化 学 (無機化学)

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 ここでは,石炭の概要とその燃焼に関連し,【石炭の成り立ち】【石炭の分類】【石炭の特徴と用途】【石炭の燃焼】に項目を分けて紹介する。

 【石炭の成り立ち】

 石炭( coal )とは,JIS M 0104 「石炭利用技術用語:Technical Terms Used in Coal Utilization 」では,“主に太古の植物が,生物化学的及び地球物理・化学的反応によって,変質して生成した可燃性岩石状物質。”と定義している。
 
 古生代から恐竜が生きていた時代は,大気中に多量の二酸化炭素(現在の 10 倍ほどともいわれる)があり,地球の温暖化と活発な光合成により,陸上では多量の大型植物の成長と,多量の死滅した樹木により,地表は枯れた植物の積み重なった層で覆われていた。
 
 今の地上では,倒れた樹木は,土中の菌類や微生物,昆虫により分解されるが,古生代には樹木を分解できる生物が少なかったため,大量の植物群が分解されずに土中に埋没していた。
 地中に埋没した植物は,地圧・地熱の影響を受け,様な化学反応(脱水反応,脱炭酸反応,脱メタン反応など)を伴い変化していった。この変化は総称して石炭化( coalification )と呼ばれ,その程度を石炭化度( coal rank , degree of coalification )という。

 【石炭の分類】

 セルロースやリグニンを主成分とする植物が,石炭化により泥状の泥炭(でいたん: peat )→ 炭素の濃度 70 %以下の亜炭(あたん: lignite )→ 70~78%褐炭(かったん: brown coal )→ 78~83%亜瀝青炭(あれきせいたん: subbituminous coal )→ 83~90%歴青炭(れきせいたん: bituminous coal ) →(80%以上の半無煙炭(はんむえんたん: semianthracite )→) 90%以上の芳香族炭化水素主体の無煙炭(むえんたん: anthracite )まで,炭素濃度の増加とともに硬くなる。なお,この石炭化度による石炭の分類は,古くから用いられている分類法の一つである。
 石炭化度による分類は,発熱量,燃料比の違いでさらに分類される。JIS M 1002 「炭量計算基準: Calculation of Coal Reserves 」では,褐炭 F1 ,褐炭 F2 ,亜瀝青炭 E ,亜瀝青炭 D ,瀝青炭 C ,瀝青炭 B2 ,瀝青炭 B1 ,無煙炭 A2 ,無煙炭 A1 に分類されている。
 
 JIS M 0104 「石炭利用技術用語」では, 石炭化度がある範囲内に入り,工業的に利用できるものを石炭と定義している。石炭は,石炭化度の他に,性状や用途などでも分類される。
 
 性状による分類
 石炭を乾留した時,軟化溶融状態において観測される性質,すなわち粘結性( caking property )の程度により,粘結炭( caking coal ),微粘結炭( slightly caking coal ),非粘結炭( non - caking coal )に分類される。
 
 用途による分類
 発電及びセメント製造などの燃料として用いる原料炭を除いた石炭を一般炭,コークス製造の原料として用いる石炭を原料炭,ガス化炉でガスを製造するために用いる石炭をガス化用炭に分類される。
 
 石炭の用途では,火力発電と鉄鋼(製鉄)が圧倒的に多い。日本の発電における石炭の燃料投入量は,天然ガスに次いで2番目に多い燃料である。

石炭の用途

石炭の用途
出典:資源エネルギー庁エネルギー白書 2015

 関連用語
 燃料比( fuel ratio )
 石炭の工業分析結果のうち,固定炭素(%)を揮発分(%)で割った値である。
 固定炭素( fixed carbon )
 工業分析において,水分,揮発分,灰分の百分率の合計を 100 から差し引いた値をいう。
 揮発分( volatile matter )
 空気との接触を絶って,規定の条件のもとで,試料を加熱したときの,質量減少率から水分を差し引いた値である。
 JIS M 8812 「石炭類及びコークス類―工業分析方法:Coal and coke − Methods for proximate analysis 」では,試料 1g をふた付きのるつぼに入れ,900±20 ℃で 7 分間加熱したときの質量減少率から,同時に定量した水分( 107±2 ℃で 1 時間)を差し引いた値を揮発分としている。

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 【石炭の特徴と用途】

 泥炭 (peat)
 品質が悪いため工業用の石炭として分類されないが,スコッチ・ウイスキーの製造で,大麦麦芽を乾燥させる燃料(ピート)として香り付けを兼ねて用いられる。この他に,保水性や通気性を利用し,園芸用土として使用されている。
 亜炭 (lignite)
 質の悪い褐炭と位置づけられ,燃料としての用途はほとんどなく,土壌改良材などに利用例がある。
 褐炭 (brown coal)
 石炭化度が低く,水分・酸素の多い石炭で,練炭・豆炭などの加工品に使用される。
 亜瀝青炭 (subbituminous coal)
 埋蔵量が多く,広く分布している。コークス原料には使えないが,揮発分が多く火付きが良くため,電力用や産業用の微粉炭ボイラに利用される。
 瀝青炭 (bituminous coal)
 粘結性が高いものは,コークス原料に使われる。
 半無煙炭 (semianthracite)
 粉炭ボイラ用としては揮発分が少なく適さない。セメント産業の燃料流動床ボイラに使われる。
 無煙炭 (anthracite)
 石炭化度が高く,揮発分が少ないので,燃やしても煙の少ない石炭で,家庭用の練炭原料,カーバイドの原料,粉鉄鉱石を塊状に焼結する焼結炉に使われる。

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 【石炭の燃焼】

 炭種によるが,有機質の元素組成は,一般的に C100 H30~110 O3~40 N0.5~2 S0.1~3 と表される。式からも有機質の中に硫黄( S ),窒素( N )が多く含まれることが分かる。さらに,石炭には,硫酸塩の硫黄( SO42- ),黄鉄鉱の硫黄( FeS2など無機質の硫黄としても多く含まれる。
 このことは,石炭の燃焼で,天然ガスや石油に比較して,硫黄酸化物( SOx )や窒素酸化物( NOxを発生しやすく,四大公害病の一つ四日市ぜんそく酸性雨原因物質ともなっている。
 従って,石炭の利用では,燃焼排気からの脱硫や脱硝のための工夫がとられている。
 
 燃焼過程
 燃料として用いられる石炭は,揮発分として 40 %程度を含む亜瀝青炭や瀝青炭が用いられる。下図の火力発電所では,石炭は微粉砕してからバーナに導入されている。

石炭火力発電所の仕組み

石炭火力発電所の仕組み例
元図出典:北陸電力(株)火力発電について

 バーナに導入された低温の石炭粒子の燃焼過程は,下図に示すように,まず周囲の火炎や放射によって温度が上昇(予熱領域)し,粒子の温度が約 400 ℃になると熱分解が始まる。
 熱分解で放出した揮発分の量が増えると石炭粒子に着火する。揮発分の燃焼によって粒子温度がさらに高くなる。
 揮発分の放出が進み,終には揮発分を含まない固形分(チャーとなるが,固形分の炭素の酸化(燃焼)が継続し炭素分が減少する。燃焼終了後の残差は,未燃分(フライアッシュ)と呼ばれる。

微粉炭の燃焼過程

微粉炭の燃焼過程
元図出典:(一般財団)石炭エネルギーセンターコールサイエンスハンドブック

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