第五部:有機化学の基礎 有機化学とは

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  ここでは,有機化合物を特徴付ける原子団について, 【基とは】,  【主要な官能基について】 に項目を分けて紹介する。

  基とは

 日本語でという場合は,有機化合物の性質を特徴づける原子の集団(原子団を意味する( group )と,不対電子をもつ原子,分子やイオンを指す遊離基( radical )を意味する( radical )の異なる意味をもつ。
 ここでは,有機化合物の原子団を意味する( group )の概念を紹介する。

 原子団を意味するは,概念の違いにより置換基,及び特性基官能基に分けられる。
 ただし,原子団によっては何れか一つの概念にしか該当しない物もあるが,二つ以上に該当するものもあるため,実際には,明確な区別で用い分けられているとは限らない。
 さらに,ここで示した概念と異なる意味合いでの使用例もあるので,次に示す概念はあくまでも一例である。

 置換基( substituent group )
 化合物の系統や命名の際の部分構造で,母体化合物との対で使用される。すなわち,共通する構造を母体と呼び,相異なる部分を置換基と呼ぶ。
 具体的には,母体の水素原子と置き換わった他の原子や原子団を置換基という。
 なお,化合物命名に用いられる場合には特性基でもあり,化合物の特性や反応性に着目した場合には官能基でもある。

 特性基( characteristic group )
 化合物を形式的に特徴づけるもので,化合物の命名法化学反応機構を説明するために用いられる。なお,次に紹介する官能基は,単一又は複数の特性基の組み合わせで構成される。

 官能基( functional group )
 物質の化学的属性( chemical profile )や化学反応性( chemical reactivity )に着目した概念で整理されているので,有機化合物の特性による分類は,官能基の種類による分類と考えてもよい。

官能基(赤字)の例と特性基

官能基(赤字)の例と特性基の関係

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  主な官能基について

 ここでは,有機化合物 IUPAC命名法で用いられる優先順位を参考に,優先順位の高い順に紹介する。

主な官能基の例

主な官能基の例


 カルボキシル基( hydroxyl group )
 カルボキシ基ともいい,一般式 - COOH で表される。
 炭素鎖の末端にヒドロキシ基一つと酸素原子が二重結合した親水性の官能基で,ヒドロキシ基部分がプロトンを遊離することで酸性を示す。
 カルボキシル基を還元することで,アルデヒド基またはヒドロキシ基となる。ヒドロキシ基と脱水縮合してエステルを作る。
 アミノ酸のカルボキシ基とアミノ基が縮合したものはペプチド結合と呼ぶ。

 酸無水物( acid anhydride )
 一般式 R–CO–O–CO–R' で表される。例えば,2 分子のカルボン酸を脱水縮合させたものをカルボン酸無水物( carboxylic anhydride )という。

 エステル結合( ester bond )
 有機酸やオキソ酸ヒドロキシ基を含む化合物(アルコールやフェノール)との縮合反応で得られる一般式 –COO− の官能基をエステル結合と呼ぶ。
 単にエステルと呼ぶときはカルボン酸とアルコールから成るカルボン酸エステル(carboxylate ester)を指すことが多く、カルボン酸エステルのエステル結合による重合体はポリエステル(polyester)と呼ばれる。

 アミド結合( amide bond )
 アミンとカルボン酸の脱水縮合反応で生成されるカルボン酸アミド( R–C(=O)–N R'R")の構造のうち,C(=O)–N のカルボニル基と窒素との結合部をアミド結合と呼ぶ。
 カルボン酸アミドは,R',R"= H を 1 級アミド,R'≠ H ,R"= H を 2 級アミド, R'≠ H ,R"≠ H を 3 級アミド という。環状構造を持つアミドはラクタムとも呼ばれる。

 ニトリル基( nitrile group )
 シアノ基( cyano group )シアン基とも言われ,一般式 −C≡N で表される 1 価の特性基で,炭素の sp 混成軌道で直線型の構造を持つ。

 アルデヒド基( aldehyde group )
 ホルミル基( formyl group )とも呼ばれ,一般式 −CHO で表される 1 価の特性基で,第一級アルコール( − CH2OH )を酸化することで得られる。

 カルボニル基( carbonyl group )
 一般式 −C(=O)− で表される 2 価の特性基で,ケト基とも呼ばれる。炭素鎖のメチレン( −CH2− )の水素をオキソ基( =O )に置換した構造でもある。

 ヒドロキシ基( hydroxy group )
 水酸基,ヒドロキシル基( hydroxyl group )ともいい,一般式 −OH で表され,ベンゼン環以外の炭素上の水素を置換した化合物をアルコール類,ベンゼン環の水素を置換した化合物をフェノール類と呼ぶ。

 アミノ基( amino group )
 アンモニア( NH3 ),第一級アミン( NH2R ),第二級アミン( NHRR" )から水素を除去した 1 価の基( -NH2 ,–NHR ,–NRR' ) をいう。芳香環上に置換すると電子供与基としての性質を示す。

 イミノ基( imino group )
 第一級アミン( NH2R )から水素を 2 個除去したような 2 価の基( =NH ,>NH,=NR ,>NR ) をいう。

 エーテル結合( ether bond )
 一般式 R−O−R' で表される化合物(エーテル)に含まれる −O− の部分をエーテル結合という。

 ニトロ基( nitro group )
 1 価の( –NO2で表せ,ニトロ基上の窒素原子が正電荷を帯び,負電荷は2つの酸素原子上に均等に分布する構造を持つ。
 ニトロ基を化合物に導入することをニトロ化という。1 価の( –N=O )はニトロソ基( nitroso group )という。

 ハロゲン基( halogen group )
 ハロゲノ基ともいい,水素と置換したハロゲン -X( F ,Cl ,Br ,I )をいう。

 アルキル基( alkyl group )
 直鎖のアルカンの末端から水素を 1 つ取り除いた一般式 -CnH2n+1 で表される一価の置換基で,n=1 のメチル基( -CH3 ),n=2 のエチル基( -C2H5 )などがある。
 直鎖のアルカンから水素を2つ取り除いた一般式 - CnH2n ,= CnH2n-1 で表される置換基をアルキレン基( alkylene group )といい,n=1 のメチレン基,n=2 のエチレン基などがある。

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