験器具など),ランプや台所用品などに用いられている。硼珪酸ガラスを用いた JIS規格には,JIS R 3503「化学分析用ガラス器具: Glass apparatus for chemical analysis 」がある。
 主成分珪砂( SiO2 )や珪石,石英にほう酸( H3BO3 ,又は B(OH)3 ),炭酸ナトリウム( Na2CO3 ),アルミナ( Al2O3 )などを混合して得られる。
 成分組成の一例を示すと,SiO2( 80%),B2O3( 13%),Na2O( 4%), Al2O3( 2~3%)である。
 特性熱膨張係数が約 5×10-6K-1 とソーダ石灰ガラスの 2分の 1程度,ソーダ石灰ガラスより耐熱性,耐食性,硬度に優れる。

 カリガラス( potash glass )
 ソーダ石灰ガラスのナトリウムをカリウムに置き換えたような組成を持ち,透明度や屈折率が高く,工芸品などに用いられていたがガラスで,ボヘミアンガラスともいわれる。現在は,クリスタルガラスに取って代わられ用途は限られている。
 主な用途ステンドグラスなどガラス工芸品,理化学用器具に利用されていた。
 主成分ケイ砂( SiO2 )や珪石,石英に炭酸カルシウム( CaCO3 ),炭酸カリウム( K2CO3 )や硝石( KNO3 ),消石灰( Ca(OH)2 )などを混合して得られ,ソーダ石灰ガラスのNa2O を K2O に置き換えたような組成を持つ。
 特性ソーダ石灰ガラスより融点が高い。

 クリスタルガラス( lead glass )
 酸化鉛等の添加で,溶解温度が低く抑えられ,成形性がソーダ石灰ガラスより容易な,透明度と屈折率に優れる高品位の無色透明ガラスである。
 鉛を含む鉛ガラスであるが,水晶(クリスタル)のように輝く透明なガラスのためクリスタルガラスと呼ばれる。
 主な用途高級なガラス食器・グラス類・ガラス工芸(切子,トロフィー,シャンデリアなど),工業的には,光学レンズ,鉛含有量の多い物は放射線遮蔽ガラスとして利用されている。
 主成分ケイ砂( SiO2 )や珪石,石英に炭酸カリウム( K2CO3 )又は炭酸バリウム( BaCO3 ),酸化鉛( PbO )を混合して得られる。
 (一般社)日本硝子製品工業会では,2009 年に「クリスタルガラス」 を定義し,鉛含有量に違いなどで次のように分類している。
 フルレッドクリスタルガラス:酸化鉛 30%以上,密度 3.00gcm-3以上
 レッドクリスタルガラス:酸化鉛 24%以上,密度 2.90gcm-3以上
 セミレッドクリスタルガラス:酸化鉛 24%未満,かつ( PbO + K2O + BaO + ZnO )が 10%以上
 酸化鉛を含まないクリスタルガラス:酸化カリウム( K2O ),酸化バリウム( BaO ),酸化チタン( TiO2 )酸化亜鉛( ZnO )を単独またわ合わせて 10%以上含むガラスを,主要成分を冠したカリクリスタルガラス,バリウムクリスタルガラス,チタンクリスタルガラスと称する。
 特性比重,屈折率,光の分散が大きい。たたいた時の金属音が小さい,硬度が小さいなどの特徴がある。また,ガラスが澄んで,光沢がある。これらの性質は,工芸品などで知られる切子(カットガラス)として最適の特性である。

 石英ガラス( fused quartz ,quartz glass ,silica glass )
 二酸化けい素( SiO2のみのガラスで,溶融石英,溶融シリカ,シリカガラスなどとも呼ばれ, 透明性(可視光・紫外線をほとんど吸収しない),耐薬品性,耐熱性,耐熱衝撃性に優れ,理化学用途,光学用途で幅広く用いられている。
 主な用途反応容器,反応管などの化学器具,吸光光度計の試料セルなどの理化学用途,望遠鏡の平面鏡などの熱影響を抑えたい光学機器,光通信用ガラス繊維などに利用されている。
 主成分二酸化けい素( SiO2 ) 99%以上,製法により純度が異なる。,
 化学器具などは,石英や水晶の電気溶融( 2000℃以上)で作られるが,不純物が多く光学的用途には適さないことが多い。
 そこで,光学的用途の物は,「光ファイバ」で紹介するCVD 法(化学気相蒸着法)やゾル-ゲル法で作られる。
 特性高温に耐え(軟化点 1500 ℃),熱衝撃に強く,熱膨張係数 5×10-7K-1程度とソーダ石灰ガラスの 20分の 1程度で,耐食性が強いなどの性質をもつ。

