化 学 (無機化学)

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 ここでは,ボイラの事故や事故原因,排煙処理に関連し,【ボイラの移り変わり】【ボイラ事故の種別】【ボイラ事故の原因】【排煙処理】【燃焼方法による窒素酸化物(NOx)の低減】に項目を分けて紹介する。

 【ボイラの移り変わり】

 “ボイラ事故の移り変わり”によると,昭和 41 年( 1966 年)以後のボイラ変遷は次の通りである。
 昭和 41 年~ 50 年
 旧タイプの炉筒ボイラが減少し,水管式,炉筒煙管式,鋳鉄製が大勢を占める。運転負荷が高いための水管破裂が多くなった。ガス爆破や低水事故も同程度の割合で発生し,炉筒煙管式ボイラ本体の低水事故により炉筒が破裂する大災害が発生した。
 昭和 51 年~平成元年
 労働省から「ボイラの低水位による事故の防止に関する技術上の指針」と「油炊きボイラ及びガス炊きボイラの燃焼設備の構造及び管理に関する技術上の指針」が示され,低水事故とガス爆発事故が減少し,相対的に鋳鉄製ボイラの亀裂事故が高くなる。
 平成元年~
 多管式小型貫流ボイラが増加し,性能検査が必要な炉筒煙管式ボイラや水管式ボイラは激減した。多管式貫流ボイラは、重大事故の発生はなく,スケール付着による水管の過熱,破裂事故が多くなった。

 【ボイラ事故の種別】

 法的な分類
 石川県ボイラ整備協同組合のホームページに紹介される 1994 ~ 2003 年までのボイラ保険金支払対象となった事故をまとめた“2004 年ボイラ事故の動向”を参考に,ボイラの事故種別と原因について紹介する。
 
 事故種別
 動向調査では,使用に伴って生じた腐食や摩耗などの自然損耗は対象外とし,加熱,漏えい,焼損や次に示す状態について調査している。
 下図は,ボイラ種別の事故発生割合,事故形態の割合である。
 事故発生割合では,鋳鉄製ボイラが 36.3 %を占め,発電用ボイラ 19.3 %,小型・適用外ボイラ 14.3 %である。発電用ボイラの大多数が水管式ボイラで,小型・適用外ボイラは大多数が多管式貫流ボイラである。すなわち,水管式ボイラは合計 31.8 %,貫流式ボイラの合計は 18.9 %となる。
 事故形態別では,最も多い「き裂」事故は,鋳鉄ボイラの「き裂」で,次いで「破裂」が多い。事故形態「き裂」「破裂」が全体の 65.0 %と過半数を占める。
 「ガス爆発」は,ボイラ種別によらず,燃焼室内や煙道などで発生している。
 「過熱・漏洩」,「膨出」は少ないが,その多くは水処理不良に起因するスケール付着による局部的な水管の異常加熱で,ボイラ種別によらず発生している。これらは「破裂」前段階の状態とも言える。
 「圧かい」の過半数は,炉筒煙管式ボイラが占め,炉筒煙管式ボイラの特徴的な形態で,低水事故の結果として,炉筒上部の過熱による損傷形態で,件数割合は少な いが大規模な事故となるケースが多い。

丸ボイラの概要図

ボイラの事故発生形態
元図出典:石川県ボイラ整備協同組合2004 年ボイラ事故の動向

 関連用語
 破裂: ボイラ等の耐圧部分が,内圧により急激にはり裂けた状態
 爆発: ボイラ燃料などが急激に異状燃焼した状態
 膨出: 耐圧部分の一部の膨れや強度低下で修理が必要な状態
 圧かい: 炉筒煙管式の炉筒や圧力容器の内胴等の外圧等により押しつぶされた状態
 鋳鉄部分の亀裂: 鋳鉄製ボイラや弁類の鋳鉄部分の割れにより蒸気,液体の漏洩した状態

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 【ボイラ事故の原因】

 ボイラ事故の原因は,下図に示すように,「取扱保守不良」,「材料」,「腐食」,「設計不良」,「施工不良」の 5 つに分類される。
 さらに,「取扱保守」については,「水管理不良」,「操作ミス」,「点検手入不良」,「附属品の故障」,「不良運転」に分類される。

ボイラの事故原因

ボイラの事故原因
元図出典:石川県ボイラ整備協同組合2004 年ボイラ事故の動向

 ボイラ事故の原因では,「取扱保守」不良によるものが最も多く,次いで「材料」を原因とする事故が多い。
 「取扱保守」不良による事故では,「水管理不良」が最も多く, 給水の水処理が不十分,すなわちスケール付着によるトラブルである。
 「材料」原因の事故の 80.8 %は鋳鉄製ボイラである。鋳鉄製ボイラのき裂は,そのほとんどが繰り返し熱応力による疲労亀裂と考えられている。
 「腐食」原因の事故は,10.8 %を占めるが,ほとんどは水管式や小型貫流式ボイラ等の水管破裂の原因である。 一般的な金属の腐食については,【腐食・防食とは】で紹介している。 ボイラ固有腐食現象として,JIS B 0126 「火力発電用語−ボイラ及び附属装置」には,酸化スケール,燃焼ガスに由来する水蒸気酸化腐食,高温腐食,低温腐食が挙げられている。
 
