化 学 (無機化学)

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 ここでは,光通信などの高速通信を担う光ケーブルなどに関連して,【光ケーブルについて】【光ファイバとは】【光ファイバの種類と用途】【素線の製造】【光通信用途】【関連 JIS 規格】に項目を分けて紹介する。

 【光ケーブルについて】

 高速通信分野などで光ケーブル(光ファイバケーブル: Optical fiber Cable )は,電磁誘導ノイズの影響を受けない,伝送損失が非常に小さい,高速かつ長距離の伝送が可能,同一の太さの管路に多くの回線を収容できるなどの利点から適用範囲が拡大している。
 JIS C 6850 「光ファイバケーブル通則: General rules of optical fiber cables 」では,布設環境や布設方法の影響を考慮し,直埋用ケーブル,ダクト布設用ケーブル,トンネル内布設用ケーブル,架空用ケーブル,湖沼,河川横断などの水底ケーブル,屋内用ケーブル,可搬形ケーブル,機器用ケーブル,その他(特殊用途ケーブルを含む)に分類されている。また,参考として,光ファイバ構造,ケーブルコア構造,機能による分類例も紹介さている。
 光ファイバケーブルに要求される性能の試験方法は,JIS C 6851 「光ファイバケーブル特性試験方法: Optical fiber cable test procedures 」などに規定されている。

 

 【光ファイバとは】

 光ファイバ( optical fibers )は,古くから胃カメラなどの医療用途(スコープ,レーザ治療など),装飾用途(照明など)に用いられ,工業的には計測器(温度測定,歪み測定,光量モニタなど),産業用レーザ,や光ファイバジャイロスコープなどにも用いられてきた。現在の主要な用途は通信用途(機器制御,中長距離通信など)である。
 
 光ファイバは,コア(core)と呼ばれる芯の外側にコアより屈折率の低いクラッド(clad)で覆うことで,全反射や屈折により出来るだけ光を中心部のコアにだけ伝播させる構造になっている。
 コアとクラッドはともに光に対して透過率が非常に高い石英ガラス,又はプラスチック(四ふっ化樹脂,アクリル樹脂,ポリカーボネート,ポリスチレンなど)が用いられる。
 光ファイバは,コア/クラッドの組み合わせにより,石英系ガラス/石英系ガラス(記号 S ),多成分系ガラス/多成分系ガラス(記号 C ),石英系ガラス/プラスチック(記号 R ),プラスチック/プラスチック(記号 P に分けられる。

光ファイバ/ケーブルの構造例

光ファイバ/ケーブルの構造例
図出典:住友電工(株)光ファイバ・ケーブルの基礎知識

 なお,JIS C 6820 「光ファイバ通則: General rules of optical fibers 」の用語の定義では,光ファイバについて,誘電体で作られた,光を伝送する繊維で,裸光ファイバ( bare optical fibers ),光ファイバ素線( optical fibers ),光ファイバ心線( jacketed optical fibers )及び光ファイバコード( optical fiber cords )の総称と定義されている。
 裸光ファイバとは,ガラスコア及びガラスクラッドだけからなる光ファイバをいう。
 光ファイバ素線とは,裸光ファイバにプラスチックの 1 次被覆を施した光ファイバで,ガラスをコアとしプラスチックをクラッドとする光ファイバ又はコア及びクラッドを共にプラスチックとする光ファイバがある。
 光ファイバ心線とは,ガラスをコアとする光ファイバ素線の単心又は複数心に適切な 2 次被覆を施した光ファイバである。
 光ファイバコードとは,光ファイバ心線上又は全プラスチックマルチモード光ファイバ素線上にプラスチックシースを施した抗張力のある光ファイバをいう。

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 【光ファイバの種類と用途】

 光ファイバの種類
 JIS C 6850 「光ファイバケーブル通則: General rules of optical fiber cables 」では,伝搬モード数により,マルチモード光ファイバ( multimode optical fiber ),シングルモード光ファイバ( single-mode optical fiber ),イントラコネクション光ファイバ,及び偏波面保存光ファイバ( polarization - maintaining optical fiber )に分類されている。
 マルチモード光ファイバとは対象となる波長で二つ以上の伝搬モードを伝搬する光ファイバである。
 シングルモード光ファイバとは対象となる波長で最低次の伝搬モードだけを伝搬する光ファイバをいう。
 偏波面保存光ファイバとは,二つの直交する直線偏波モード(電場の振動方向が一定)間の結合を極力小さくして,実用十分な距離にわたって両偏波モードを安定に伝搬できるようにした複屈折率光ファイバをいう。
 
 用途別の種類
 医療用や高エネルギーレーザ伝送,照明機器内配線用,光量測定などには,コア径の大きい大口径の光ファイバが用いられる。
 通信機器,各種センサーや光ファイバジャイロスコープなどには,偏波面保存光ファイバが用いられる。
 短・中距離通信や工場内データ通信(~ 500 m )などには,コア径 50 μm 程度のグレーデッドインデックス・マルチモード光ファイバが用いられる
 大容量・長距離通信( 10 km 以上)にはコア径 10 μm 程度のシングルモード光ファイバが用いられる。
 
