第五部:有機化学の基礎 FRP・ゴム・繊維・塗料など
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ここでは,弾性を有する身近な高分子材料のゴム,エラストマーに関連し, 【ゴム,エラストマーとは】, 【エラストマーの特徴と分子】, 【天然ゴム,生ゴム】, 【合成ゴム】, 【合成ゴムの種類と用途】, 【参考:シリコーン樹脂】 に項目を分けて紹介する。
ゴム,エラストマーとは
ゴム( rubber )は,一般的には,わずかな力で大きく伸び,外力を除くと短時間(瞬間的)で元に戻る物質と認識されている。
この認識に適した用語は,次に示すように,エラストマー( elastomer )が相当する。
ゴム( rubber )
JIS K 6200「ゴム‐用語:Rubber−Vocabulary 」やJIS K 6900「プラスチック‐用語:Plastics−Vocabulary 」では,
“ベンゼン,メチルエチルケトン,エタノール・トルエン共沸混合物などの沸騰中の溶剤に本質的には不溶性(しかし,膨潤できる)の状態に改質できる原料ゴム,又は既に改質されているエラストマー材料。”
と定義されている。
当該 JIS 規格の注記には,
注記 1 改質後のゴムの状態では,加熱及び圧力を加えても容易に恒久的な形状に再成形できない。
注記 2 ゴムは,改質され,かつ,希釈剤を含有していない状態では,室温( 18℃~29℃)においてその長さを 2 倍に伸ばし,かつ,緩める前に 1 分間そのままに保持しても,1 分以内に元の長さの 1.5 倍未満に収縮する。
なお,原料ゴム( raw rubber )とは, “ゴム製品を製造するための天然ゴム又は合成ゴム。 注記 1 生ゴムともいう。”と定義されている。
エラストマー( elastomer )
JIS K 6200「ゴム‐用語:Rubber−Vocabulary 」や JIS K 6900「プラスチック‐用語:Plastics−Vocabulary 」では,
“弱い力で変形し,力を除いた後,急速にほぼ元の形状寸法に戻る高分子材料。注 この定義は室温試験条件に適用する。”
と定義されている。
関連用語の天然ゴム( natural rubber )は,“パラゴムノキ( Hevea brasiliensis )から得られるシス−1, 4−ポリイソプレン。”,合成ゴム( synthetic rubber )は,“ 1 種類又は 2 種類以上の単量体を重合して得られる原料ゴム。”と定義されている。
用語としてのエラストマー( elastomer )は,“弾力性のある”を意味するエラスティック( elastic )と重合体( polymer )の合成語である。
蛇足ではあるが,常温付近で,弱い力で変形し,力が除かれたのちも変形が保たれる可塑性( plasticity )を示す重合体( polymer )はプラストマー( plastomer )と呼ばれる。
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エラストマーの特徴と分子
JIS K 6200「ゴム‐用語」やJIS K 6900「プラスチック‐用語」での
弾性( elasticity )の定義“変形させている力を除くと原寸及び原形を回復する特性。”と
エラストマー( elastomer )の定義“弱い力で変形し,力を除いた後,急速にほぼ元の形状寸法に戻る高分子材料。”とから,
エラストマーは,小さい力で弾性を示す高分子材料となる。
一般的に,弾性を示す機構は,エントロピー弾性(ゴム状弾性)とエネルギー弾性(鋼状弾性)に分けられる。
エントロピー弾性
温度一定での体積変化で生じるエントロピー変化による弾性をいう。すなわち,閉空間に閉じ込めた気体や高分子材料などに力を加えると体積変化が生じる。外力による体積変化は,エントロピー低下となるので,加える力を除くことで,エントロピー最大の元の状態に戻る現象である。
