第五部:有機化学の基礎 身近のプラスティック
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ここでは,高分子材料の名称や関連用語に関連し, 【有機高分子の名称・略語・記号について】, 【高分子化反応に関連する用語】, 【高分子材料に関連する用語】, 【添加剤に関連する用語】, 【高分子材料の性質・特性関連の用語】 に項目を分けて紹介する。
有機高分子の名称・略語・記号について
名称について
有機化合物や無機化合物の命名法と同様に,高分子についても,有機化合物の命名法で紹介したIUPAC ( International Union of Pure and Applied Chemistry :国際純正・応用化学連合)で命名法( Nomenclature )が提案されている。
IUPAC の高分子用語と命名法( Compendium of Polymer Terminology and Nomenclature )は,パープルブック( Purple book )として入手可能であるが,概要や最新情報については,(公社)高分子学会で提供している。
略語と記号について
プラスチックの種類は非常に多く,かつては様々な略号が用いられていたが,一つの化合物に複数の略語や記号が用いられることを防ぐとともに,一つの略語に複数の解釈を与えることを防ぐことを目的に,国際規格の ISO 1043 シリーズ「 Plastics−Symbols and abbreviated terms 」が制定され,これに準拠した JIS 規格が制定されている。
基本ポリマーの略語,その構成要素及び特性の記号については,JIS K 6899-1 「プラスチック−記号及び略語−第 1 部:基本ポリマー及びその特性: Plastics-Symbols and abbreviated terms-Part 1: Basic polymers and their special characteristics 」に定められている。
充塡材及び強化材に関する統一した方式による記号については,JIS K 6899-2 「プラスチック−記号及び略語−第 2 部:充塡材及び強化材: Plastics-Symbols and abbreviated terms-Part 2: Fillers and reinforcing materials 」に定められている。
可塑剤に関連する用語の構成要素に対する一定の方式による記号の付け方については,JIS K 6899-3 「プラスチック−記号及び略語−第 3 部:可塑剤: Plastics−Symbols and abbreviated terms−Part 3 : Plasticizers 」に定められている。
難燃剤に対して,一定の方式による記号の付け方については,JIS K 6899-4 「プラスチック−記号及び略語−第 4 部:難燃剤: Plastics−Symbols and abbreviated terms−Part 4 : Flame retardants 」に定められている。
高分子の基本用語
JIS K 6900「プラスチック―用語: Plastics − Vocabulary 」から抜粋した用語を紹介する。
単量体;モノマー( monomer )
それぞれが 1 種類又はそれ以上の構成単位となり得る分子からなる化合物。
単量体単位;マー( monomeric unit ; mer )
重合過程において単一の単量体分子により形成される最大の構成単位。
プリポリマー( prepolymer )
単量体又は単量体類とその最終の重合体との中間の重合度の重合体。
高分子( macromolecule )
非常に大きな分子(有機及び無機の)。重合体及び高重合体も参照。
高重合体;高分子( high polymer )
高い相対分子質量の重合体から構成される物質。(注)一般に,ある一連の直鎖状重合体の物理的特性(特に粘弾性特性)がその相対分子質量によってそれほど著しくは変化しない場合にはその重合体は高重合体とみなされる。この用語は習慣的に“重合体”と短縮される。
重合体;ポリマー( polymer )
一種又はそれ以上の種類の原子又は原子団(構成単位)の多数の繰返しを,一つ又は少数の構成単位の付加又は切除では著しくは変化しない一連の性質を与えるのに十分な量を互いに連結したことを特徴とする分子からなる物質。
単独重合体(ホモポリマー)( homopolymer )
1 種類の単量体から誘導される重合体。
共重合体( copolymer )
2 種類以上の単量体から誘導された重合体。共重縮合の注も参照。
