化 学 (化学反応)

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 ここでは,電気化学の基礎の電極反応に関連し,【電池の表示法】【電位の分布と起電力】【ボルタ電池で何が起きている】【電気量】【参考:電気二重層,水素過電圧など関連電気化学用語】に項目を分けて紹介する。

 【電池の表示法】

 アノード(負極,陽極)となる電極系をに,カソード(正極,陰極)になる電極系をに書く。この時,状態の異なる相は記号 | で区切り,異なる溶液は記号 || で区切る。これを電池図という。
 例えば,ボルタ電池では,アノードの亜鉛板とカソードの銅板が希硫酸( H2SO4 )に浸漬されているので,電池図は,
      Zn | H2SO4 (aq) | Cu
と表示する。
 ダニエル電池の電池図は,アノードが亜鉛板と硫酸亜鉛( ZnSO4 )水溶液で構成され,カソードが銅板と硫酸銅( CuSO4 )水溶液で構成され,陶板で分離されているので,
      Zn | ZnSO4 (aq) || CuSO4 (aq) | Cu
と表示する。

 

 【電位の分布と起電力】

 起電力( electromotive force , EMF )とは,電流を生じさせる電位の差(電圧)である。
 電池内部の電位分布を模式的に示すと,下図のように,電極表面の極近傍に形成する電気二重層内で電位が変化し,電解液の沖合では電位変化はほとんどないと考えてよい。

電極間の電位分布【模式図】

電極間の電位分布【模式図】

 電気二重層内の電位は,酸化反応,還元反応での物質濃度の変化に電荷の分布よる電位,すなわち電極電位と考えられる。
 電池の起電力計算
 化学反応による電池の起電力は,標準電極電位から理論的な起電力を,式量電位と過電圧からより実用的な起電力が計算できる。
 【電池】では,電池別の起電力を紹介したが,その起電力について詳しく見てみる。
 電池の理論起電力は,電池図の右の電位と左の電位を合わせたものであるが,右の半反応は酸化反応であるため,標準電極電位,又は式量電位の決まり(還元反応で表す)から,電位の符号は逆の符合になる。従って,
      電池の理論起電力=(左の電極電位)-(右の電極電位)
となる。
 
 次表には,代表的な電池の半反応と電極電位( V vs. SHE )をまとめて示す。なお,各電池の起電力(理論値:実測値)は,ボルタ電池( 0.7626 V : 1.1 → 0.4 V ),ダニエル電池( 1.10 V : 1.1 V ),鉛蓄電池( 1.81 V : 約 2 V ),水素燃料蓄電池( 1.23 V : 1.2 V )である。
代表的な電池の半反応と電極電位( V vs. SHE )
電池名 電池図 負極 電位 正極 電位
 ボルタ電池  Zn | H2SO4(aq) | Cu  Zn → Zn2+ + 2e-  - 0.7626  2H+ + 2e- → H2   0.0000
 ダニエル電池  Zn | ZnSO4(aq) || CuSO4(aq) | Cu  Zn → Zn2+ + 2e-  - 0.7626  Cu2+ + 2e- → Cu   0.340
 鉛蓄電池  Pb | H2SO4(aq) | PbO2  Pb → Pb2+ + 2e-  - 0.1263  PbO2 + 4H+ + SO42- + 2e-
    → PbSO4 + 2H2O
  1.685
 水素燃料電池  Pt・ H2 | KOH | O2 ・Pt  2H2 → 4H+ + 4e-   0.0000  O2 + 4H+ + 4e- → 2H2O   1.229