エラストマー材料の例では,架橋点間の分子鎖の部分的な回転や並進運動が可能であるが,力を加えて伸ばすことで運動が制約(エントロピー減少)され,力を除くとエントロピー最大の運動状態に戻る。
エネルギー弾性
ばね鋼などの金属などに見られる,力を加えることで分子の結合角や結合距離などが変化(高いエネルギー状態に変化)し,力を除くことで分子の結合角や結合距離がもとの状態(基底エネルギー状態)に戻る現象である。
弾性率( modulus of elasticity )
弾性率とは,“比例限界以下の材料における応力に対応するひずみに対する比”をいう。弾性限界( elastic limit )とは,“材料が応力を完全に除くと永久ひずみを少しも残さずにもとの状態を維持しうる最大の応力”をいう。
エラストマー(ゴム)の一般的な特性は,室温付近の温度範囲で,小さい力で大きく変形(弾性率が小さい)でき,変形の範囲すなわち弾性限界が非常に大きいことにある。
この特性を示す物質を,一般的には,ゴム弾性体あるいは高弾性体ともいう。
エントロピー弾性が得られる高分子の化学構造は,非結晶性の鎖状高分子において,分子間が適度に架橋(低い架橋密度)した三次元網目状の巨大分子として表される。しかし,架橋密度が大きくなると,弾性率の増大と弾性限界の低下により,一般的にエラストマーとは分類されなくなる。
なお,エラストマー(ゴム)は,一種の準安定状態のため,ガラス転移温度以下では,架橋点間の分子鎖の運動が凍結されガラス状態になる。
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天然ゴム,生ゴム
天然ゴム( NR :natural rubber )
アメリカのグッドイヤーが1839 年加硫法を発明し,1888 年にはダンロップが空気入りタイヤを発明したことで広く利用されるようになった。さらに,20 世紀には,カーボンブラックの大きな補強効果がみいだされ,自動車用タイヤとして大規模に発展した。
天然ゴムとは,JIS K 6200「ゴム‐用語」で“パラゴムノキ( Hevea brasiliensis )から得られるシス−1, 4−ポリイソプレン。”と定義されている。
パラゴムノキとは,ブラジルのパラ州が原産のトウダイグサ科パラゴムノキ属(学名 Hevea brasiliensis ,英名 Para rubber tree )の常緑高木である。樹幹に傷をつけて採れる乳液(ラテックス)には,天然ゴムの原料となるシス−1, 4−ポリイソプレン( [-CH2C(CH3)=CH-CH2-]n :分子量 10 万~20 万)を主成分とし,タンパク質,アルカロイド,糖,油,タンニン,樹脂などを含む複雑なエマルジョンである。
生ゴム
ゴムノキから得られる乳液はフィールドラテックス(新鮮ラテックス)とよばれ,ゴム成分が平均直径1マイクロメートルの粒子として懸濁している。このゴム成分を凝固・分離した生ゴム,又は乳濁液のまま安定剤を加え濃縮したラテックスとして出荷される。
生ゴムからのゴム製品製造
ゴム製品の製造は,生ゴムの素練り,配合剤との混練り,成形,加硫の工程を経る。
素練り:回転速度の違う2本のロール間を通すロール法,互いに反対方向に回転する 2 本のローターを用いるバンバリーミキサー法,大型の押出し機を使う方法などを用いて生ゴムを素練りすることで,分子量が低下し可塑性の増加により混和性が改善される。
配合と混練り:混和性の増加した生ゴムに,配合剤として,架橋するための加硫剤(硫黄 2~3.5 %程度),加硫温度低下と加硫時間短縮を目的とする加硫促進剤,ゴムの加工性や配合剤分散性改善のための軟化剤,老化防止剤,機械的特性改善のための補強剤・充填増量剤(カーボンブラック,タルクなど 40~50 %),着色剤などを加えて練り合わせる。
成形:目的物に合わせて成形される。シート状の製品はカレンダーロールで,チューブや電線被覆は押出し機で,その他の形状は金型を用いて形成される。