付加重合体( addition polymer )
付加重合によって製造された重合体。
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高分子化反応に関連する用語
JIS K 6900「プラスチック―用語: Plastics − Vocabulary 」から抜粋した用語を紹介する。
重合( polymerization )
単量体又は単量体類の混合物を重合体に転化する過程。
付加重合;重付加( addition polymerization ; polyaddition )
繰返し付加過程による重合。重付加も参照。
(注) 繰返し付加過程は水又はその他の簡単な分子の脱離を伴うことなく行われる。
重付加( polyaddtion )
広義には付加重合と同義語。狭義には炭素−炭素不飽和結合を含まない単量体の付加(例えば,エポキシ,イソシアネート,又はラクタム単量体の反応)によって重合体を形成する化学反応。
縮合重合;重縮合( condensation polymerization ; polycondensation )
縮合過程(すなわち,簡単な分子の脱離を伴う)の繰返しによる重合。
解重合( depolymerization )
重合体の単量体又は相対分子質量の低い重合体への復帰。
乳化重合( emulsion polymerization )
乳化剤を使用して単量体を極めて微細な小滴として分散安定化しラテックスを生成する懸濁重合。
共重合( copolymerization )
共重合体が形成される重合。共重縮合も参照。
共重縮合( copolycondensation )
2 種類以上の単量体を含む重縮合。
(注) それぞれ 2 個の同一の反応基を含む 2 種類の成分(又は“単量体”)の縮合重合によって製造される重合体は容易に 1 : 1 の比で反応して“暗黙の単量体”を作り,その単独重合で現実の製品ができるとみなすことができる。このような重合体は単一の構成繰返し単位をもつものとして示すことができ,したがって単独重合体と命名できる。
この規則は最初の成分の比が 1 : 1 の場合にだけ適用できることに注意すべきである。ポリエチレンテレフタラート及びポリアミド 66 がこのような重合体の例である。
架橋( crosslinking )
重合体の主鎖間に多様な分子間共有結合又はイオン結合を形成する工程。→架橋剤
転相( phase inversion )
重合における転相とは,ある種類の不均一相重合,例えばゴム変性耐衝撃性ポリスチレンの調整において,転化率が一定の段階に達すると,連続相と分散相が互いに入れ替わる現象。
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【高分子材料に関連する用語】
JIS K 6900「プラスチック―用語: Plastics − Vocabulary 」から抜粋した用語を紹介する。
樹脂( resin )
不明確でかつしばしば高い相対分子質量を有し,応力を受けると流動する傾向を示し,通常は軟化又は溶融範囲を有し,かつ通常は貝殻状に割れる固体,半固体,又は凝固体の有機材料。
広義にはこの用語はプラスチック用の基盤材料であるいくつかの重合体を明示するためにも使用される。
成形( moulding )
圧力及び通常は熱を加えて,ダイ又は金型で材料に形を与える工程。
成形;フォーミング( forming )
シート,棒又はチューブのような個々のプラスチック部材の形状を所望の形態に変化させる工程。
成形品(製品)( moulding (product) )
閉じた金型の中で(例えば圧縮成形,トランスファ成形,射出成形により)生産される物体。
プラスチック( plastic )
必須の構成成分として高重合体を含みかつ完成製品への加工のある段階で流れによって形を与え得る材料。
(注) 1 同様に流れによって形を与え得る弾性材料はプラスチックとしては考えない。
2 幾つかの国々,特に U.K.においては,公式の見解は現在,用語“プラスチックス”を複数形はもち論単数形として使用することの選択の自由も許されている。
硬質プラスチック( rigid plastic )
指定の条件のもとで曲げ弾性率又はもしそれが適用できない場合には引張弾性率が 700 MPa より大きいプラスチック。
(注) 材料は通常 ISO 291 に従って標準の温度及び相対湿度において分類される。
半硬質プラスチック( semi-rigid plastic )
指定の条件のもとで,曲げ弾性率又は,もしそれが適用し得ない場合には,引張り弾性率が 70 MPa と 700 MPa の間にあるプラスチック。
