化 学 (有機化学)

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 ここでは,高分子合成反応に関し,【合成法の分類】【連続重合:付加重合】【逐次重合:縮合重合】【重合反応の特徴】【参考:高分子関連の反応】に項目を分けて紹介する。

 【高分子合成法の分類】

 化学反応の分類で紹介したように,重合体(ポリマー)の合成を目的にする化学反応の総称を重合反応( polymerization reaction )という。
 重合反応を大きく分けると,分子内にあらかじめ反応点を2つ以上持たせておく方法と反応中に活性点を連鎖的に発生させる方法がある。
 なお,重合( polymerization )は,JIS K 6900「プラスチック―用語: Plastics − Vocabulary 」で“単量体又は単量体類の混合物を重合体に転化する過程。”と定義されている。
 
 重合反応は,反応点,反応機構,反応種の違いにより次の様に分類される。
 反応点の違いでは,連鎖重合(連鎖反応,リビング重合),逐次重合に分けらる。
 反応機構の違いでは,付加重合,重付加,縮合重合(重縮合),付加縮合,開環重合に分けられる。
 反応種の違いでは,ラジカル重合,イオン重合,カチオン重合,アニオン重合,配位重合などに分けられる。
 
 反応区分の関係を要約すると次のようになる。
 高分子合成反応
   連鎖重合
     付加重合(ラジカル重合,カチオン重合,アニオン重合,配位重合)
     開環重合(ラジカル重合,カチオン重合,アニオン重合,配位重合)
     連鎖縮合反応
   逐次重合
     縮合重合
     重付加
     付加縮合

 

 【連続重合:付加重合】

 付加重合( addition polymerization )は,JIS K 6900「プラスチック―用語: Plastics − Vocabulary 」で“繰返し付加過程による重合。繰返し付加過程は水又はその他の簡単な分子の脱離を伴うことなく行われる。”と定義されている。
 具体的には,二重結合や三重結合を持った不飽和化合物が,付加反応(他の分子と反応し,単結合を持つ飽和化合物になる反応)により,次々と重合する反応を付加重合と呼ばれる。
 エチレンからポリエチレン,プロピレンからポリプロピレン,塩化ビニルからポリ塩化ビニルなどの製造で用いられる化学反応である。
 
 下図には,過酸化ベンゾイル( (C6H5CO)2O2 )をラジカル開始剤に用い,エチレン( C2H4 )モノマーのラジカル重合によるポリエチレンの合成例を示す。反応の過程は,開始,成長,停止の三段階で進む。
 開始段階では,多少の加熱により過酸化ベンゾイルの O–O 結合が解離し生成したベンゾイルオキシラジカルが二酸化炭素( CO2 )を失いフェニルラジアルPh・が生成する。このフェニルラジカルがエチレンの二重結合に付加し,末端の炭素に不対電子を持つ炭素ラジカルが生成する。
 成長段階では,末端の炭素に不対電子を持つ炭素ラジカルと新しいエチレンとが反応する。これの繰り返しで炭素鎖が成長する。
 停止段階では,偶発的に 2 つのラジカルが衝突することで,ラジカルが消費される。この段階では,衝突した 2 つのラジカルが連結した 1 つの飽和化合物が生成する反応の他に,飽和化合物と不飽和化合物の 2 つの化合物が生成する不均化反応によってもラジカルが消費される。

付加重合例(エチレンのラジカル重合)

付加重合例(エチレンのラジカル重合)

 エチレンから水素を 1 個取り去ったビニル基( vinyl group : H2C=CH– )を持つ化合物では,同様のラジカル重合でポリマーを生成できる。
 例えば,プロペン( H2C=CH–CH3 )からはポリプロピレン( PP )が,塩化ビニル( H2C=CH–Cl )からはポリ塩化ビニル( PVC ),スチレン( H2C=CH–C6H5 )からはポリスチレン( PS )が得られる。
 なお,プロペンのメチル基など電子供与基を持つビニルモノマーは,酸触媒を用いた付加重合(カチオン重合)によってもポリマーを生成する。スチレンのフェニル基など電子求引基を持つビニルモノマーは,塩基性触媒による付加重合(アニオン重合)によってもポリマーを生成できる。
 