加硫:加熱(例えば,145 ℃で 15~50 分)することで加硫される。加熱方法には,加圧水蒸気で加熱する直接蒸気加硫,間接的に加熱する熱空気加硫などがある。また,プレス機,トランスファー成形機,射出成形機により,成形と加硫を同時に行う方法もある。
加硫( vulcanization ,cure )
JIS K 6200「ゴム‐用語」で
“化学構造を変化させ,架橋することによって,ゴム弾性を付与,回復若しくは改良したり,又は広い温度領域にわたって,弾性を付与された状態に変化させる工程。注記 硬質化するまでの工程をいう場合もある。”と定義され,
エラストマーにおける架橋( crosslinking )や硬化( cure ,curing )を意味するエラストマー固有の用語である。
この定義では,用いる加硫剤( vulcanizing agent ,curative ,curing agent )を限定するものではないが,生ゴムの加硫剤には,一般的に硫黄( S )が用いられ,硫黄を用いる場合を硫黄加硫系( conventional sulfur vulcanizing system )などと呼ぶ。
加硫促進剤( accelerator )とは,JIS K 6200「ゴム‐用語」で“加硫速度の増大及び/又は加硫物の物性を向上させるために,加硫剤とともに少量用いる配合剤。”と定義されている。
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合成ゴム
合成ゴム( synthetic rubber )
JIS K 6200「ゴム‐用語:Rubber−Vocabulary 」で
“ 1 種類又は 2 種類以上の単量体を重合して得られる原料ゴム。”と定義されている。
一般的には,天然ゴム(NR)に対し,人工的に合成されたゴム状物質,ゴム弾性体やそれらの原料の合成高分子化合物の総称を合成ゴムと称している。従って,合成ゴムに用いる原料や製造法が多様性のため,多くの種類がある。
合成ゴムの始まりは,天然ゴム代替を目的として研究開発が進められ,1914 年にジメチルブタジエンを原料に製造されたメチルゴムが合成ゴムの工業化のといわれている。
天然ゴムと同じ化学構造をもつシス-1,4-ポリイソプレンの合成(合成天然ゴム)に成功したのは1954 年になってからであった。
一般的な製造法
合成ゴム製品の基本的な化学構造は,高分子量の線状高分子が適度に架橋したもので,非結晶性でガラス転移温度の低い物質である。
一般的な合成ゴムの加工法は,基本的には天然ゴムと同じ工程で行われる。
素練り:原料ゴムの可塑性と粘着性を高めるため行われる。
配合と混練り:各種配合剤を混合する。
成形:目的物に応じて成形する。
加硫:加熱加硫してゴム製品とするが,加硫は原料ゴムの化学構造に依存し,硫黄( S )以外にも過酸化物や金属酸化物などが用いられる。
ここで用いられる原料ゴム(生ゴム)は,石油化学製品のモノマー(単量体)を重合して製造される。合成ゴムの製造に用いる原料ゴムの種類,架橋方法により,弾性,耐摩耗性,耐熱性,耐老化性,耐寒性,耐オゾン性,耐油性,耐薬品性などの特性の何れかに特化した製品を得ることができる。
ゴムの略号について
原料ゴムとラテックスの略号は,通常の単量体の化学名による英語表示の頭文字,原料ゴムとラテックスの化学構造により定めることが,JIS K 6397「原料ゴム及びラテックスの略号:Rubbers and latices Nomenclature 」に規定されている。
略号のグループ分類( ○○X )の例は,次の通りである。
一般的なゴム( R グループ),ポリメチレンタイプの飽和主鎖をもつゴム( M グループ),主鎖に炭素及び酸素をもつゴム( O グループ),主鎖にけい素及び酸素をもつゴム( Q グループ),主鎖に炭素,酸素及び硫黄をもつゴム( T グループ),主鎖に炭素,酸素及び窒素をもつゴム( U グループ),主鎖にりん及び窒素をもつゴム( Z グループ)である。