(注) 材料は通常 ISO 291 に従って標準温度及び相対湿度において分類される。
軟質プラスチック( non-rigid plastic )
指定の条件のもとで,曲げ試験,又はそれが適用できない場合には引張試験における弾性率が70MPa より大きくないプラスチック。
(注) 材料は通常 ISO 291 に従って標準温度及び相対湿度において分類される。
強化プラスチック( reinforced plastic )
その組成の中に埋め込まれた高強度繊維を伴うプラスチックで,その結果として基盤樹脂よりはるかに優れたいくつかの強度特性を生じている。
熱可塑性の( thermoplastic )
プラスチックに特有の温度範囲を通じて加熱による軟化及び冷却による硬化を繰り返すことができ,かつ軟化状態で流動によって形を合わせて成形 (moulding) , 押出し (extrusion) 又は成形 (forming) によって繰返し物品の状態にし得ること。
熱可塑性プラスチック( thermoplastic )
熱可塑性の特性を有するプラスチック。
熱硬化系(プラスチック)( thermoset )
加熱又はその他の手段で硬化した際,実質的に不融性かつ不溶性製品に変化するプラスチック。
(注) この用語は熱硬化性プラスチック及び熱硬化プラスチックの双方を含む。
熱硬化性の( thermosetting )
加熱又は放射線,触媒などのようなその他の手段によって硬化される際に,実質的に不融性かつ不溶性製品に変化し得ること。
熱硬化プラスチック( thermoset plastic )
加熱又は放射線,触媒などのようなその他の手段によって実質的に不融性かつ不溶性の状態に硬化されているプラスチック。
熱硬化性プラスチック( thermosetting plastic )
熱硬化性の特性を有するプラスチック。
複合材料( composite )
(1) 結合材料(マトリックス)と微粒子又は繊維状材料を含む,2 又はそれ以上の異なる相からなる固体製品。
(注) 例:強化繊維,微粒子状充てん材又は中空球を含む成形材料。
(2) 接着剤中間層を伴う又は伴わないプラスチックフィルム又はシート,標準又はシンタクチック発泡プラスチック,金属,木材,定義 1 に従う複合材料,などの 2 層又はそれ以上の層(多くの場合は対称組立の形で)からなる固体製品。
(注) 例;包装用フィルム複合材料;構造用サンドイッチ発泡複合材料,紙,布などで製造した積層品。
カップリング剤( coupling agent )
樹脂マトリックス(母材)と強化材の境界面における一層強い結合を促進し又は達成する物質。
(注) カップリング剤は強化材に塗布,又は樹脂に添加,又はその双方が行われる。
繊維( fibre )
厚さ又は直径に対する長さの比が高いことを特徴とする比較的短い長さの材料の構成単位。
エラストマー( elastomer )
弱い応力でかなり変形したのちその応力を除くと急速にほぼもとの寸法及び形状にもどる高分子材料。
(注) この定義は室温試験条件に適用する。
熱可塑性エラストマー( thermoplastic elastomer )
加工及び使用においてその材料に特有の温度範囲内で繰返し加熱及び冷却される際にも依然として熱可塑性のままであるエラストマー。
接着剤( adhesive )
接着によって材料をつなぎ合わせることのできる物質。
(注) 用語グルーは元来は硬質ゼラチンから調製した接着剤に使用されていた。この用語が広範囲にわたり使用され合成樹脂から調製した接着剤に対しても用語接着剤と同義語となった。現在では用語接着剤が望ましい一般用語である。
硬化(接着剤の)( cure (of an adhesive) ; curing )
化学反応(例えば,縮合,重合又は架橋)によって接着剤の強度特性を発現させる工程。
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添加剤に関連する用語
JIS K 6900「プラスチック―用語: Plastics − Vocabulary 」から抜粋した用語を紹介する。
添加剤;添加物( Additive )
一つ又はそれ以上の性質を改良又は改質するために重合体に添加するいずれかの物質。
(注) 狭義では,用語の添加剤は少量添加する成分のみを含む。このような場合,比較的多量に添加する成分に対しては用語の変性剤を使用する。
硬化剤( curing agent )
硬化反応を促進し又は調節する物質。硬化及び硬化剤 (hardening agent)も参照。
硬化剤( hardening agent ; hardener )