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 【ボルタ電池で何が起きている】

 実測起電力は,初期の 1.1 Vから次第に低下し,最終的に 0.4 V 程度となり,この電池の理論起電力 0.763 と大きく異なる。
 これは,実際の電池が,硫酸に浸漬した時に銅板表面が酸化銅で覆われていること,水素イオンの還元反応では水素過電圧の影響を受けることによるものと考えられる。
 ボルタ電池構成直後の銅表面が酸化銅で覆われている。この銅板を希硫酸に浸漬することで,酸化銅の溶解で生じた銅イオンが銅板表面に多量存在するため,ダニエル電池と同じ還元反応で起電力 1.1 V が得られる。この時には,水素ガスの発生はない。
 しばらくして,銅板表面の銅イオンが消費されると,起電力が低下し,水素イオンの還元反応に移行する。しかし,銅板表面で水素の還元反応を始めるための活性化エネルギーが比較的大きく,反応を継続するためには,このエネルギーに相当する電圧が必要となる。
 このため,起電力は理論起電力の 0.76 V から 0.4 V 程度まで低下する。これに相当する電圧を 過電圧( overpotential , overvoltage )という。正極の金属を変えること過電圧の影響も変わる。例えば,銅の(水素)過電圧( 0.4 ~ 0.6 V )から(水素)過電圧の小さい白金( 0.005 V )に変えると,理論起電力に近い値になる。

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 【電気量】

 電気分解の電気量と分解量,電気めっきの付着量と電気量,電池の放電容量と電極での反応量は,酸化還元反応による物質変化量と電気エネルギーとの関係から求められる。
 電気量と物質変化量の関係は,1833 年にイギリスの科学者マイケル・ファラデーによって発見された物理法則,すなわちファラデーの電気分解の法則( Faraday's laws of electrolysis )で説明される。
 ・物質の量 m ( g ) は,流れた電気量(電流×時間)に比例する。電流 I ( A ) ×時間 t ( s ) =電気量 Q ( C ) なので,
      m = K ・ I ・ t = K・Q
      ここに,K :電気化学当量(比例定数)
 ・1グラム当りの等量の物質を析出させるのに必要な電気量は,物質の種類によらず一定である。物質の分子量 M ( g / mol ) とすると,
      m = ( MQ ) /( zF )
      ここに,z :イオン価数,F :ファラデー定数 ( 9.6485 × 104 C/mol )
 /strong>備考:電池の容量については,電池内の反応物質を 1 時間で使い切ってしまう場合を想定した電流量( Ah や mAh )で表示されるのが一般的である。

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 【参考】

 ● 電気二重層( electric double layer )
 組成が異なる二つの相の接触界面で,一方の側に余分の正電荷が,他方の側に余分の負電荷が分布する層。( JIS K 0213 )
 ● 式量電位 ( formal potential )
 ネルンスト式において,活量の代わりにモル濃度を用いてネルンスト式と同じ形式で表して定義したときの値( E0' )。 電極反応 O+ne ⇄ R において,電気活性物質 O,R のモル濃度をそれぞれ CO,CRとし,気体定数を R,ファラデー定数を F,絶対温度を T とすれば,平衡電位 E は次の式で表す。
      E = E0' + ( RT/nF ) ln ( CO / CR )
 この値は活量係数に関する項を含むので,溶液のイオン強度によって変化する。見かけの電位ともいう。( JIS K 0213 )
 ● 過電圧( overpotential , overvoltage )
 単一電極において,ある値の電流が流れているときのその電極の電位と平衡電位との差。
 作用電極に電流 i が流れているとき,その電極の電位を E( I ) とすれば,過電圧 E( I ) = E( 0 ) – I R で表す。
 ここに,E( 0 ) : I = 0 のときの E( I ) の値,R :溶液の抵抗( JIS K 0213 )
 ● 水素過電圧( hydrogen overvoltage )
 過電圧には,反応物質の活性化に余計なエネルギーが消費されるための活性化過電圧( activation overpotential , activation overvoltage ),電極表面と溶液内部の濃度が異なるために生じる濃度過電圧( concentration overpotential , concentration overvoltage ),電極表面での抵抗から生じる抵抗過電圧が複合的に作用している。
 水素発生反応に対しては,水素過電圧と称している。例えば,主な金属の硫酸( 0.5 mol /L )中の水素過電圧は,Pt ( 0.005 V ) ,Au ( 0.02 V ) ,Fe ( 0.08 V ) ,Ag ( 0.15 V ) ,Ni ( 0.21 V ) , Cu ( 0.23 V ) ,Pb ( 0.64 V ) ,Zn ( 0.7 V ) ,Hg ( 0.78 V ) などである。電気めっきなどの場合に重要な情報である。

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