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合成ゴムの種類と用途
合成ゴムは,化学構造の違い,及び用途別で分類される。
化学構造の違い
合成ゴムは,化合物種や結合種などの化学構造の違いで,ジエン系(R),オレフィン系(M),多硫化系(T),シリコーン系(Q),ふっ素系(FK-),ウレタン系(U),及びエーテル系(O)などに分類される。
用途別の分類
用途の違いで,タイヤなどに多量に使われる汎用ゴムと工業用や医療用の特殊ゴムに大別される。
汎用ゴムには,生産量の多い順にスチレン・ブタジエンゴム(SBR),ブタジエンゴム(BR),及びイソプレンゴム(IR)がある。
特殊ゴムには,生産量の多いエチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM),クロロプレンゴム(CR),及びアクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)などがある。
以下では,実用される主な合成ゴムの特徴を紹介する。
汎用ゴム(ジエン系ゴム)
スチレン・ブタジエンゴム( SBR :styrene-butadiene rubber )
乳化重合( emulsion polymerization )で得られる E-SBR ,溶液重合( solution polymerization )で合成される S-SBRに分けられる。
乳化重合とは,乳化剤を使用して単量体を極めて微細な小滴として分散安定化しラテックスを生成する懸濁重合をいう。
溶液重合とは,1 種類又は 2 種類以上の単量体を共通の溶剤に溶解させて,重合体を生成させる反応工程をいう。
汎用の E-SBR は,23.5 %のスチレン(C6H5CH=CH2)とブタジエン(CH2=CH-CH=CH2)の低温ラジカル共重合によって得られ,各種タイヤや工業用品(コンベアベルト,ホース,ゴムカバーロールなど)に用いられる。
スチレンを50%以上含む SBR は,ハイスチレンゴムとよばれ,硬質ゴム製品の靴底や床タイルなどの用途がある。耐水,耐電気(絶縁)用途には溶液重合の S-SBR が用いられる。
ブタジエンゴム( BR :butadiene rubber )
ブタジエンのツィーグラー・ナッタ触媒( Ziegler-Natta catalyst )による溶液重合で合成される。シス-1,4結合が 96 %以上の立体規則性ポリマー(高シスBR )である。
低シスBR(シス-1,4結合 10~35%,トランス-1,4結合 57~66%)はリチウム系触媒の溶液重合あるいは乳化重合によって製造される。
主な用途には,天然ゴム(NR)や SBR とブレンドされて各種タイヤに用いられる。他に,工業用品(防振ゴム,ホース,ロールなど),はきもの,靴底,ゴルフボールコアなどに用いられる。
イソプレンゴム( IR :isoprene rubber )
シス-1,4結合が94%以上のポリイソプレンで,天然ゴム( NR )とよく似た化学構造をもち,合成天然ゴムなどともいわれる。
ツィーグラー系触媒,アルキルリチウム触媒によるイソプレン( 2 –メチル– 1,3 –ブタジエン,CH2 = C(CH3)CH = CH2 )の溶液重合で合成される。
主な用途して,NR の代替,明色製品,NR,SBR,BRなどへのブレンド材として用いられる。
ジエン系の特殊ゴム
エチレン・プロピレン・ジエンゴム( EPDM :ethylene propylene diene rubber )
エチレンとプロピレン(6対4~7対3)に5%以下の非共役ジエン(たとえばエチリデンノルボルネン)を加え,ツィーグラー系触媒による溶液重合 で合成される三成分共重合体である。
エチレンとプロピレンの重合で得られ,比重が市販ゴムの中で最も小さいエチレン・プロピレンゴム (EPM)と同等の比重で耐オゾン,耐候性,耐薬品性,耐熱性,低温特性に優れ,EPM より加硫し易く,強度に優れ,各種自動車部品(ホース,ベルト,ウェザーストリップなど),工業用品,ルーフィング,シーリングなど建築関係,ワイヤ,ケーブルなどに利用されている。
