化 学 (化学反応)

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 ここでは,酸・塩基に関連し,【電離定数】【一価の酸・塩基の電離定数】【電離度と電離定数(オストワルドの希釈律)】【多価の酸塩基の電離定数】【参考:主な酸の電離定数】に項目を分けて紹介する。

 【電離定数】

 【活性化エネルギーとは】で紹介したように,可逆反応において,正反応と逆反応の速度が等しくなった状態を化学平衡という。電解質の化学平衡については,【平衡定数】で紹介したように,電離平衡( equilibrium of electrolytic dissociation )と称している。
 前項で電離度(電離したモル数の比率)の小さい電解質であっても,無限希薄では電離度が 1 に近づくことを紹介した。逆に,電離度の大きい電解質も濃度が高くなると電離度が小さくなることを意味する。
 実用の電解質溶液は,電解質濃度が比較的高い場合も多い。例えば,強酸である塩酸( HCl )は,希薄溶液では全ての塩酸が電離し不可逆反応として扱えるが,実用の濃度( 0.1 mol / L 水溶液)では電離度 0.93 と,電離していない塩酸が 7 %も存在する。
 このように,希薄溶液では不可逆反応として扱えるものも,実用レベルの濃度では,可逆反応として扱うのが適切な場合も少なくない。

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 【 1 価の酸・塩基の電離定数】

 電解質は水に溶解し,陽イオンと陰イオンに電離する。電解質溶液では,イオンと電離していない分子との間で化学平衡が成立する。
 1 価の酸である酢酸( CH3COOH )水溶液では,
     CH3COOH +H2O ⇆ CH3COO +H3O+
 1価の塩基のアンモニア( NH3 )水では,
     NH3 + H2O ⇆ NH4+ +OH
の平衡(電離平衡)が成立する。
 このとき,平衡定数 K は,反応物と生成物の濃度を用いて,それぞれ
     K = [ CH3COO ] [ H3O+ ] / [ CH3COOH ] [ H2O ]
     K = [ NH4+ ] [ OH ] / [ NH3 ] [ H2O ]
と記述される。
 電離平衡は,他の化学平衡と同様に,濃度が大きくなる場合には補正濃度としての活量を用いる必要がある。
 
 水溶液中での電離(電解質の解離)では,溶液 1 リットル中に水分子が約 1000 /18 mol (約 55.6 mol /L )存在するので,一般的な 0.1 mol /L 以下の濃度の酢酸やアンモニアに比較して圧倒的に多量存在する。
 このため,電解質の解離が進んでも水分子の量変化を無視することができる。すなわち,水の濃度 [ H2O ] を定数として扱うことができる。
 従って,電離平衡では,次に示すように,化学平衡の平衡定数に溶媒を加味した定数として電離定数( electrolytic dissociation constant )を用いる。
      Ka = [ CH3COO ] [ H3O+ ] / [ CH3COOH ]
      Kb = [ NH4+ ] [ OH ] / [ NH3 ]
 電離定数の記号は,酸に対して Ka (酸解離定数)を,塩基に対してKb (塩基解離定数)を用いるのが一般的である。
 なお,溶媒が水以外の場合(非水溶液)にも同様に扱うことができる。従って,電離定数は,溶媒の種類と温度に影響されるが,物質の濃度には影響されない定数である。
 
 電離定数は,物質により大きく異なり,桁数に著しい差があるなど,取扱いが不便なことがある。このため,正の整数で表記できる負の常用対数(底が10 の対数) pKa = - log10Ka ,pKb = - log10Kb で表される場合が多い。

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 【電離度と電離定数の関係(オストワルドの希釈律)】

 1 価の酸・塩基の電離平衡において,電離度(α)と電離定数( K )とには,初期濃度( C0とすると,次の関係が成立する。
      AH + H2O → A + H3O+
      Ka = [ A ] [ H3O+ ] / [ A ] = C0α × C0α / C0 ( 1 – α) = C0α2 /( 1 – α)
 この関係を「オストワルドの希釈律」という。
 すなわち,濃度の影響を受ける電離度は,既知の電離定数と初期濃度の二次方程式の正の解として得られる。
      C0α2 + Kaα- Ka = 0    α = [ - Ka + (Ka2 + 4 C0 Ka )1/2 ] / 2C0
 
 ここで,弱酸など,電離度α≪ 1 の場合には,次の近似が適用できる。
      ( 1‐α) ≒ 1  ∴ Ka ≒ C0α2
      α≒ ( Ka /C0 )1/2
      [ H3O+ ] = C0α≒ ( C0 Ka )1/2
の関係が得られる。1 価の弱塩基でも同様に考えられ,[ OH- ] ≒ ( C0 Kb )1/2 となる。
 
