第五部:有機化学の基礎 食品添加物

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  ここでは,食品の加工のみならず品質の改善を目的に用いられる食品添加物に関連し, 【食品添加物とは】, 【食品衛生法上の分類】, 【使用目的による分類】, 【食品衛生法 抜粋】, 【食品衛生法施行令,食品衛生法施行規則の抜粋】 に項目を分けて紹介する。

  食品添加物とは

 ここでは,厚生労働省:健康・医療>食品>食品添加物東京都福祉保健局:食品衛生の窓>たべもの安全情報館>食品添加物(般社)日本食品添加物協会よくわかる食品添加物などを参考に概要を紹介する。

 食品添加物( food additive )
 食品衛生法第4条第2項には,
 「食品の製造の過程において又は食品の加工若しくは保存の目的で,食品に添加,混和,浸潤その他の方法によって使用するものをいう。」
 と定義されている。
 すなわち,食品添加物は,使用目的により,食品の製造や加工のために必要な製造用剤,食品の風味や外観を良くするための甘味料,着色料,香料など,食品の保存性を良くする保存料,酸化防止剤など,食品の栄養成分を強化する栄養強化剤などに分けられる。

 食品添加物は,人の健康を損なうおそれのない場合に限って,成分の規格や,使用の基準を定めたうえで使用が認めている。食品添加物の成分規格,使用基準は,食品衛生法第 11条第 1項に定められている。
 添加物の純度,有害な副産物,ヒ素や重金属などの有害物質含有量の上限値などを定める成分規格は,健康危害を引き起こす原因となる不純物の危険性を排除することを目的としている。
 成分規格には,添加物の純度,製造する際に生じる副産物や有害なヒ素及び重金属の含有量の上限値などがある。
 使用基準は,実験動物等を用いて毒性試験を行い,有害な影響が観察されなかった最大の投与量無毒性量: NOAEL ,No Observed Adverse Effect Level )を安全係数で割り,人が生涯その物質を毎日摂取し続けても健康への影響がないと推定される 1 日あたりの摂取量(一日摂取許容量: ADI ,Acceptable Daily Intake )を求め,日本人の各食品の摂取量などを考慮した上で,使用対象食品や最大使用量などが決められる。
 従って,使用基準は,その上限量を使用しても ADI を大きく下回る量の摂取になるように定められている。
 具体的な使用基準は,厚生省告示第 370号「食品、添加物等の規格基準に定められている。

 添加物リスト,製造基準,使用基準などの食品及び食品添加物に関連した最新情報は,(公財)日本食品化学研究振興財団で入手可能である。

 【参考】
 食品衛生法
 平成 30年 6月 13日に「食品衛生法等の一部を改正する法律」が公布され,平成 30年 6月 15日に 15年ぶりに食品衛生法が改正された。関連する政令,省令,条例等の改正が進み,令和 2年 12月 4日に新しい食品衛生法施行規則(省令第二十三号)が施工された。
 食品衛生法の改正の背景を,
 「前回の食品衛生法等の改正から約 15年が経過し,世帯構造の変化を背景に,調理食品,外食・中食への需要の増加等の食へのニーズの変化,輸入食品の増加など食のグローバル化の進展といった我が国の食や食品を取り巻く環境が変化。」
 と定め,これに対応するため,次に示す 7つの課題に対応するための改正が行われた。
 1.広域的な食中毒事案への対策強化
 2.HACCP( Hazard Analysis and Critical Control Point )に沿った衛生管理の制度化
   すべての食品等事業者に,一般衛生管理に加え,HACCPに沿った衛生管理の実施を求める。
 3.特別の注意を必要とする成分等を含む食品による健康被害情報の収集
 4.国際整合的な食品用器具・容器包装の衛生規制の整備
 5.営業許可制度の見直し,営業届出制度の創設
 6.食品リコール情報の報告制度の創設
 7.その他(乳製品・水産食品の衛生証明書の添付等の輸入要件化,自治体等の食品輸出関係事務に係る規定の創設等)

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  食品衛生法上の分類

 原則として,食品衛生法第 12条に基づき,厚生労働大臣の指定を受けた添加物(指定添加物)だけが使用できる。
 指定添加物以外で,例外的に使用,販売等が認められる添加物には,日本で広く使用され,長い食経験がある既存添加物,バニラ香料,カニ香料など動植物から得られる天然物質で,香り付け目的で使用される天然香料,イチゴジュース,寒天など一般に飲食に供されているもので添加物として使用される一般飲食物添加物がある。
 最新の品目については,(般社)日本食品添加物協会よくわかる食品添加物が参考になる。

