化 学 (無機化学)

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 ここでは,化石燃料の燃焼に伴う排気ガスに関連し,【燃焼排ガス処理とは】,【窒素酸化物( NOx )の発生】【排煙脱硝装置について】【硫黄酸化物( SOx )の発生】【排煙脱硫装置について】に項目を分けて紹介する。

 【燃焼排ガス処理とは】

 化石燃料の燃焼では,燃料に含まれる不純物が排気ガスとして排出される。また,高温燃焼では空気の主成分である窒素の酸化反応生成物が排出される。これらの環境汚染に関わる問題を解決するために,種々の対策が実施されている。
 ここでは,石炭火力発電などの燃焼排ガスの浄化技術を中心に,硫黄酸化物( SOx )と窒素酸化物( NOx )について,発生のメカニズムと排煙処理技術について紹介する。

 【窒素酸化物( NOx )の発生】

 生物由来の石炭などは,タンパク質を構成するアミノ酸など窒素を有する有機化合物を含む。これらの燃料が燃焼した場合に発生する窒素酸化物( NOx )は,フューエル NOx ( NO2 が多い)と呼ばれる。
 一方,空気を用いた高温燃焼では,空気中の窒素の酸化によっても窒素酸化物が生成される。
      例: N2 + O2 → 2NO ,2NO + O2 → 2NO2
 この窒素酸化物( NOx )をサーマル NOx とよぶ。
 石炭が燃焼した場合の窒素酸化物はそのほとんどがフューエル NOx に由来する。窒素化合物をほとんど含まない燃料を用いる自動車や天然ガスボイラ(家庭用調理ガス器具を含む)などから排出される窒素酸化物はサーマル NOx が主である。
 
 窒素酸化物とは,酸化数 +1 の亜酸化窒素(一酸化二窒素)( N2O ),酸化数 +2 の一酸化窒素( NO ),酸化数 +3 の三酸化二窒素( N2O3 ),酸化数 +4 の二酸化窒素( NO2 ),四酸化二窒素( N2O4 ),酸化数 +5 の五酸化二窒素( N2O5 )などの総称である。
 この中で,亜酸化窒素(一酸化二窒素)( N2O )は,温室効果ガス,オゾン層破壊物質として,二酸化窒素( NO2 )は毒性が強く,環境汚染物質(酸性雨など)や光化学スモッグの原因物質として問題となる。
 二酸化窒素(酸化数 +4 )は,水との接触で,自己酸化還元反応で,硝酸( HNO3 :酸化数 +5 )と亜硝酸( HNO2 :酸化数 +3 )が生成する。(酸性雨の一因)
      2NO2 + H2O → HNO3 + HNO2

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 【排煙脱硝装置について】

 下図に示すように,触媒層入口で窒素の酸化数 -3 のアンモニ ア( NH3 )を吹き込み,酸化数 +2 の NO ,酸化数 + 4 の NO2 などを無害な窒素単体( N2 :酸化数 0 )にする酸化・還元反応触媒反応を利用している。
 触媒は,TiO2 を主成分とし,活性成分であるバナジウム(V),タングステン(W)などが添加されたものなどが用いられる。
 この触媒は,350 ℃以上で機能し,例えば次のような反応が起きる。
      4NO + 4NH3 +O2 → 4N2 + 6H2O

排煙脱硝装置の原理

排煙脱硝装置の原理
元図出典:北陸電力(株)環境汚染防止対策

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 【硫黄酸化物( SOx )の発生】

 例えば,石炭には,酸化数 -2 の硫黄を有する有機硫黄化合物(スルフィド: R – S – R’ など),酸化数 -1 の硫黄の黄鉄鉱( FeS2 = Fe2+ + (S-S)2- ),酸化数 +6 の硫酸イオン( SO42- )などが含まれる。
 硫黄を含む燃料の燃焼では,硫黄の酸化還元反応により,酸化数 +6 の三酸化硫黄(無水硫酸: SO3 ),酸化数 +4 の二酸化硫黄(亜硫酸ガス: SO2 ),酸化数 +2 の一酸化硫黄( SO )の混合物(総称して硫黄酸化物: SOx という)が発生する。
 なお,一酸化硫黄は非常に不安定で,空気中の酸素と直ちに反応し二酸化硫黄になる。一般的に,燃焼排ガスの硫黄酸化物は二酸化硫黄を主成分とする。
 硫黄酸化物の発生反応例
 酸化数 -2 の硫化水素や有機硫黄化合物の燃焼で酸化数 +4 の二酸化硫黄に酸化される。
      2H2S(g) + 3O2(g) → 2H2O(g) + 2SO2(g)
 酸化数 -1 の黄鉄鉱の燃焼で酸化数 +4 の二酸化硫黄に酸化される。
      4FeS2(s) + 11O2(g) → 2Fe2O3(s) + 8SO2(g)
 二酸化硫黄は,二酸化窒素との酸化還元反応で一酸化窒素と三酸化硫黄を,触媒のもと酸素との酸化還元反応で三酸化硫黄を生成する。
      NO2 + SO2 → NO + SO3
      2SO2 + O2 → 2SO3
 
 水と接触した二酸化硫黄の反応(酸性雨の一因)
 水に二酸化硫黄(酸化数 +4 )を通じると,水と反応し亜硫酸(イオン)(酸化数 +4 )を生成する。
      SO2 + H2O ⇆ H+ + HSO3- , 2HSO3- ⇆ O2S-SO32- + H2O
 亜硫酸(イオン)は溶存酸素(水に溶けた酸素)で酸化され硫酸(イオン)(酸化数 +6 )となる。
 
 二酸化硫黄の空気酸化(スモッグ:硫酸エアロゾル)の発生)
 工業地帯の環境汚染として,中国や過去の日本などで問題となったスモッグの一因である。
 大気中に排出された二酸化硫黄(酸化数 +4 )は,常温・常圧の清浄な空気中では安定に存在できるが,空気中に微粒子が浮遊していると,微粒子表面で酸素による酸化反応が促進され三酸化硫黄(酸化数 +6 )が生成し,水の吸着で硫酸を含む微小な液滴(硫酸エアロゾルとなる。
      2SO2 + O2 → 2SO3
      H2O + SO3 → H2SO4

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 【排煙脱硫装置について】

 脱硝・集塵後の排煙に含まれる硫黄酸化物は,排煙脱硫装置の中で,硫酸,硫安や石膏(せっこう)などの反応生成物として回収する。
 排煙脱硫には,用いる化学反応により乾式法と湿式法とに大別される。乾式法には,酸化マンガン法,接触酸化法などが,湿式法には,石灰法,アンモニア法,かせいソーダ法,水マグ法などがある。
 下図には,湿式法の石灰法を示す。石灰法で回収された石膏( CaSO4・2H2O )は産業用原材料として有効利用される。

排煙脱硫装置の原理

排煙脱硫装置の原理
元図出典:三菱重工(株)排煙脱硫装置

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