また,ジエン系の汎用ゴムの耐候性,耐オゾン性の改良を目的にブレンド使用されることも多い。
クロロプレンゴム( CR :chloroprene rubber )
クロロプレン( 2-クロロ-1,3-ブタジエン,CH2=CCl-CH=CH2 )の乳化重合で合成される。
生成物は,トランス-1,4結合を 80%以上含み,酸化マグネシウムや酸化亜鉛で架橋してゴム製品となる。
主な用途には,難燃性,耐油性・耐候性に優れる特徴を活用した各種自動車部品,ワイヤ・ケーブル関係,工業用部品(ベルト,ホースなど),はきもの,レジャー用品(ウェットスーツ,他),接着剤(ゴム糊)関係などがある。
アクリロニトリル・ブタジエンゴム( NBR :acrylonitrile‐butadiene rubber )
一般的には,ニトリルゴム( NBR :nitrile rubber )とも称され,アクリロニトリル( CH2=CHCN ,15~50%)とブタジエン(85~50%)の乳化重合によって製造される。
加硫ゴム製品は耐油性が優れ,耐油用自動車部品,ホース,ガスケット,Oリング,オイルシール,ダイヤフラムなど工業用品,ゴムカバーロール,はきもの(靴底)などに用いられている。
非ジエン系の特殊ゴム
ブチルゴム( IIR :butyl rubber )
ブチルゴムは,イソブチエン・イソプレンゴム( IIR :isobutylene-isoprene rubber )との一般名称で,イソブチレンに3%程度のイソプレンを加え,塩化アルミニウム触媒などを用いた低温溶液重合で合成される。
加硫ゴム製品は気体透過性が天然ゴムの10分の1と低く,反発性も低いので,タイヤチューブ,インナーライナー,タイヤキュアリングバッグ,工業用品(防振ゴム,ガスケット,スチームホース,耐熱ベルト等),電気製品,建築関係(シーリング,ルーフィング)などに用いられる。
エチレン・プロピレンゴム( EPM :ethylene-propylene rubber )
エチレンとプロピレン(6対4~7対3)の共重合体で,ツィーグラー系触媒による溶液重合で合成される。
EPM は,比重が市販ゴムの中でもっとも小さく,耐オゾン,耐候性,耐熱性,低温特性に優れ,電線被覆などの電機関係で利用されている。
ウレタンゴム( U :polyurethane rubber , urethane rubber )
ポリオールとジイソシアナートの付加重合で得られるポリウレタンをプリポリマー(プレポリマー)とし,これに鎖延長・橋架け剤などを加えて成形することで製品が得られる。
プリポリマー( prepolymer )とは,“単量体又は単量体類とその最終の重合体との中間の重合度の重合体。”と定義されている。
ポリエーテルジオールから得られるプリポリマーは EU ,ポリエステルジオールから得られるプリポリマーは AU と略称される。
AU は,機械的強度が高く広範囲の物性を持つ製品が得られる。EU は,機械的性質,耐熱老化性,耐摩耗性,耐化学薬品性などの良好な軟質から硬質まで幅広いゴム製品が得られる。
ウレタンゴムの主な用途には,工業用品(シール,カップリング,ベルト,パッキン,ライニングなど),スポーツ用品(スキーブーツ),電気部品,フォークリフトなどのソリッドタイヤがある。
ふっ素ゴム( FKM など:fluororubber , fluorine-containing rubber)
ふっ素( F )を含む合成ゴムの総称である。ふっ化ビニリデンと六ふっ化プロピレンあるいは五ふっ化プロピレンの共重合体が代表である。
ふっ素ゴムには,市場の 8 割りを占めるふっ化ビニリデン系( FKM )の他に,テトラフルオロエチレン-プロピレン系( FEPM ),テトラフルオロエチレン-パープルオロビニルエーテル系( FFKM )などがある。
