第四部:無機化学の基礎 生活と無機(電気通信材料)
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ここでは,電話,インターネットなど電気通信に用いられる材料に関連し, 【電気通信事業とは】, 【通信技術の歴史】, 【電気通信設備】 に項目を分けて紹介する。
電気通信事業とは
電気事業と電気通信事業とは,大きく異なるので,まずは,その違いを再確認しておく。
電気事業とは,「電気事業法」に規定される電気を供給する事業(発電,送電,売電)をいう。
電気通信事業
有線,無線その他の電磁的方式により,符号,音響又は影像を送り,伝え,又は受ける設備(機械,器具,線路その他の電気的設備)を用いて他人の通信を媒介し,その他電気通信設備を他人の通信の用に供することをいう。
しかし,法的には電気通信事業とは,「電気通信事業法」に規定される事業で,同様の電気通信分野である「放送法」に規定する事業(ラジオ,テレビなど放送業)は除かれる。
「情報通信白書 平成 27年版」によると,NTT ,KDDI ,ソフトバンクなどの電気通信事業(平成 25年度)394社,民間放送業 406社,有線放送業 236社ある。
「情報通信白書 令和 2年版」によると,NTT ,KDDI ,ソフトバンクなどの電気通信事業(2018年度)403社,民間放送業 376社,有線放送業 196社ある。
電気通信事業設備関連の法には,「電波法」や「有線電気通信法」がある。
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通信技術の歴史
18 世紀中盤までの通信手段は,のろし,新書など人手による通信,伝書鳩を用いた通信などであったが,1832 年に電信機(無線)の技術発明(ロシアのシリング)で,遠隔地での情報通信が可能になった。
次には,無線での通信技術,有線での通信技術の変遷を紹介する。
無線通信
1836 年:アメリカのサミュエル・モールスと弟子のアルフレッド・ヴェイルが電信を発展させた。
1837 年:ヴェイルの考案したモールス信号により飛躍的に広まることとなった。
1843 年:イギリスのアレクサンダー・ベインがファクシミリの原型を発明している。
1897 年:ドイツのフェルディナント・ブラウンが陰極線管であるブラウン管を発明した。
1906 年:アメリカのフェッセンデンが初めてラジオ放送を行う。
1907 年:ロシアのボリス・ロージングがブラウン管によるテレビ受像機を考案した。
1920 年:公共放送としてのラジオ放送がアメリカ・ペンシルベニア州ピッツバーグで開始された。
1925 年:日本でのラジオ放送局(大正 14 年:社団法人東京放送局)が開局した。
1927 年:アメリカのフィロ・ファーンズワースが電子式テレビ撮像機を開発した。
1929 年:英国放送協会(BBC)がテレビ実験放送開始した。
1939 年:日本でのテレビ実験放送(現 NHK )を開始した。
1962 年:NASA が打ち上げたテルスター衛星によりパリからアメリカへのテレビ中継に成功した。
有線通信
1850 年:イギリスとフランスを海底ケーブルで結ぶ有線での通信が開始した。
1876 年:アレクサンダー・グラハム・ベルにより実用的な電話が発明された。
1940 年代:実用的なコンピュータが登場した。
1960 年代:コンピュータ間の情報をやり取りする技術が進む。
1969 年:ネットワークが構成された。
1930 年:ドイツのハインリッヒ・ラムが,ガラス繊維の束に光を導く実験を行った。
1964年:東北大学の西澤潤一,佐々木市右衛門が,自己集束型光ファイバによる光通信の可能性を示唆した。
1965 年:ドイツのテレフンケン研究所で世界初の光ファイバによるデータ転送システムのデモンストレーションが行われた。
1981 年: TCP ( Transmission Control Protocol ) が定義され,今日の TCP /IP プロトコルが生まれた。
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電気通信設備
電気通信設備( telecommunications facility )
一般的には,電気通信のための交換機,伝送装置,伝送路( 伝送線路,通信路,通信線路などともいう)などで構成される。
他に,情報を利用するための端末( terminal :電話,携帯電話などの通信端末,コンピュータなどの端末装置)でシステムが構成されている。
交換機( Switch Board ,Exchange )とは,多対多の電気通信で,要求に従い伝送路間の接続を切り替える機器である。
伝送装置( transmission equipment ,transmission system )とは,情報を一方の装置から他の装置へ移動させる際に,別の形式(音声,画像,情報などの電圧値形式の信号と電波形式の信号とに相互変換する機器である。
伝送路( Channel )とは,情報や電力の伝送のために使用される媒体(電線,同軸ケーブル,光ケーブル,導波管,無線,記憶装置など)である。
なお,伝送路には,加入者線路(加入者端末を直接収容するためのもの)と中継線路(局間を中継するもの)がある。
伝送路関連技術の変遷
古くは,裸電線(銅線)が碍子で大地と絶縁された状態で使用されていた。適切な絶縁材料の開発で,絶縁電線が碍子引きで使用される時代が長く続いた。
長距離では静電容量の影響による交流抵抗が無視できない。この補正する技術(装荷ケーブル)の開発で通信距離が伸びた。
1932 年には,装荷ケーブルの欠点(伝送帯域が狭い,信号が歪むなど)を解消する真空管を用いた信号システム(松前重義による『長距離電話回線に無装荷ケーブルを使用せんとする提案』)が開発された。この技術はその後の同軸ケーブル(絶縁層を介して銅線などの内部導体を銅網線などの外部導体で覆った形状のケーブル)や導波管(マイクロ波などを伝送するための中空の金属性管)などに用いられた。
1990年代になると,光ファイバを束ねた光ケーブルによる有線光通信が導入され,適用範囲が拡大され,インターネット回線の主流になりつつある。
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