 参考: 二次方程式の解の公式
     aX2 + bX + C = 0    X = [ –b ± ( b2 – 4ac )1/2 ] / 2a

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 【多価の酸・塩基の電離定数】

 硫酸( H2SO4 ),リン酸( H3PO4 )などの多価の酸や塩基では,複数の段階を経て電離(逐次解離)する。
 例えば,炭酸( H2CO3 )の解離は,水に溶解した二酸化炭素( CO2 )と炭酸との平衡から考えなければならない。
 関連する反応平衡,電離平衡を個別に示すと次のようになる。
   ① CO2 ( aq ) + H2O ⇆ H2CO3  K = [ H2CO3 ] / [ CO2 ] [ H2O ] = 1.7×10-3 : pK ≒ 2.8
   ② H2CO3 + H2O ⇆ HCO3 + H3O+  Ka = [ HCO3 ] [ H3O+ ] / [ H2CO3 ] = 2.5×10-4 : pKa ≒ 3.6
   ③ HCO3 + H2O ⇆ CO32− + H3O+  Ka = [ CO32− ] [ H3O+ ] / [ HCO3 ] = 5.6×10-11 : pKa ≒ 10.2
なお,( aq )は水和分子を,平衡定数,電離定数は,25 ℃での値を示す。
 実際には,電離第一段階の②は,①の二酸化炭素との平衡の影響を受けるので,見かけ上の電離平衡と電離定数は,次のようになる。
   ① CO2 ( aq ) + H2O ⇆ HCO3 + H3O+
     Ka1 = [ HCO3 ] [ H3O+ ] / ( [ H2CO3 ] + [ CO2 ] ) = 4.45×10-7 : pKa1 ≒ 6.35
   ② HCO3 + H2O ⇆ CO32− + H3O+
     Ka2 = [ CO32− ] [ H3O+ ] / [ HCO3 ] = 4.78×10-11 : pKa2 ≒ 10.32
 多価酸や多価塩基の電離定数は,解離の順に,pKa1 ,pKa2 ,pKb1 ,pKb2 の様に数値を入れて区別する。

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 【参考】

主な酸の電離定数
赤字は,強酸に分類される化合物
酸  電離定数 PKa
  塩酸 ( HCl )   Ka = [ Cl ] [ H3O+ ] / [ HCl ] = 1×108   - 8.0
  硝酸 ( HNO3   Ka = [ NO3 ] [ H3O+ ] / [ HNO3 ] = 2.5×101   - 1.4
  酢酸 ( CH3COOH )   Ka = [ CH3COO ] [ H3O+ ] / [ CH3COOH ] = 1.75×10-5    4.76
  硫酸 ( H2SO4 )   Ka1 = [ HSO4 ] [ H3O+ ] / [ H2SO4 ] = 1.0×105
  Ka2 = [ SO42− ] [ H3O+ ] / [ HSO4 ] = 1.02×102
  - 5.0
  - 1.99
  炭酸 ( H2CO3 )   Ka1 = [ HCO3 ] [ H3O+ ] / [ H2CO3 ] = 4.45×10-7
  Ka2 = [ CO32− ] [ H3O+ ] / [ HCO3 ] = 4.75×10-11
   6.35
   10.32
  シュウ酸 ( H2C2O4 )   Ka1 = [ HC2O4 ] [ H3O+ ] / [ H2C2O4 ] = 5.4×10-2
  Ka2 = [ C2O42− ] [ H3O+ ] / [ HC2O4 ] = 5.4×10-5
   1.27
   4.27
  リン酸 ( H3PO4 )   Ka1 = [ H2PO4 ] [ H3O+ ] / [ H3PO4 ] = 7.08×10-3
  Ka2 = [ HPO42− ] [ H3O+ ] / [ H2PO4 ] = 6.3×10-8
  Ka3 = [ PO43− ] [ H3O+ ] / [ HPO42− ] = 4.17×10-13
   2.15
   7.2
   12.35
 0.10 mol / L 水溶液の電離度: HCl 0.93 ,HNO3 0.93 ,CH3COOH 0.016
 化学便覧第五版では,炭酸: pKa1 = 6.11 ,pKa2 = 9.87 ,シュウ酸: pKa1 = 1.04 ,pKa2 = 3.82 ,リン酸: pKa1 = 1.83 ,pKa2 = 6.43 ,pKa3 = 11.46 となっている。

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