耐熱性,耐油性,耐薬品性がゴムのなかでもっとも優れているが高価である。
主な用途として,自動車,船舶,航空,一般機器,ケミカルプラントなどで,耐熱性,耐油性,耐薬品性が求められるO-リング,ガスケット,シール部品,ダイヤフラム,バルブなどである。
シリコーンゴム( Qグループ :silicone rubber )
後述の【参考:シリコーン樹脂】で紹介するオルガノシロキサン結合( -Si(R,R')-O- )をもつ線状重合体のうち,半流動性の固体が原料ゴムとなる。実用例多いシリコーンゴムは,ビニルメチルシリコーンゴム( VMQ )である。
ビニル基側鎖を含むものは硫黄で,その他は有機過酸化物で架橋してシリコーンゴム製品が得られる。耐熱性が高く,低温でも弾性を示すなど使用温度範囲が広い。
主な用途には,電気,電子関係の各種部品,医療,生体関連,各種コーティング,シーリング材などがある。
その他
その他のゴムとして,エチレン・酢酸ビニルゴム(EVM),アクリルゴム(ACM),ポリエーテルゴム(O),クロロスルホン化ポリエチレン(CSM),多硫化系ゴム(T)などがある。
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参考:シリコーン樹脂
シリコーンとは
シロキサン結合が長く連なった高分子(ポリシロキサン)をシリコーン( silicone )と呼ぶ。
JIS K 6900「プラスチック―用語: Plastics − Vocabulary 」では,有機高分子としての規定はないが,無機高分子( inorganic polymer )の定義で,「主鎖に炭素原子をもたない重合体。 注−例:ポリジクロロフォスファゼン,ポリジメチルシロキサン。無機高分子には有機基側鎖が存在しているものもあるが,この場合にはその重合体はときには“半有機の”と呼ばれている。」と定義している。
シロキサン( siloxane )とは,ケイ素と酸素のシロキサン結合( Si–O–Si )を骨格とする有機けい素化合物(炭素−けい素結合を持つ有機化合物)の総称で,一般式 R3SiO–(R2SiO)n–SiR3( R:アルカン)で表される。
なお,siloxane は,silicon (けい素,シリコン),oxygen (酸素),alkane (アルカン)の合成語である。
JIS の観点からは,シリコーン ( silicone )は,無機高分子に分類されるが,半有機的な性質を持つ熱硬化性樹脂として日常生活での利用例も多い。
実用上は,耐熱性の高いエラストマーとしての性質を利用したものが多数を占める。
シリコーンは,有機化合物と同様に,分枝や環構造を形成できる。直鎖化合物の場合は,一般式の n が2000 以下で油状(シリコーンオイル),5000 以上でゴム状(シリコーンゴム)となり,分枝やアリール基による置換を多く持つものは樹脂の性質(けい素樹脂:silicone resin )を持つ。
シリコンとシリコーン
元素を示すけい素( silicon )は,シリコンとも呼ばれるが,silicone の日本語訳をシリコーンの他にシリコンとする書籍,報告書や文献も多く,混乱するので,ここでは,元素を示す場合をシリコン,ポリシロキサンを示す場合をシリコーンとする。
シリコーン樹脂の特性と用途
シリコーン樹脂は,メチル基やベンゼン環などの導入される有機基により,ゴム状のものから硬い樹脂まで物性(屈折率・比重・ガラス転移点・親水性や疎水性・風合いなど)が大きく変化する。
一般的には,無色無臭で,撥水性があり,耐油性,耐酸化性,耐熱性に優れる。特に,耐熱性については,200 ℃を超え条件によっては 400 ℃にも至る。
主な用途には,食品用器具類,耐熱・耐寒容器,シール・目地材,コーティング材,化学品用器具類,医療用器具類,繊維処理剤(撥水剤)などに用いられる。
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