 水ガラス( water glass )
 石英砂( SiO2 )とソーダ灰( Na2CO3 )とを融解し,水で抽出したもので,ガラスと称しているが,少量の水とけい酸ナトリウム( Na2O・nSiO2 :混合物)から生成する粘度の高い溶液である。
      Na2CO3 + nSiO2 → Na2O・nSiO2 + CO2
 工業的に用いられる水ガラス(けい酸ナトリウム)については,JIS K 1408「けい酸ナトリウム(けい酸ソーダ): Sodium Silicate Na2O・nSiO2・xH2O 」で種類と品質が規定されている。
 けい酸ナトリウムには,n =0.5 : Na4SiO4 (オルトけい酸ナトリウム),n = 1 : Na2SiO3(メタけい酸ナトリウム), n = 2 : Na2Si2O5 (二けい酸ナトリウム),n = 3 : Na2Si4O9 (四けい酸ナトリウム)などがある。

 けい酸ナトリウムの反応性
 富士化学(株)によると,けい酸ナトリウム溶液に酸を添加すると,pH の低下,けい酸イオン又はポリけい酸イオン同士の重合(シロキサン結合の生成)が進み,粘度の上昇からゲル状に硬化する。
      Na2O・nSiO2 + H2SO4 + (m-1) H2O → nSiO2・mH2O・NaSO4
 Ca ,Mg ,Al ,Ba などの多価金属イオンと反応し,不溶性の珪酸塩金属水和物や珪酸などを生成してゲル化するす。
      Na2O・nSiO2 + Ca(OH)2 + mH2O → CaO・nSiO2・mH2O・2NaOH
 有機化合物(多価アルコール,酢酸エステルなど)とは,アルカリ存在下で酸を生成し,中和反応によりけい酸ソーダをゲル化させる。
 他には,空気中では二酸化炭素を吸収してゲル状ケイ酸が析出する。

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  機能・用途によるガラスの分類

 ガラスの分類では,上記に紹介した材質(組成)による分類より,機能や用途による分類の方が一般に知られている。
 フロートガラス( float glass )
 最も一般的な板ガラスで,溶解したガラス素地を溶融金属の上に浮かべ,厚み・板幅の均一な板ガラスに成型(フロート法)したものをいう。
 建築用,その他各種の用途に使用するフロート板ガラス及び磨き板ガラス,並びにすり板ガラスについては,JIS R 3202 「フロート板ガラス及び磨き板ガラス: Float glass and polished plate glass 」に規定されている。

 用語
 フロート板ガラス:フロート方式によって製造した透明な板ガラス
 磨き板ガラス:磨き方式によって製造した透明な板ガラス
 すり板ガラス:フロート板ガラス又は磨き板ガラスの表面を砂ずり,砂吹き,腐食などによってつや消し処理した板ガラス

 強化ガラス( toughened glass )
 板ガラス表面に強い圧縮応力層をつくり,破壊強さを増加させ,かつ,破損したときに細片となるようにしたもので,一般的なフロート板ガラスに比べ 3 ~ 5 倍程度の強度を持つ。
 表面に圧縮応力層を有すると,破壊するための力に,ガラス分子間の結合力に加え表面の圧縮応力が必要となるため,圧縮応力層の無いガラスより大きな力が必要となる。圧縮応力層の作り方には,熱処理する方法と化学的に処理する方法がある。

 熱処理(風冷強化法)板ガラスを約 650 ~ 700 ℃まで加熱した後,冷風で急冷することで,表面に熱ひずみ(表層と内部の密度差)による圧縮応力層を形成することができる。
 この方法では,ガラス板の厚さに制約があり,薄いガラス板には適用できない。また,板に傷を付けると一気に破壊するため,熱処理後の加工が困難である。
 熱処理した強化ガラスの規格には,JIS R 3206 「強化ガラス: Tempered glass 」JIS R 3222 「倍強度ガラス: Heat-strengthened glass 」がある。
 化学的処理(イオン交換法)ナトリウムイオン( Na+ )を含むソーダ石灰ガラスを,イオンサイズの大きいカリウムイオン( K+を含む水溶液( 380 ℃)に浸漬することで,ガラス表面のナトリウムイオンがカリウムイオンと交換する。
 イオンサイズの大きいカリウムイオンに交換されたガラス表面が膨張し,表面層に圧縮応力層を形成する。この処理では,熱処理より高い強度で,加工可能な強化ガラスが得られる。

 強化ガラスの用途と JIS 規格 建築,船舶の窓,家具などに使用する強化ガラスについては,JIS R 3206 「強化ガラス: Tempered glass 」,JIS R 3222 「倍強度ガラス: Heat-strengthened glass 」に,自動車の窓に用いるガラスについては JIS R 3211 「自動車用安全ガラス: Safety glazing materials for road vehicles 」に,鉄道車両の窓ガラスについては JIS R 3213 「鉄道車両用安全ガラス:Safety glass for railway rolling stock 」に規定されている。

 耐熱ガラス( heat‐resistant glass )
 一般的なソーダ石灰ガラスは,急激な温度変化( 50 ℃程度:板の厚みが厚いほど低い温度差)で割れる。耐熱ガラスとは,普通のガラスより大きい温度変化を加えても割れないよう強化したガラスである。
 ビーカなどのガラス製理化学機器,ガラスポット,IH ヒータの天板などの耐熱調理器具,ストーブや炉の覗き窓などに用いられている。
 耐熱ガラスは,原理的にはガラスの熱膨張係数を下げることで実現できるので,硼珪酸ガラス(最高使用温度 490 ℃,温度変化約 150 ℃)や石英ガラス(最高使用温度約 1000 ℃,温度変化約 800 ℃)などが用いられている。

