第六部:生化学の基礎 生化学の研究対象

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  ここでは,生物の体内で起きている化学反応に関連し, 【生化学とは】, 【生化学の研究対象】 に項目を分けて紹介する。

  生化学とは

 生化学( biochemistry )
 生物化学( biological chemistry )と呼ばれることもあるが,生物体を構成する物質や生体内に生じる化学物質,すなわち生体物質の生物的機能や化学構造の研究,および生体物質の生合成,分解等の代謝機構や調整機構を化学的方法を用いて研究する学問分野である。
 生化学は,生物学の一分科であるとともに,生命現象を説明しようとする化学の一分科としても扱われる。
 近年の生化学は,遺伝子の働きを分子レベルで説明する分子生物学との境界があいまいになり,一体化(バイオテクノロジー)しつつある。

 生体物質( living substance , biological matter )
 有機化合物(アミノ酸,たんぱく質,糖質,脂質,核酸,酵素,ビタミン,ホルモンなど)と無機元素(ミネラルなど)から成る物質である。
 なお,分子生物学( molecular biology )
 酵素たんぱく質の構造と機能との関係をはじめ,デオキシリボ核酸(DNA),リボ核酸(RNA),たんぱく質の相互作用による遺伝情報の発現と伝達機構の解明などを対象とする分子レベルの生化学的研究である。

 【参考】
 代謝( metabolism )
 体外から取り入れた無機物や有機化合物を素材とし,生命維持のために行う一連の化学反応。代謝は,物質を分解する過程の異化と物質を合成する同化に区分される。
 有機化合物( organic compounds )
 炭素を含む化合物の総称。ただし,炭素の酸化物や炭酸塩などは無機化合物。
 無機化合物( inorganic compounds )
 有機化合物以外の化合物の総称。炭素の酸化物や炭酸塩は無機化合物に含める。

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  生化学の研究対象

 生化学の研究対象は,きわめて広範囲であるが,基本的には生物種別の動物と対象とする動物生化学植物を対象とする植物生化学微生物を対象とする微生物生化学人体に特化した人体生化学などに大別される。
 生物種ではなく,高等動植物から微生物まで,共通する化学組成や生物体内での化学反応などを対象とする一般生化学生物相互の相違を化学的に解明する比較生化学の分類もある。

 多細胞生物の個体としての生化学(人体生化学など)は,生理化学ともよばれ,以前の主流であった。
 細胞レベルでの生化学とは,細胞全体,細胞器官(核,ミトコンドリア,細胞膜,小胞体など)の組成,構造(高次構造),機能,代謝の研究である。
 分子レベルでの生化学とは,天然高分子化合物であるたんぱく質,核酸,糖などの構造と機能の研究である。

 以上が,一般的にいわれるところの生化学である。この他に,時間・空間を広げた地球生化学,宇宙生化学,古生物化学などの分類がある。生化学の応用分野には,病理化学,栄養化学,発酵化学,食品化学などがある。
 近年に成長が目覚ましい生命科学(ライフサイエンス)とは,分子生物学,動物行動学などを中心に,生命の基本的な問題(記憶,意識,人工臓器,遺伝子操作,地球環境問題など)に多角的に対処する学問分野である。

 【参考】
 生物界( living world )
 一般には生物のすむ世界をいう。生物の成り立ちから,古くは,生物を「植物」と「動物」に分ける「生物界二分法」が用いられていた。顕微鏡の発明により,生物を「植物界」,「動物界」,「微生物界」に分ける「生物界三分法」や,「植物界」,「動物界」,「菌類界」,「原生生物界」,「原核生物(モネラ)界」に分ける「生物界五分法」の考え方もある。「参照;日本大百科全書」
 植物( plant )
 動物とともに生物界(生物)を構成する一群。特徴としては,細胞がセルロースなどでできた細胞壁でおおわれること,細胞内に葉緑素を含み,無機物から有機物を合成し得ること,発生の際に1次生長を行う部分が軸の両端部に限られ,しかもその生長が連続的,かつ無限の能力をもっていることなどがあげられる。「参照;百科事典マイペディア」
 動物( animal )
 動物界を構成する一群をいう。植物が無機物を栄養とするのに対し,主として有機物を摂取(従属栄養)すること,運動,感覚の機能がすぐれること,さらに吸収,消化,排出,循環などの分化の程度が高いこと,また細胞はセルロースを主成分とする細胞膜をもたないことなどが特徴とされる。
 単細胞の原生動物から人間まで,さまざまな段階の体制をもつものが存在する。現生の既知種は約 100万~150万種といわれる。「参照;百科事典マイペディア」
 細胞( cell )
 生物体を構成する基本単位。細胞膜の内部に細胞質,核および各種の細胞小器官をもつ。核は遺伝情報の貯蔵所で,核が膜に包まれているかいないかによって,真核細胞と原核細胞に大別される。
 原核細胞をもつのは原核生物だけで,それ以外のすべての生物は真核細胞をもち,真核生物と呼ばれる。真核細胞のうち植物細胞は,一般に細胞膜の外をセルロースやペクチンを主成分とする細胞壁に囲まれ,葉緑体などの色素体のほか大きな液胞をもつことが多いなどの点で動物細胞と異なる。「参照;知恵蔵」

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