 水蒸気酸化腐食( steam oxidation )
 ステンレス鋼,低合金鋼の過熱器管,再熱器管の内面に,過熱水蒸気による酸化スケールが生成する現象である。
 高温腐食( high temperature corrosion )
 燃料油中のバナジウム( V ),石炭中のナトリウム( Na ),カリウム( K )などが燃焼の際に,溶融点の低い化合物を形成し,過熱器管壁,再熱器管壁などの高温伝熱面に付着,たい積し,金属を腐食する現象で,バナジウムアタック(油灰腐食,石炭灰腐食,重油灰腐食ともいう),アルカリ硫酸塩腐食( Na2SO4 ,K2SO4 などによる腐食)などがある。
 低温腐食( low temperature corrosion )
 排ガス中の三酸化硫黄( SO3 )が水蒸気と反応して硫酸(蒸気)となり,露点以下の金属表面に凝結して腐食を起こす現象で,硫酸腐食ともいう。
 なお,低温腐食対策として用いる中和剤や脱硝反応還元剤にアンモニア( NH4 )を注入する場合に,空気予熱器において硫酸水素アンモニウム( (NH4)HSO4 )及び硫酸アンモニウム( (NH4)2SO4 )が堆積し,閉そくを起こす現象(硫酸水素アンモニウム閉そく)に注意が必要である。

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 【排煙処理】

 発電用ボイラなど大型ボイラでは,【石炭とその燃焼化学】「石炭火力発電所の仕組」で紹介したように,燃焼ガスは 排煙脱硝装置 ⇒ 排煙集じん装置 ⇒ 排煙脱硫装置 の順に処理される。
 排煙脱硝装置,及び排煙脱硫装置での処理原理については,【燃焼排ガスの浄化】で紹介した。実際の処理では,JIS B 0126 「火力発電用語−ボイラ及び附属装置」によると,用いる触媒や還元剤の違いにより,次の種類がある。
 
 排煙脱硝装置
 乾式排煙脱硝装置( dry type NOx removal equipment )
 触媒を用いて,排ガス中の窒素酸化物( NOx )を乾式で処理する装置。
 選択接触還元法( selective catalytic reduction process (SCR) )
 触媒を用いて,排ガス中の窒素酸化物( NOx )をアンモニアなどの還元剤によって,窒素と水蒸気とに分解する方法。
 無触媒還元法( selective non-catalytic reduction process (SNCR) )
 触媒を用いないで,高温度域で排ガス中の窒素酸化物( NOx )をアンモニアなどの還元剤によって,窒素と水蒸気とに分解する方法。
 
 排煙脱硫装置
 湿式排煙脱硫装置( wet type lue-gas desulfurization equipment )
 排ガス中の硫黄酸化物( SOx )を,吸収液を用いて湿式で処理する装置。排ガス中のダストを除去し,脱硫する灰分離方式( double loop process )とダストを除去しないで脱硫する灰混合方式( single loop process )とがある。
 乾式排煙脱硫装置( dry type flue-gas desulfurization equipment )
 排ガス中の硫黄酸化物( SOx )を,活性炭などを用いて乾式で処理する装置。
 半乾式排煙脱硫装置( semidry flue-gas desulfurization equipment )
 スラリー状の吸収剤を微粒化して,スプレードライヤ内で排ガス中の硫黄酸化物( SOx )と反応させ,副生品を乾燥固体で回収する装置。

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 【燃焼方法による窒素酸化物(NOx)の低減】

 燃焼ガス中の窒素酸化物( NOx )には,【燃焼排ガスの浄化】で紹介したように,燃料中の窒素化合物が燃焼のときに分解し,窒素が酸化されて生成するフューエル NOx と空気中の窒素が高温において,酸素と反応して生成するサーマル NOx がある。
 サーマル NOx は,燃焼方法を工夫することで削減が可能である。その方法には,次のものがある。
 二段燃焼( two staged combustion )
 燃焼に必要な空気量より少ない空気で,還元燃焼を行うことによって,窒素酸化物( NOx )を低減させる燃焼。不足分の空気は,バーナの後流のポートから送って完全燃焼させる。
 排ガス混合燃焼( gas mixing combustion )
 燃焼用空気に燃焼排ガスの一部を混入して,燃焼空気中の酸素濃度を低減させ,緩やかな燃焼を行い,燃焼温度を低下させることによって,窒素酸化物( NOx )を低減させる燃焼。
 低窒素酸化物バーナ( low-NOx burner )
 燃料と空気との混合を緩慢にし,燃焼の不均一化を図り,火炎の冷却を行うなどによって,窒素酸化物( NOx )を低減させるバーナ。
 炉内脱硝( in-furnace NOx reduction )
 ボイラの火炉内において,燃焼過程で生成される中間生成物(炭化水素化合物)により窒素酸化物( NOx )を還元する脱硝方法。

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