化 学 (無機化学)

  ☆ “ホーム” ⇒ “生活の中の科学“ ⇒
 
 ここでは,無機化学の基本(電気伝導率測定)に関連し,【直流測定と交流測定の選択】【電気伝導率測定回路】【参考:伝導率測定関連用語】に項目を分けて紹介する。

 【直流測定と交流測定の選択】

 【電気特性の測定原理】で紹介したように,電気伝導率( electric conductivity )は,物体の抵抗成分(レジスタンス)から計算できる。
 従って,原理的には一定の直流電流を流し,物体の電位差(電圧降下)を計測し,オームの法則( V = RI )を用いて電気抵抗 R を求め,導体の断面積 A ,電極間の距離 d から次式を用いて電気伝導率σを求めることができる。
      σ = R-1 ( d /A )
 しかし,固体のイオン伝導体や電解質溶液では,直流電流を流すことでイオンの移動による分極が起こり,模式的には「電極反応」の電極間の電位分布で示すような電極近傍に電圧降下が集中し,物体そのものの電気伝導率を求めることが困難となる。
 
 このように,直流測定が望ましくない場合として,イオンの移動で分極する電解質溶液,固体のイオン伝導体,電極との不均質な接触,物質内部存在する多数の界面による不均質な接触により,界面での接触抵抗が問題となる粉末試料や薄膜試料などがある。
 このような場合は,交流電源によるインピーダンス計測が有効になる。交流測定の利点としては,物体と電極との電気的接触による影響(接触抵抗,静電容量)がある場合に,接触抵抗,容量成分を分離でき,これらの影響を軽減できる。また,外部からのかく乱(雑音)の影響を軽減できる。
 さらに,電流を流すことによる熱起電力効果(不均一な温度分布による起電力)や整流効果の影響を低減できる。
 ただし,測定時の周波数が高くなると,いわゆる表面効果(表面を流れる電流が内部より多くなる)により,見かけ上の電気抵抗増加,すなわち電気伝導率の減少になる。

  ページの先頭へ

 【電気伝導率測定回路】

 一般的に用いられる電気伝導率の測定には,電極を 2つ用いる 2 端子(電極)法と電極を 4 つ用いる 4 端子(電極)法がある。
 2 端子(電極)法は,身近な例として,テスターで抵抗値を測定する場合に,2 本のリード線を試料に接触させて測るなど,一般的に行う測定手法である。
 この方法では,測定値にリード線の抵抗値,端子(電極)と物体との接触抵抗値を含む。測定対象の抵抗値が数Ω以上と高い場合には問題ではないが,数Ω以下の抵抗値を正確に測ろうとする場合には問題となる。
 さらに,高い周波数のインピーダンスでは,リード線のインダクタンス(コイル成分:リアクタンス)の影響も無視できない。
 
 4 端子(電極)法は,試料に電流を流す端子(電極)と電圧を検出するラインを別々に分けて計測する手法である。この方法では,電圧を検出するラインに電流を流す必要がなく。リード線等による電圧降下を避けることができるため,低抵抗の対象物の計測や高周波数でのインピーダンス測定で主に用いられる。

 2 端子(電極)法と 4 端子(電極)法

2 端子(電極)法と 4 端子(電極)法

 抵抗値や容量値の正確な測定を目的に,ブリッジ回路を用いるのが一般的である。直流回路のホイーストンブリッジは,ひずみゲージなどで抵抗変化の精密測定に広く用いられている。
 下図の左に示すホーストンブリッジでは,直流や低周波数の交流を電源とし,図の D に電流が流れないように,R1 ,R2 ,R3 を調整することで,未知の抵抗 R が次式から求まる。
      R = R1 ( R2 /R3 )
 交流測定法では,ホイーストンブリッジを改良した交流ブリッジを用いる場合が多い。交流ブリッジには多くの種類がある。
 下図の右には,誘電率の計測などで広く用いられるシェリングブリッジの基本的な回路例を紹介する。任意の周波数の交流を電源とし,回路の D に電流が流れないように,抵抗( RA , RB )やコンデンサ( CA , CB , CT )を調整することで,未知の抵抗 Rx ,容量 Cx ,及び損失係数 tan δ ( = σ /ωε ) が次式から求まる。
      Cx = CT ( RB / RA ) /( 1+ tan2δ
      1 /Rx = ω Cx tan δ
      tan δ = ω ( CBRB – CARA )

基本的なブリッジ回路の例

基本的なブリッジ回路の例

  ページの先頭へ

 【参考】

 
 インピーダンス( impedance )
 直流電流のオームの法則の電気抵抗( R = V /I )の概念を複素数に拡大し,交流電圧の最大値( Vmax )を交流電流の最大値( Imax )の比(複素数)を電気回路におけるインピーダンス( impedance )といい,記号 Z (単位Ω)を用いる。複素数の実数部をレジスタンス(抵抗成分),虚数部をリアクタンスという。
 リアクタンス( reactance )
 交流回路のコイルやコンデンサの電圧と電流の比で,電気抵抗と同じ次元(単位Ω)を持つが,エネルギーを消費しない擬似的な抵抗である。
 アドミタンス( admittance )
 インピーダンスの逆数をいい,記号 Y (単位 S ジーメンス)を用いる。
 コンダクタンス( conductance )
 電流の流れやすさ,直流回路では電気抵抗の逆数,交流回路ではインピーダンスの逆数の実数部,記号 G (単位 S ジーメンス)を用いる。
 インダクタンス( inductance )
 コイルなどにおいて電流の変化が誘導起電力となって現れる性質。電圧と電流変化率との比。自己インダクタンスの記号 L ,相互インダクタンスの記号 M ,単位 H(ヘンリー)を用いる。
 キャパシタンス( capacitance )
 静電容量( electrostatic capacity )ともいい,コンデンサなどの絶縁された導体に蓄える電荷を表す量で,単位電圧当たりの蓄えられる電荷で,記号 C (単位 F :ファラド)を用いる。
 固体の電気伝導率測定例
 JIS R 1661 「ファインセラミックスイオン伝導体の導電率測定方法:Method for conductivity measurement of ion-conductive fine ceramics 」では,4 端子測定機能をもち,必要な測定範囲で有効数字 3 けた以上を測定できる交流インピーダンス計を用いること,電流端子間の電圧は 500 mV 以下とすること,測定周波数は 100 Hz ~ 10 kHz とし,電圧端子間のインピーダンスの絶対値(│Z│)と位相(θ)を測定,少なくとも約 100 Hz ,約 1 kHz 及び約 10 kHz の 3 種類の周波数における測定が必要であることが規定されている。

  ページの先頭へ