 <指定添加物>
 平成28年9月26日時点で 454品目,令和 3年 1月15日時点で 472品目が指定されている。指定添加物は,食品衛生法施行規則別表第 1「指定添加物リストに収載されている。

 <既存添加物>
 厚生労働大臣が認めたものを「 既存添加物名簿」に収載し,引き続き使用することを認めている。名簿には,平成28年9月26日時点で 365 品目が,令和 3年 1月15日時点で 357品目が収載され,品名,製法などは,日本食品化学研究振興財団「既存添加物名簿収載品目リストが参考になる。

 <天然香料>
 りんご,緑茶,乳などの動植物から得られる着香を目的とした添加物で,一般に使用量が微量で,長年の食経験で健康被害がないとして使用が認められているものが,日本食品化学研究振興財団「天然香料基原物質リストが参考になる。

 <一般飲食物添加物>
 食品衛生法第10条に「一般に食品として飲食に供されているもので添加物として使用されるもの」と定義され,例えば,“オレンジ果汁を着色の目的で使用する場合”,“こんにゃくの成分であるマンナンを増粘の目的で使用する場合”などが該当する。日本食品化学研究振興財団「一般飲食物添加物品目リストが参考になる。

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  使用目的による分類

 食品添加物は,目的や効果の違いにより次の様に分類される。

 <食品の製造や加工で必要なもの>
 食品の製造や加工で必要不可欠となる酵素,ろ過助剤,油脂溶出剤,消泡剤,酸・アルカリなどの加工助剤などである。
 例えば,“豆腐を固める凝固剤”,“小麦粉からラーメンを作る時に加えるかんすい”,“ビールなどのろ過の際に使用する活性炭”などが該当する。

 <風味や外観の改良>
 色合いを変える着色料・発色剤・漂白剤など,香り付けの香料,味覚に影響する甘味料・調味料,食感に影響する乳化剤・増粘安定剤などである。

 <保存性向上,食中毒防止>
 酸化・変敗,微生物の繁殖による腐敗などの防止による保存性を向上に寄与する保存料,酸化防止剤,殺菌料,防かび剤などである。

 <栄養成分の強化>
 栄養素の補充・強化目的で加えるビタミン,ミネラル,アミノ酸などである。

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  食品衛生法 抜粋

 食品衛生法(昭和二十二年十二月二十四日法律第二百三十三号), 最終改正:平成二六年六月一三日法律第六九号
 食品衛生法の構成は,第一章 総則,第二章 食品及び添加物,第三章 器具及び容器包装,第四章 表示及び広告,第五章 食品添加物公定書,第六章 監視指導指針及び計画,第七章 検査,第八章 登録検査機関,第九章 営業,第十章 雑則,第十一章 罰則,附則である。

 第一章 総則
 第一条(平成15年,平成30年) この法律は、食品の安全性の確保のために公衆衛生の見地から必要な規制その他の措置を講ずることにより、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、もつて国民の健康の保護を図ることを目的とする。
 第四条(平成15年,平成30年) この法律で食品とは、全ての飲食物をいう。ただし、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 (昭和三十五年法律第百四十五号)に規定する医薬品、医薬部外品及び再生医療等製品は、これを含まない。
 2 この法律で添加物とは、食品の製造の過程において又は食品の加工若しくは保存の目的で、食品に添加、混和、浸潤その他の方法によつて使用する物をいう。
 3 この法律で天然香料とは、動植物から得られた物又はその混合物で、食品の着香の目的で使用される添加物をいう。
 4~9 略