 代表的な光ファイバの材質と寸法
 ステップインデックス・マルチモード光ファイバ
 石英/石英(コア径:50 or 80 μm ,クラッド径 125 μm ),石英/プラスチック(コア径:200 μm ,クラッド径 300 μm ),多成分ガラス/多成分ガラス(コア径:85 or 100 or 200 μm ,クラッド径 125 or 140 or 250 μm ),プラスチック/プラスチック(コア径:980 μm ,クラッド径 1000 μm )
 グレーデッドインデックス・マルチモード光ファイバ
 石英/石英(コア径:50 μm ,クラッド径 125 μm )
 汎用のシングルモード光ファイバ
 石英/石英(コア径:5 ~ 10 μm ,クラッド径 125 μm )

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 【石英系光ファイバ素線の製造】

 光通信に用いられる石英系光ファイバの製造には,屈折率の異なる材料が必要である。一般的に光学ガラスの屈折率の調整には,二酸化ゲルマニウム( GeO2 )が添加剤として用いられる。
 石英ガラスに添加された GeO2 は,屈折率を増大させるため,石英ガラス/石英ガラス光ファイバのコア部分に用いられ,クラッド部には純粋な石英ガラスが用いられる。
 なお,コアの屈折率を上げる添加元素としてゲルマニウム( Ge )の他にりん( P )もも用いられる。クラッドの屈折率を下げる目的にほう素( B )やふっ素( F )が添加剤として用いられることもある。
 
 純度の高い石英ガラスや酸化ゲルマニウムを含む石英ガラスは,原料として,「集積回路」の【けい素の精製】で紹介した四塩化けい素( SiCl4 )と四塩化ゲルマニウム( GeCl4 )を用い,化学気相蒸着法を用いて合成するのが一般的である。
 MCVD法とは,グラッドとなる天然水晶から精製された石英ガラス管を加熱( 1600 ~ 1800 ℃)し,内部に O2 ガスで気化した SiCl4 ,GeCl4 ,POCl3 の混合ガスを送り込み,管内にガラス微粒子を積層する方法である。
 VAD 法とは,下図に示すように,水素,酸素,高純度 SiCl4 の混合気体を噴射するクラッド用バーナと水素,酸素,高純度 SiCl4 ,GeCl4 の混合気体を噴射するコア用バーナを持ち,種となる棒の上にガラス微粒子を積層させ,棒を移動させることでコアとクラッドの同時形成できる方法である。
 水素・酸素火炎内では,次の反応が生じている。
      2H2 + O2 → 2H2O
      SiCl4 + 2H2O → SiO2 + 4HCl
      GeCl4 + 2H2O → GeO2 + 4HCl

光ファイバの製造工程( VAD 法)

光ファイバの製造工程( VAD 法)
元図出典:古河電工(株)光ファイバ製造工程

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 【光通信用途の光ファイバ】

 長距離の光通信で用いられるのは,コア径 10 μm ,クラッド系 125 μm 程度のシングルモード光ファイバで,波長 1300 nm や 1550 nm の赤外線を用いるのが一般的である。
 この波長の赤外線を得るために,半導体レーザが用いられる。光伝送用半導体レーザについては,JIS C 5940 「光伝送用半導体レーザ通則: General rules of laser diodes for fiber optic transmission 」 に,結晶材料としてアルミニウムガリウムひ素/ガリウムひ素( AlGaAs / GaAs ),インジウムガリウムひ素りん/インジウムりん( InGaAsP / InP )などが規定されている。
 半導体レーザについては,「レーザ」で詳細に紹介する。
 
 一般的に,活性層で発生した光のうち,回折格子の作用で特定波長( 1 つのモード)のみが強め合いシングルモード発振となる分布帰還( Distributed Feedback : DFB )型レーザを用いることで,通信時の光信号のずれがなく,高速・遠距離通信が可能となる。
 
 下図には,光ファイバの種類と伝送速度や伝送距離の関係について,住友電工(株)の HP “光ファイバ,ケーブルの基礎知識”を参考に紹介する。
 汎用のシングルモード光ファイバ( SM ) コア径を小さくしシングルモードにすることで,コア径の大きいマルチモードで見られるモードの違いによる伝搬信号の歪みが発生しないため,伝送損失が低く,高品質で安定した通信が期待できる。汎用のシングルモード光ファイバでは,1310 nm帯のレーザ光が用いられる。
 非零分散シフト・シングルモード光ファイバ(NZ-DSF) レーザ光の零分散波長を 1550 nm 帯から少しずらすことで,1550 nm 帯での非線形現象を抑制したシングルモード光ファイバで,波長分割多重( WDM )伝送に向き,超高速の長距離伝送に適している光ファイバである。