その反応に加わることによって樹脂又は接着剤の硬化反応を促進し又は調節する試剤。
ブロック硬化剤( blocked curing agent )
一時的に不活性化されているが,物理的又は化学的な手段によって所望に応じて再び活性化できる硬化剤。閉鎖硬化剤ともいわれる。
架橋剤( crosslinking agent )
重合体の主鎖間に分子間共有結合又はイオン結合を促進し又は調節する物質。
(注) 架橋は放射線によってもまた生成される。
促進剤( accelerator ; promoter )
化学系(反応体にその他の添加剤を加えたもの)の反応速度を増大するために少量使用する物質。
触媒( catalyst )
少量使用して化学反応の速度を増大し,かつ理論上は反応の終りにも化学的に不変のまま残留する物質。
活性化剤( activator )
促進剤の効果を増大するために少量使用する物質。
遅延剤(「抑制剤」を参照)( retarder )
化学系の反応速度を減少するために少量使用する物質。触媒及び禁止剤も参照。
希釈剤( diluent )
一般には,シンナー( thinner )とも呼ばれ,固形物の濃度及び接着剤組成の粘度を低減することが唯一の機能である液状添加物。増量材及び反応性希釈剤も参照。
反応性希釈剤( reactive diluent )
高粘度の無溶剤熱硬化性接着剤に加える低粘度の液体で硬化の間にその接着剤と化学的に反応するもの。
(注) 粘度を一段下げる利点はその他の性質の喪失を最小限度に止めることをもたらす。希釈剤も参照。
調整剤( regulator )
重合の間に相対分子質量を調節するために少量使用する物質。
増粘剤( thickener )
液状重合系の粘度を増加させる物質。
増量材( extender )
主として価格を下げるため,樹脂,プラスチック又は接着剤に添加される液体又は固体の不活性物質。
可塑剤( plasticizer )
軟化領域を下げ,かつ加工性,たわみ性又は伸展性を増すためにプラスチックに混合する揮発性が低い又は無視できる物質。
難燃剤( flame retardant )
火炎の伝ぱを著しく遅延する物質。
(注) 難燃剤はプラスチック中に添加剤(外部難燃剤)として又は重合工程において反応性中間体の使用により基本重合体中の化学基類(内部難燃剤)としてプラスチック中に混合される。
乳濁液( emulsion )
液体が他の液体の中に微細な滴となって分布している不均一系。
(注) 工業的には,例えばポリ酢酸ビニル乳濁液のように実際には懸濁液であっても乳濁液と呼ばれる系がある。
乳化剤( emulsifying agent ; emulsifier )
二相間の界面張力を減ずることによって不完全混合の二液又は固体と液体の分散を促進しかつ持続する界面活性物質。
発泡剤( blowing agent )
中空又は発泡品の製造において膨張させるために使用する物質。
(注) 発泡剤は圧縮ガス,揮発性液体,又はガスを形成するために分解又は反応する化学薬品でもよい。
結合剤( binder )
接着剤配合物:接着に対し主として責任を負う接着剤組成中の成分。
織物:ステープルファイバ及びストランドを,例えばチョップドストランドマット,連続ストランドマット及びサーフェシングマットにおける所望の配置に保持するために適用する材料。
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高分子材料の性質・特性関連の用語
JIS K 6900「プラスチック―用語: Plastics − Vocabulary 」から抜粋した用語を紹介する。
硬化(重合体の)( cure (noun) (of a polymer) ; curing )
プリポリマー又は重合組成物を重合及び又は架橋によってさらに安定して使用できる状態に変える工程。
常温硬化( cold setting )
熱硬化性材料の室温における硬化。
硬化温度( cure temperature ; curing temperature )
接着剤又はたい積がその接着剤を硬化するために受ける温度。乾燥温度,及びセッティング温度も参照。
硬化時間( cure time ; curing time )
たい積の中の接着剤を温度又は圧力,又は双方の特定条件のもとで硬化するために必要な一定の時間。硬化も参照。
重合度( degree of polymerization )
(1) その分子が規則正しい繰返し単位から構成されている場合には,分子当たりの基本単位の(平均)数。
(2) その分子が全く同等の単量体から重合によりつくられる(又は仮定されうる)場合には,分子当たりの(真の又は仮定の)マーの(平均)数。