 防耐火ガラス(fire-resistant glass )
 建築基準法・建築基準法施行令・建設省告示に適合したガラスで,耐火性能のみならず,火災時に破損した場合の安全性にも配慮したガラスで,一般的には JIS R 3204 「網入板ガラス及び線入板ガラス:Wired glass 」などが用いられている。法での規定の例は次の通りである。
 建築基準法第2条第9号の2のロ:その外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に,防火戸その他の政令で定める防火設備{その構造が遮炎性能(通常の火災時における火炎を有効に遮るために防火設備に必要とされる性能をいう。第二十七条第一項において同じ。)に関して政令で定める技術的基準に適合するもので,国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものに限る。}を有すること。

 複層ガラス( multi-layered glass )
 複数枚の板ガラスの間に気体封入又は真空とし,断熱,結露防止,遮音,防犯を目的としたガラスである。

 合わせガラス( laminated glass )
 複数枚の板ガラスの間に樹脂などを挟み,接着したガラスで,衝突などの大きい衝撃を受けた場合にも貫通や飛散を防止することを主目的に,自動車,鉄道車両などの窓ガラス( JIS R 3211 「自動車用安全ガラス: Safety glazing materials for road vehicles 」,JIS R 3213 「鉄道車両用安全ガラス:Safety glass for railway rolling stock 」),建築物や船舶の窓ガラスや家具( JIS R 3205 「合わせガラス: Laminated glass 」)などに用いられている。
 他には,情報機器のモニター用ガラス,防犯ガラスとしても用いられる。さらに,紫外線・赤外線の吸収,防音などの付加機能を与えたものもある。

 反射防止ガラス
 反射防止ガラスには,無反射ガラスと低反射ガラスがある。
 ガラスの表面に細かい凸凹をつけ,反射光の拡散で映り込みを抑えたガラスを無反射ガラスといい,額縁用のガラスとして用いられている。見た目はすりガラスのような感じで,展示物と密着させることで普通の透明なガラスの様に見える。
 ショーウィンドウやショーケースなど展示物と密着できない場合に用いる反射を抑制するガラスは,低反射ガラスといい,ガラスの両面に特殊なコーティング(多層コーティングの干渉効果を利用)を施し,表面反射を 10 分の 1 程度に抑えたガラスである。同様の技術である反射防止膜( ARコーティング)は,レンズなど光学部品,テレビやパソコンなどの画面,自動車のフロントガラスなどに活用されている。

 赤外線反射ガラス( infrared reflective glass)
熱線反射ガラスは日射熱の遮へいを主目的とし,ガラスの片側の表面に熱線反射性の薄膜(極薄い金属膜など)を形成したガラスで,金属膜の種類や金属膜の厚みより色合いや性能が変わる。
ガラスの種類や品質については,JIS R 3221 「熱線反射ガラス: Solar reflective glass 」に規定されている。

 赤外線吸収ガラス( infrared absorbing glass )
 波長の長い太陽光(赤外線)を吸収する特殊ガラスで,熱線吸収ガラス,吸熱ガラスともいわれる。微量のニッケル,コバルト,鉄などをガラス組成に加え,着色(ブルー,グレー,ブロンズなど)すると共に赤外線吸収の効果で,日射の 30~40%吸収することことができる。このガラスは建築物の冷暖房効果を期待して用いられる。
 建築物などに用いるガラスの種類や品質については, JIS R 3208 「熱線吸収板ガラス: Heat absorbing glass 」に規定されている。ただし,自動車の窓ガラスについては適用外である。

 放射線遮断ガラス
 クリスタルガラスの中で,鉛含有量の多いガラスは,放射線の遮蔽効果が期待できる。放射線診断施設(X線、血管撮影室他)などでの放射線の被爆軽減を目的に使用される。
 高濃度鉛ガラスの欠点である曇り易さを軽減するため,両面に薄いソーダ石灰ガラスを張り付けたものが実用されている。
 近年は,鉛を含まない鉛フリー放射線遮蔽ガラスも実用されている。この種のガラスでは,の代わりにストロンチウムやバリウムなどを使用している。鉛を含む放射線遮蔽ガラスより放射線遮蔽能力は低いが,マンモグラフィの衝立などに使われている。

 防弾ガラス( bulletproof glass )
 弾丸を貫通させないことを目的とした強化ガラスで,ガラス,ポリカーボネートやビニル類との合わせガラスである。

 ガラス繊維( glass fiber )
 ガラスを融解,牽引して繊維状にしたものである。FRP などの補強材など強度や耐候性を期待する物には石英ガラスなどの無アルカリガラスが使われ,断熱,遮音を目的とする用途では一般のガラスも使用される。
 ガラス繊維の主な用途には,プリント基板,繊維強化プラスチック( FRP :ヘルメット,建築用の採光屋根材,小型船舶,釣り竿),耐熱断熱材(商品名 グラスウール),スタッドレスタイヤの添加材などがある。

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