第一部:化学と物質構造・その他の結合
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配位結合
配位結合( coordinate bond )
結合する二つの原子において,結合に関わる電子対が一方の原子のみから提供される化学結合で,二つの原子が,それぞれに電子を 1個供給して結合電子対を形成する共有結合とは区別される。
すなわち,配位結合は,ルイス酸( Lewis acid )とルイス塩基( Lewis base )との結合でもある。すなわち,電子対を受け取る物質はルイス酸,電子対を与える物質はルイス塩基となる。
一般的な配位結合の説明に,アンモニウムイオンやオキソニウムイオン(ヒドロニウムイオン)の形成反応が用いられているが,ここでは,アンモニア(気体)と塩酸(気体)から固体の塩化アンモニウム(アンモニウムイオンと塩化物イオンの化合物)の生成反応をもちいて配位結合を解説する。
なお,化学式には,電子対の配置が分かりやすい電子式(ルイス構造式)を用いた。
下図に示すように,気体状のアンモニア( NH3 )分子と気体状の塩酸( HCl )分子が衝突した時,
中間状態として塩酸が塩化物イオン( Cl- )とルイス酸であるプロトン(水素イオン, H+ )に解離する。
最終的に,プロトンがルイス塩基であるアンモニアと配位結合し,アンモニウムイオン( NH4+ )が生成する。
【参考】
酸・塩基の定義
主要な酸,塩基の定義には,アレニウス酸・塩基,ブレンステッド‐ローリー酸・塩基,及びルイス酸・塩基がある。
アレニウス酸・塩基 ( Arrhenius acid,base )
スウェーデンの科学者スヴァンテ・アレニウス( 1859 ~ 1927 ,物理化学の創始者)が 1884年に定義した酸・塩基。
酸:水溶液中においてプロトン ( H+ ) を出す物質。
塩基:水に溶けた時に水酸化物イオン ( OH- ) を出す物質。
ブレンステッド‐ローリー酸・塩基 ( Brönsted acid,base)
デンマークの科学者ヨハンス・ブレンステッド( 1879 ~ 1947)とイギリスの科学者マーチン・ローリー( 1874 ~ 1936 )が同時( 1923年)に定義した酸・塩基。
酸:反応する相手に対しプロトンを与える物質。
塩基:反応する相手からプロトンを受け取る物質。
ルイス酸・塩基( Lewis acid,base )
アメリカの物理化学者ギルバート・ニュートン・ルイス( 1875 ~ 1946 )が 1923年に定義した酸・塩基。
酸:電子対を受け取る物質。
塩基:電子対を供給する物質。
ルイス構造式(電子式)
構造式の結合状態の表記には,共有電子対を価標(bond :線の数で単結合,二重結合,三重結合を表現する)で表示するものと,共有電子対をコロン(単結合 :,二重結合 :: ,三重結合 ::: )で表示するものがある。
価標で表示するのが一般的で,コロンで表示する場合は,電子式(ルイス構造式)といい,ラジカル反応などの化学反応での電子のやり取りなどを特に示したい場合などに用いられている。
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