注−この二つの定義は必ずしも同等である必要はない。例えば,ポリエチレンに対しては,基本単位は CH2 であり,マー(単量体単位)は C2H4 である。
単量体単位;マー( monomeric unit ; mer )
重合過程において単一の単量体分子により形成される最大の構成単位。
ゲル( gel )
樹脂の形成の間に生ずる最初のゼリー状の固相。
ゲル化( gelation ; gelling )
材料のゲル状態への転化。
ゲル化時間( gel time )
特定の温度条件のもとで,液状材料がゲルを形成するために必要な時間。
ゲル化点( gel point )
液体が擬弾性特性を示し始める段階。(注) この段階は便宜上粘度−時間線図の屈曲点から観測してもよい。
ポットライフ;可使時間( pot life ; working life )
塗布のため調製された接着剤又は樹脂が依然として使用できる状態にある間の時間。
ガラス転移( glass transition )
非結晶性重合体又は部分結晶性重合体の非結晶領域における粘性状態又はゴム状態から(又はへ)硬質でかつ比較的もろ(脆)い状態へ(又はから)の可逆的変化。
ガラス転移温度( glass transition temperature )
ガラス転移が行われる温度範囲のほぼ中間点。注−ガラス転移温度( Tg )は測定のため選んだ特定の特性とその試験方法及び試験条件によって著しく変化する。
軟化温度( softening temperature )
特定の試験条件のもとで測定する際,材料が特定量の変形をする温度。
塑性;可塑性( plasticity )
変形応力をその降伏点応力まで又はそれ以下に減少した後変形したままで残る材料の傾向。
塑性変形( plastic deformation )
応力を加えたプラスチックにその加えた応力が取り除かれた後にも残るひずみの部分。クリープ,クリープの回復及び弾性変形も参照。
引張強さ( tensile strength )
引張りの状態で破損する前に材料によって耐えられる最大応力。
(注) 最大応力が降伏点において発生する際には,降伏点引張強さという。最大応力が破断点において発生する際には,破断点引張強さという。
曲げ強さ( flexural strength )
破断に至る曲げ試験の間に試験片に発現する最大の曲げ応力。
ひずみ( strain )
ひずみ(ε)とは,物体のもとの寸法又は形状と比べた外力に基づく長さの寸法又は形状における変化。
(注) ある一点におけるひずみは六つの成分のひずみ,すなわち一組の座標軸に対する三つの法線成分と三つのせん断成分によって規定される。
粘度( viscosity )
粘度 η ( Pa・s ) :材料の本体内部で示される定常流に対する抵抗特性。
(注) 試験においては,流体のせん断応力のせん断速度に対する比。粘度は通常“ニュートン粘度”を意味するものと受け入れられており,その場合にはせん断応力のせん断ひずみ速度に対する比は一定である。プラスチックでは普通の事例である非ニュートン挙動においてはその比はせん断応力によって変化する。そのような比は対応するせん断応力における見掛け粘度と呼ばれることが多い。動的粘度及び粘性係数も参照。
粘弾性( viscoelasticity )
弾性固体と流動性の粘性流体の組合せであるかのように挙動する材料の時間,温度,荷重及び荷重速度に依存する応力の応答。
弾性( elasticity )
変形させている力を除くと原寸及び原形を回復する特性。
(注) 1 ひずみが加えられた応力に比例する場合は,その材料はフック弾性又は理想弾性を示すと言われる。
2 その機構はゴム状弾性(エントロピー弾性)又は鋼状弾性(エネルギー弾性)のいずれであってもよい。
弾性変形( elastic deformation )
応力を加えたプラスチックの全ひずみのうちでその応力を取り去ると消失する部分。
弾性限界( elastic limit )
材料が応力を完全に除くと永久ひずみを少しも残さずにもとの状態を維持しうる最大の応力。
(注) 実際には,ひずみの測定は通常最初及び最後の照合を無荷重よりはむしろ小荷重を用いて行う。
弾性率( modulus of elasticity ; elastic modulus )
比例限界以下の材料における応力に対応するひずみに対する比。比例限界も参照。
比例限界( proportional limit )
材料が応力のひずみに対する比例関係(フックの法則)を何ら逸脱することなく支え得る最大応力。
ポアソン比( Poisson's ratio )