光ファイバの種類と性能例

光ファイバの種類と性能例
元図出典:住友電工(株)光ファイバ・ケーブルの基礎知識

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 【関連 JIS 規格】

 光ファイバを用いた光増幅器関連の JIS 規格
 JIS C 6121 シリーズ「光増幅器:Optical amplifiers 」
 JIS C 6122 シリーズ「光増幅器−測定方法:Optical amplifiers-Test methods 」
 JIS C 6123 シリーズ「光増幅器−性能仕様:Optical amplifiers - Performance specification template 」
 
 光ファイバの品質に関わる JIS 規格
 JIS C 6830 「光ファイバコード: Optical fiber cords 」
 JIS C 6831 「光ファイバ心線: Jacketed optical fibers 」
 JIS C 6832 「石英系マルチモード光ファイバ素線: Silica glass multimode optical fibers 」
 JIS C 6833 「多成分系マルチモード光ファイバ素線: Multicomponent glass multimode optical fibers 」
 JIS C 6834 「プラスチッククラッドマルチモード光ファイバ素線: Plastic cladding multimode optical fibers 」
 JIS C 6835 「石英系シングルモード光ファイバ素線: Silica glass single-mode optical fibers 」
 JIS C 6836 「全プラスチックマルチモード光ファイバコード: All plastic multimode optical fiber cords 」
 JIS C 6837 「全プラスチックマルチモード光ファイバ素線: All plastic multimode optical fibers 」
 JIS C 6838 「テープ形光ファイバ心線: Fiber ribbons 」
 JIS C 6839 「屋内用テープ形光ファイバコード: Indoor optical fiber ribbon cables 」
 JIS C 6841 「光ファイバ心線融着接続方法: Optical fiber fusion splicing method 」
 JIS C 6850 「光ファイバケーブル通則: General rules of optical fiber cables 」
 JIS C 6870-2 シリーズ「光ファイバケーブル−第2部:屋内ケーブル: Optical fiber cables-Part2:Indoor cables 」
 JIS C 6870-3 シリーズ「光ファイバケーブル−第3部:屋外ケーブル: Optical fiber cables-Part3: Sectional specification-Outdoor cables 」
 JIS C 6873 「偏波面保存光ファイバ素線: Polarization-maintaining optical fiber 」
 
 光ファイバ品質試験関連の JIS 規格
 JIS C 6820 「光ファイバ通則:General rules of optical fibers」
 JIS C 6821 「光ファイバ機械特性試験方法: Test methods for mechanical characteristics of optical fibers 」
 JIS C 6822 「光ファイバ構造パラメータ試験方法−寸法特性: Test method for structural parameters of optical fibers - dimensional characteristics 」
 JIS C 6823 「光ファイバ損失試験方法 Measuring methods for attenuation of optical fibers 」
 JIS C 6824 「マルチモード光ファイバ帯域試験方法: Test modes for bandwidth of multimode optical fibers 」
 JIS C 6825 「光ファイバ構造パラメータ試験方法−光学的特性: Test methods for structural parameters of optical fibers-Optical characteristics 」
 JIS C 6827 「光ファイバ波長分散試験方法: Test methods for chromatic dispersion of optical fibers 」
 JIS C 6828 「光ファイバ構造パラメータ測定器校正方法: End-face image analysis procedure for the calibration of optical fibre geometry test sets 」
 JIS C 6829 「光ファイバ波長分散測定器校正方法: Calibration of fibre optic chromatic dispersion test sets 」
 JIS C 6840 「光ファイバ偏波クロストーク試験方法: Polarization crosstalk measurement of optical fiber 」
 JIS C 6842 「光ファイバ偏波モード分散試験方法:Measurement methods and test procedures-Polarization mode dispersion of optical fibers 」
 JIS C 6851 「光ファイバケーブル特性試験方法: Optical fiber cable test procedures 」
 JIS C 6861 「全プラスチックマルチモード光ファイバ機械特性試験方法: Test methods for mechanical characteristics of all plastic multimode optical fibers and cords 」
 JIS C 6862 「全プラスチックマルチモード光ファイバ構造パラメータ試験方法: Test methods for structural parameters of all plastic multimode optical fibers 」
 JIS C 6863 「全プラスチックマルチモード光ファイバ損失試験方法: Test methods for attenuation of all plastic multimode optical fibers 」
 JIS C 6864 「マルチモード光ファイバモード遅延時間差試験方法: Measurement methods and test procedures-Differential mode delay of multimode optical fibers 」
 JIS C 6871 「偏波面保存光ファイバ構造パラメータ試験方法: Test methods for structural parameters of polarization-maintaining optical fibers 」
 JIS C 6872 「偏波面保存光ファイバビート長試験方法: Beat length measurement of polarization-maintaining optical fibers 」

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