腐食概論:鋼の腐食
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大気腐食(実環境因子の影響)
酸性雨の成分由来
参考資料 1)では,主な酸性雨(acid rain)の成分として硫酸イオン(SO42-)と硝酸イオン(NO3-)の由来に関する調査も実施し,次に示す 4種に分類している。
① 酸由来(硫酸及び硝酸)
硫酸あるいは硝酸に由来すると解釈でき,この因子の寄与が大きいと降水の pH は低くなる。
② アンモニウム塩由来(硫酸アンモニウムと硝酸アンモニウム)
硫酸アンモニウムや硝酸アンモニウムのようなアンモニウム塩に由来する因子は,酸がアンモニアによって中和され弱酸性を示し,降水の酸性化にわずかに寄与すると考えられる。
③ カルシウム塩由来(硫酸カルシウムと硝酸カルシウム)
硫酸カルシウムあるいは硝酸カルシウムのような中性のカルシウム塩に由来する因子は,酸が炭酸カルシウムなどの塩基性カルシウムで中和されるプロセスに対応すると推測される。炭酸カルシウムは主に黄砂粒子に由来すると考えられる。
④ 海塩等由来の因子
海塩粒子(sea-salt particle)に由来するイオンでは,Na+,Mg2+,SO42-,Cl- が大多数を占め,それらの組成も海水比に近い。降水のこれらの因子は pH にはほとんど影響しない。
下図は,各地点における降水中の硫酸イオン,硝酸イオンを由来別に分類した結果である。
硫酸イオンについては,沿岸地点(利尻,落石岬,竜飛岬,佐渡関岬,隠岐,辺戸岬,小笠原)で海塩等由来の因子の寄与が大きい。
また,酸由来の因子が海塩等由来以外の因子の寄与の半分程度を占め,硫酸(H2SO4)そのものが降水に取り込まれて沈着したものと推察される。東京と梼原においては,他の地点とは異なる酸由来の因子が抽出された。
硝酸イオンについては,硝酸(HNO3)そのものの酸由来の因子が小笠原を除けば 30-60%を占めていた。なお,硝酸イオンについても、東京と梼原において他の地点と異なる酸由来の因子が抽出された。
竜飛岬,佐渡関,隠岐,蟠竜湖では,酸由来の因子の寄与が全体の 50%と他の地点に比べて比較的高い。
報告書では,“これらの地点は日本海側に位置しているので,大陸(中国など)からの長距離輸送の影響等について今後更なる検討が必要”とまとめている。
【参考資料】
1)「越境大気汚染・酸性雨長期モニタリング(平成20~22年度)中間報告」平成24年6月 環境省
環境省 越境大気汚染・酸性雨対策調査
【参考】
海塩粒子(sea-salt particle)
海岸の波打ち際及び/又は海上で波頭が砕けたときに発生する海水ミストが,風で運ばれて飛来した粒子。海塩粒子の大きさは,約 0.01μm~20μm である。【JIS Z 2381「大気暴露試験方法通則」】
黄砂(yellow sand)
中国のタクラマカン砂漠,中国とモンゴルにかけたゴビ砂漠など,東アジア内陸部の砂漠や乾燥地域の砂塵が強風により巻き上げられ,広範囲に飛散した後に地上に降り注ぐ気象現象,又は飛散した砂を指す。
日本に飛来する黄砂粒子は,4µm をピークとする粒径分布で,石英,長石,雲母,緑泥石,カオリナイト,方解石(炭酸カルシウム),石膏(硫酸カルシウム),硫酸アンモニウムなどで構成されるが,生態系に影響する化学物質や微生物(カビ,細菌など)などを含む可能性も指摘されている。
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