材料の比例限界内において,均一に分布された軸方向の応力の結果として生ずるそれに一致する軸方向のひずみに対する横方向のひずみとの比の絶対値。IUPAP 記号:µ, γ。
(注) 異方性材料の場合には,ポアソン比は応力をかける方向によって変化する。比例限界以上では,この比は応力により変化して真のポアソン比とは見なされない;それにもかかわらずこの比が報告される場合には,測定された応力の値をはっきり述べる必要がある。
クリープ;低温流れ( creep ; cold flow )
応力によって生ずる時間依存性のひずみ。(注) 瞬間ひずみは除外する。
促進剤,活性化剤,抑制剤,開始剤,調整剤及び遅延剤も参照。
たわみ性( flexibility )
破断又は肉眼で見える欠陥を生ずることなく,繰返し折り曲げ又は湾曲させることができる材料の特性。半硬質プラスチック及び軟質プラスチックも参照。
じん性( toughness )
エネルギーを吸収することができ,一般にもろさのないことの意味を暗に含みかつ破断に至る伸びがかなり大きい材料の特性
(注) じん性は応力−ひずみ曲線の下側の面積に比例する,材料を破断するために必要なエネルギーとして評価されることが多い。
伸展性( extensibility )
特定の引張荷重をかけた条件のもとで材料が伸張し得る限界量。
疲れ( fatigue )
絶えず変動する応力及びひずみにさらされている材料に生じている累進的,局部的かつ永久的な構造変化の過程をいい,それはクラック又は完全な破壊に達することもある。
疲れ寿命;疲れ強さ( fatigue life ; fatigue strength )
ある試験片が特定の性質の破損を生ずるまでに耐える特定の応力又はひずみの繰返し数。
疲れ限度( fatigue limit )
応力繰返し数 N が極めて大きくなった場合の疲れ寿命の中央値の限界値。
(注) ある種の材料及び環境では疲れ限度に到達しない。文献に“疲れ限度”と表示されている数値はしばしば(必ずしも常にとは限らない)平均応力 ( Sm )=0 である場合の応力繰返し数 N で 50 %が残存する応力繰返し数 ( SN ) である。
接着( adhesion )
二つの表面が接着剤の助けをかりて,化学的又は物理的力又は双方によってつなぎ合わされている状態。
付着( abherence )
二つの表面が界面に働く力でつなぎ合わされている状態。
(注) 付着は接着剤を使用し,又は使用しないでも達成できる。
はく離強さ( peel strength )
あるはく離様式で使用する応力によって接着剤接合を破壊点に導き及び又は特定の破壊速度を継続するために必要な単位幅当たりの力。
退色( colour fading )
色の薄れること又はあせることを含む色の変化。耐光暴露色堅ろう度及び変色も参照。
透過性( permeability )
気体及び液体を拡散及び収着の過程によって一方の面を通り抜けて他の面を出ていく透過に関する材料の性質。
(注) 多孔性と混同されてはならない。気体透過速度及び多孔性も参照。
透明性( transparency transparence )
透過光の散乱が無視できる場合,そのためにその材料を通して物体を明確に識別できる材料の特性。半透明牲も参照。
半透明性( translucency )
透過光の大部分が散乱され,その材料の向こう側にある物体を識別することが困難又は不可能となる材料の特性。光の拡散及び透明牲も参照。
燃焼( combustion )
火炎及び又は赤熱,及び又は煙の放出を伴う物質の酸化剤を使っての発熱反応。
可燃性( flammability )
特定の試験条件のもとで,火炎を上げて燃焼する材料又は製品の能力。
(注) 広義では,可燃性は点火の比較的容易なこと及び燃焼を持続する能力に関係する特徴を含む。
難燃性( flame retardance )
材料に適用する用語で,火炎の伝ぱを著しく遅延させる物質又は処理の特性。
熱劣化( thermal degradation )
高温におけるプラスチックのすべての有害な化学的変更の全部。
(注) その現象を研究する場合の温度及び他の環境条件を報告することが極めて重要である。老化,劣化,及び変質も参照。
摩擦係数( coefficient of friction )
接触している二つの面に垂直に働く力,通常は重力に対する摩擦力との比。IUPAP 記号µ ,(f)
見掛け密度( apparent density )
材料の中に正常に存在する通気性及び不通気性の空げきの双方を含む材料の試料の体積によってその質量を除した値。
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