 第二章 食品及び添加物
 第十条(平成15年) 人の健康を損なうおそれのない場合として厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて定める場合を除いては、添加物(天然香料及び一般に食品として飲食に供されている物であつて添加物として使用されるものを除く。)並びにこれを含む製剤及び食品は、これを販売し、又は販売の用に供するために、製造し、輸入し、加工し、使用し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない。
 第十条(平成30年) 第1号若しくは第3号に掲げる疾病にかかり、若しくはその疑いがあり、第1号若しくは第3号に掲げる異常があり、又はへい死した獣畜(と畜場法(昭和28年法律第114号)第3条第1項に規定する獣畜及び厚生労働省令で定めるその他の物をいう。以下同じ。)の肉、骨、乳、臓器及び血液又は第2号若しくは第3号に掲げる疾病にかかり、若しくはその疑いがあり ・・・
 第十一条(平成15年) 厚生労働大臣は、公衆衛生の見地から、薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて、販売の用に供する食品若しくは添加物の製造、加工、使用、調理若しくは保存の方法につき基準を定め、又は販売の用に供する食品若しくは添加物の成分につき規格を定めることができる。
 2 前項の規定により基準又は規格が定められたときは、その基準に合わない方法により食品若しくは添加物を製造し、加工し、使用し、調理し、若しくは保存し、その基準に合わない方法による食品若しくは添加物を販売し、若しくは輸入し、又はその規格に合わない食品若しくは添加物を製造し、輸入し、加工し、使用し、調理し、保存し、若しくは販売してはならない。
 3 農薬・・・
 第十一条(平成30年) 食品衛生上の危害の発生を防止するために特に重要な工程を管理するための措置が講じられていることが必要なものとして厚生労働省令で定める食品又は添加物は、当該措置が講じられていることが確実であるものとして厚生労働大臣が定める国若しくは地域又は施設において製造し、又は加工されたものでなければ、これを販売の用に供するために輸入してはならない。
 2 第 6条各号に掲げる食品又は添加物のいずれにも該当しないことその他厚生労働省令で定める事項を確認するために生産地における食品衛生上の管理の状況の証明が必要であるものとして厚生労働省令で定める食品又は添加物は、輸出国の政府機関によつて発行され、かつ、当該事項を記載した証明書又はその写しを添付したものでなければ、これを販売の用に供するために輸入してはならない。
 第十二条(平成30年) 人の健康を損なうおそれのない場合として厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて定める場合を除いては、添加物(天然香料及び一般に食品として飲食に供されている物であつて添加物として使用されるものを除く。)並びにこれを含む製剤及び食品は、これを販売し、又は販売の用に供するために、製造し、輸入し、加工し、使用し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない。
 第十三条(平成30年) 厚生労働大臣は、公衆衛生の見地から、薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて、販売の用に供する食品若しくは添加物の製造、加工、使用、調理若しくは保存の方法につき基準を定め、又は販売の用に供する食品若しくは添加物の成分につき規格を定めることができる。
 2 ・・・

 第四章 表示及び広告
 第十九条(平成15年,平成30年) 内閣総理大臣は、一般消費者に対する器具又は容器包装に関する公衆衛生上必要な情報の正確な伝達の見地から、消費者委員会の意見を聴いて、前条第一項の規定により規格又は基準が定められた器具又は容器包装に関する表示につき、必要な基準を定めることができる。
 2 ・・・
 3 販売の用に供する食品及び添加物に関する表示の基準については、食品表示法(平成二十五年法律第七十号)で定めるところによる。
 第五章 食品添加物公定書
 第二十一条(平成15年,平成30年) 厚生労働大臣及び内閣総理大臣は、食品添加物公定書を作成し、第十一条第一項の規定により基準又は規格が定められた添加物及び食品表示法第四条第一項 の規定により基準が定められた添加物につき当該基準及び規格を収載するものとする。
 第七章 検査
 第二十五条(平成15年,平成30年) 第十一(十三)条第一項の規定により規格が定められた食品若しくは添加物又は第十八条第一項の規定により規格が定められた器具若しくは容器包装であつて政令で定めるものは、政令で定める区分に従い厚生労働大臣若しくは都道府県知事又は登録検査機関の行う検査を受け、これに合格したものとして厚生労働省令で定める表示が付されたものでなければ、販売し、販売の用に供するために陳列し、又は営業上使用してはならない。
 第八章 登録検査機関
 第三十三条(平成15年,平成30年) 厚生労働大臣は、第三十一条の規定により登録を申請した者(以下この項において「登録申請者」という。)が次に掲げる要件のすべてに適合しているときは、その登録をしなければならない。この場合において、登録に関して必要な手続は、厚生労働省令で定める。
 一 別表の第一欄に掲げる製品検査の種類ごとに、それぞれ同表の第二欄に掲げる機械器具その他の設備を有し、かつ、製品検査は同表の第三欄に掲げる条件に適合する知識経験を有する者が実施し、その人数が同表の第四欄に掲げる数以上であること。
 別表(平成15年,平成30年) (第三十三条関係)
 理化学的検査:遠心分離機,純水製造装置,超低温槽,ホモジナイザー,ガスクロマトグラフ,ガスクロマトグラフ質量分析計(食品に残留する農薬取締法第一条の二第 一項に規定する農薬の検査を行う者に限る。),原子吸光分光光度計,高速液体クロマトグラフ
 細菌学的検査:遠心分離機,純水製造装置,超低温槽,ホモジナイザー,乾熱滅菌器,光学顕微鏡,高圧滅菌器,ふ卵器
 動物を用いる検査:遠心分離機,純水製造装置,超低温槽,ホモジナイザー

