社会資本水道・電力の変遷と現状

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 ここでは, 【電力の歴史】, 【電力需要の推移】 を紹介する。

 電力の歴史

 明治中期より電燈や電気鉄道の普及に伴って,日本各地で中小の電力会社が相次いで設立された。しかし,大正末期には電力会社の統合が進み,1883年(明治16年)創業の東京電燈,1877年(明治10年)開業の東邦電力,1914年(大正3年)設立の大同電力(当時は木曽電気製鉄),1906年(明治39年)設立の宇治川電気,1919年(大正8年)設立の日本電力の5社になった。
 1939年(昭和14年)の電力国家管理政策によって,1939年から1942年にかけて全施設を特殊法人の日本発送電と関連する9配電会社に統合された。
 第二次世界大戦後に,日本発送電の独占状態が問題視され,9電力会社(沖縄電力を除く)への事業再編(1951年)が行われた。沖縄電力は,米軍統治下の1954年に発足した琉球電力公社が1972年5月の沖縄本土復帰に伴って特殊法人として再編したものである。現在は民営化され,10社目の一般電気事業者となっている。
 電力事業再編後に,いわゆる神武景気,岩戸景気で暮らしが豊かになり,家庭電化ブーム(洗濯機,冷蔵庫,白黒テレビ,電気がまの普及)で電力需要が大きく伸びた。それに追いつくための電源開発や送変電設備の増強が進められた。1959年には火力発電の出力が水力発電の出力を追い越している。
 1960年代の高度経済成長期には,3種の神器(カラーテレビ,クーラー,マイカー)の飛躍的な普及があり,電源開発も大型の石油火力発電を中心に急速に増強された。その一方で,公害の発生や環境問題が表面化し,1960年代後半に,公害対策としてLNGを燃料とした火力発電所の登場,1970年代前半に原子力発電所が登場した。
 特に,1973年の第1次石油危機で,省エネルギー,LNGの拡大,原子力発電の促進による脱石油を目標とした新しいエネルギー戦略が展開することになった。
 1980年代に入ると,大都市圏を中心に電力需要の増加が大きく,原子力発電の展開が進み,原子力発電の比率が大きくなった。1995年(平成7年)から電力会社の電源部分に競争が導入され,2000年(平成12年)3月には,特別高圧を対象に電力の自由化がスタートした。
 2011年(平成23年)3月11日の東日本大震災に関連した福島第一原子力発電所の事故を受けて,発電事業の見直しが迫られる状況に至っている。

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 電力需要の推移

 電力需要の推移や発電設備の推移を理解するため,東京電力のホームページ(東京電力50年史)に掲載されているデータを引用する。
 東京電力における最大電力の推移(下図)は,東京電力発足時の昭和26年(1951年)時から平成3年(1991年)頃までは,うなぎ上りに増加しているのが分かる。
 この変化は,日本経済が飛躍的に成長を遂げた高度経済成長時代(1954年12月から1973年11月),その後の安定成長期(1973年12月よりバブル崩壊の1991年2月まで)に符合している。
 その後の最大電力量は若干の増加はあるが,ほとんど変化していない。このことは,電気を利用する社会体制が成熟状態に至ったことをうかがわせる。
 なお,図のデータは,2015年を最終に更新されず,ページが削除されている。

東京電力 最大電力の推移

最大電力の推移(東京電力)
出典:東京電力HP(2013年)

 次に,東京電力における電源構成比の推移(下図)を示す。東京電力発足当時は,水力発電と石炭を燃料とする火力発電が主流であったが,電力需要の増加とともに,1960年ころから石油を燃料とする火力発電が増加している。1970年頃から1985年までに原子力発電,天然ガスを燃料とする火力発電に大きく推移している。
 電力需要の伸びが少なくなった1990年頃からは,電源構成比の大きな変化が無く,石油による火力発電の設備更新時に天然ガスや原子力への転換が進められてきたことが分かる。
 なお,図のデータは,2015年を最終に更新されず,ページが削除されている。

東京電力 電源構成の推移

電源構成比の推移(東京電力)
出典:東京電力HP(2013年)


 次には,経済産業省資源エネルギー庁(総合エネルギー統計)の 2018年度報告に掲載される「事業用発電の燃料投入量の推移」を紹介する。
 平成 23 年3月の東日本大震災後に,原子力の代替電源として活用が進んだ石油火力が,増設された石炭火力,天然ガス(LNG)火力に代替され,石油が減少し,石炭,天然ガスが増加した。
 震災後の原子力は,定期点検入りした原子力発電所の再稼働が無く,平成 25 年10 月から平成 27 年 8月までの稼働はゼロとなっている。
 その後に,九州電力川内原発が平成 27 年 8 月に再稼働したのを皮切りに,平成 28 年 8 月に四国電力伊方原発,平成 29 年 6 月に関西電力高浜原発,平成 30 年 3 月に関西電力大飯原発が運転を再開している。また,現時点(平成 30 年)で複数の原子力発電所において,運転再開に向けた準備が進むと共に,新規原発(大間原子力発電所)の建設も進んでいる。

事業用発電の燃料投入量の推移

事業用発電の燃料投入量の推移(2018年)
出典:経済産業省資源エネルギー庁 HP ;最新版は 総合エネルギー統計

 【参考資料】
 1) 田原総一朗「ドキュメント東京電力企画室(文春文庫)」文藝春秋 1986年
 2) 東京電力ホームページ。なお,上図のデータ(平成25年4月)は,2015年を最終に更新されず,ページが削除されている。
 3) 経済産業省資源エネルギー庁総合エネルギー統計

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