第一部:化学と物質構造 生活と化学

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  化学のはじまり

 人類が生活に化学を利用し始めたのは,火の発見からである。火の利用により,土(粘土)を利用した陶器の発明で食生活が大きく変わる。その後,酸化物を還元することで種々の金属を手に入れ,種々の道具が発明され人類の生活が大きく変化してきた。

 次第に青銅などの合金を得るための金属精錬技術(冶金術が発展した。紀元前 4世紀には,“物体は,単純物体である火・空気・水・土を構成要素とし,乾・冷・湿・温の作用で互いに変換する”と考えるアリストテレスの 4 元素説の影響を受けて,金の合成を目的とした錬金術( alchemy )がエジプトで台頭する。

 錬金術は,紀元 1世紀ごろエジプトからアラビアを経てヨーロッパに広がり,卑金属を貴金属の金に変えようとする化学技術,不老不死の仙薬を求める呪術的性格をもった物として,13世紀以降に大きく発展し,14~15世紀に全盛をきわめた。科学としては誤りであったが,多くの化学的知識が蓄積され近代化学成立の基礎となった。
 錬金術時代の成果には,実験装置の発明,蒸留技術の発展,無機酸(硝酸,硫酸,塩酸)等の化学薬品の発明など現代化学に不可欠のものが多く見出されている。

 17世紀には,化学が錬金術から決別し科学になろうとする運動が始まり,1774年のラボアジェによる“質量保存の法則”の発見で,化学が学問として独り立ちしたといわれている。

 【参考】
 アリストテレス( Aristotelēs )
 アリストテレス(紀元前 384年~ 322 年)は,古代ギリシャの哲学者,プラトンの弟子,ソクラテス,プラトンとともに西洋最大の哲学者の一人。「万学の祖」と呼ばれ,多くの領域に関し研究を行い,著書『自然学』で自然学研究群の基礎を構成した。また,アリストテレスの 4 元素説,“物体は,単純物体である火・空気・水・土を構成要素とし,乾・冷・湿・温の作用で互いに変換する”は,現代化学の基礎となる錬金術の発展に大きな影響を与えている。
 ラボアジェ( Antoine-Laurent de Lavoisier )(アントワーヌ・ローラン・ド・ラボアジェ)
 フランス人化学者( 1743~ 1794 ),質量保存の法則の発見者,燃焼現象を酸素との反応で説明した最初の人物である。
 質量保存の法則( law of conservation of mass )
 質量保存の法則ともいい,素粒子論・核物理・宇宙論などを除く分野,特に化学で重要な法則,フランスの科学者アントワーヌ・ラヴォアジエが 1774年に“化学反応の前と後で物質の総質量は変化しない”と提唱した。
 現代の化学では,アインシュタインの提唱する特殊相対性理論(質量とエネルギーの等価性)により,厳密な意味での質量保存の法則は成立しない。すなわち,核反応などでは実際の質量変化を認められる。
 しかし,実用範囲では質量保の存則が成立するとして不都合が少ないため,一般的な化学反応では質量保存の法則に従って議論されている。

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