 附則(平成七年五月二四日法律第一〇一号)抄(既存添加物に関する経過措置)
 第二条 厚生大臣は、次に掲げる添加物(第一条の規定による改正前の食品衛生法(以下「旧食品衛生法」という。)第二条第三項に規定する化学的合成品たる添加物並びに第一条の規定による改正後の食品衛生法(以下「新食品衛生法」という。)第二条第三項に規定する天然香料及び一般に食品として飲食に供されている物であって添加物として使用されるものを除く。)の名称を記載した表(以下「既存添加物名簿」という。)を作成し、これをこの法律の公布の日から三月以内に公示しなければならない。
 一 この法律の公布の際現に販売され、又は販売の用に供するために、製造され、輸入され、加工され、使用され、貯蔵され、若しくは陳列されている添加物
 二 この法律の公布の際現に販売され、又は販売の用に供するために、製造され、輸入され、加工され、使用され、貯蔵され、若しくは陳列されている製剤又は食品に含まれる添加物
 2 ・・・
 3 ・・・
 4 ・・・

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  食品衛生法施行令,食品衛生法施行規則の抜粋

 食品衛生法施行令 (昭和二十八年八月三十一日政令第二百二十九号),最終改正:平成二七年三月三一日政令第一二八号
 (法第二十五条第一項 の検査)
 第四条(平成15年,令和 2年) 法第二十五条第一項 の政令で定める添加物はタール色素とし、その検査を行う者は登録検査機関とする。
 2 法第二十五条第一項 の規定により検査を受けようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣若しくは都道府県知事又は登録検査機関に申請書を提出しなければならない。
 3 厚生労働大臣若しくは都道府県知事又は登録検査機関は、前項の申請書を受理したときは、厚生労働省令で定めるところにより、試験品を採取するものとする。
 4 厚生労働大臣若しくは都道府県知事又は登録検査機関は、前項の規定により採取した試験品について厚生労働大臣の定めるところにより検査を行い、これが厚生労働大臣の定める/strong>基準に適合しているときは検査に合格したものとし、法第二十五条第一項 の厚生労働省令で定める表示を付するものとする。

 食品衛生法施行規則 (昭和二十三年七月十三日厚生省令第二十三号),最終改正:平成二八年一〇月六日厚生労働省令第一六〇号
 食品衛生法施行規則の構成は,第一章 食品、添加物、器具及び容器包装,第二章 削除,第三章 削除,第四章 製品検査,第五章 輸入の届出,第六章 食品衛生検査施設,第七章 登録検査機関,第八章 営業,第九章 雑則,附則である。
 第一章 食品、添加物、器具及び容器包装
 第十二条(平成15年,令和 2年) 法第十条(法第十二条) の規定により人の健康を損なうおそれのない添加物を別表第一のとおりとする。
 第四章 製品検査
 第二十五条 食品衛生法施行令 (昭和二十八年政令第二百二十九号。以下「令」という。)第四条第三項 の規定による試験品の採取は、ロツトを形成する製品ごとに行うものとし、その採取量は、検査に必要な最小限度の分量とする。
 第二十六条 法第二十五条第一項 の厚生労働省令で定める表示は、様式第一号による合格証をもつて製品の容器包装に封を施したものとする。

 別表第一(第十二条関係)
 一 亜鉛塩類(グルコン酸亜鉛及び硫酸亜鉛に限る。)
 二 亜塩素酸水
 三 亜塩素酸ナトリウム
 四 亜酸化窒素
 五 アジピン酸
 ・・・
 四百五十二 リン酸一水素マグネシウム
 四百五十三 リン酸三ナトリウム(別名第三リン酸ナトリウム)
 四百五十四 リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン
 令和 3年 1月15日時点で 472品目が指定添加物としてリストアップされている。

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