 付加重合の中で,不飽和結合や環状構造の官能基を2個以上もつ化合物と分子の両末端に活性水素をもつ化合物が,付加反応を繰返しながら重合体を生成する反応を重付加( polyaddtion )という。
 JIS K 6900「プラスチック―用語: Plastics − Vocabulary 」では,重付加を“広義には付加重合と同義語。狭義には炭素−炭素不飽和結合を含まない単量体の付加(例えば,エポキシ,イソシアネート,又はラクタム単量体の反応)によって重合体を形成する化学反応。”と定義している。
 なお,重付加は,ポリウレタンやエポキシ樹脂製造に用いられる水素移動型重付加,環状ポリオレフィン樹脂の製造で用いられるペリ環状反応で多重結合を次々と付加反応する電子移動型重付加とに分けられる。

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 【逐次重合:縮合重合】

 縮合重合( condensation polymerization )は,重縮合( polycondensation )とも呼ばれ,JIS K 6900「プラスチック―用語: Plastics − Vocabulary 」では,“縮合過程(すなわち,簡単な分子の脱離を伴う)の繰返しによる重合。”と定義されている。
 具体的には,複数の化合物が,互いの分子内から水( H2O )などの単純な化合物を脱離しながら重合する反応である。
 なお,縮合反応( condensation reaction )とは,【置換反応】カルボニル縮合反応で紹介したように,2 つの官能基からそれぞれ1部分の分離で小さな分子を形成して脱離し,新しい官能基が生成する形式の反応である。
 
 2 種類以上の単量体を含む重縮合は,共重縮合( copolycondensation )といわれ,JIS K 6900では,
 「それぞれ 2 個の同一の反応基を含む 2 種類の成分(又は“単量体”)の縮合重合によって製造される重合体は容易に 1:1 の比で反応して“暗黙の単量体”を作り,その単独重合で現実の製品ができるとみなすことができる。
 このような重合体は単一の構成繰返し単位をもつものとして示すことができ,したがって単独重合体と命名できる。この規則は最初の成分の比が 1 : 1 の場合にだけ適用できることに注意すべきである。ポリエチレンテレフタラート及びポリアミド 66 がこのような重合体の例である。」
 と記述している。
 
 重縮合で製造されるポリマーには,フェノール樹脂,ポリカーボネート樹脂,メラミン樹脂などが,共重縮合の例にはナイロン66(ポリアミド 66 ),ペット(ポリエチレンテレフタラート,ポリエステル樹脂)がある。なお,生成物の構造には,線状のものと網目状のものがある。
 
 下図に例示するように,ヘキサメチレンジアミン( H2N–(CH2)6–NH2 )とアジピン酸( HOOC–(CH2)4–COOH )を加熱することで,脱水反応による縮合重合(共重縮合)が起こり,ナイロン 66 が合成される。
 この反応では,生成した水により重合が止まるので,水の処理が必要になる。そこで,化学実験などでナイロン 66 を合成する場合には,混合と同時に反応が進むヘキサメチレンジアミン( H2N–(CH2)6–NH2 )とアジピン酸ジクロリド( ClOC–(CH2)4–COCl )の脱塩酸( – HCl )による縮合重合が用いられる。

重縮合例(ナイロン 66 )

重縮合例(ナイロン 66 )

 付加縮合
 付加反応と縮合反応の繰り返しで重合体を形成する反応で,フェノールとホルムアルデヒドを原料とした熱硬化性樹脂のフェノール樹脂,メラミンとホルムアルデヒドを原料とした熱硬化性樹脂のメラミン樹脂などの合成に用いられる反応である。
 
 開環重合
 環状化合物の環構造を解き,環の解かれた化合物の端同士が結合することで重合体(ポリマー)とする反応である。
 環状化合物の立体的なひずみのエネルギーを利用して進行する反応のため,立体ひずみの多い三員環,四員環や七員環以上の化合物が利用される。

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 【重合反応の特徴】

 位置規則性について
 単量体がアルケンの場合(ビニル重合)では,単量体の頭と尾が結合する頭‐尾結合( head to tail )と頭と頭,又は尾と尾が結合する頭-頭結合( head to head )の2通りの結合様式となる。何れが優先するかは,置換基の立体障害や電子的特性に応じて変わる。
 単量体が環状化合物(ラクトンや環状エーテルなど)で,環の開裂により重合(開環重合)する場合は,開裂が起こる場所によって頭-尾結合頭-頭結合の起こる割合も変わる。
 幾何異性体
 ジエン系モノマーの重合では,1,2-構造,シス 1,4-構造,トランス 1,4-構造といった異性体構造が生じる。
 立体規則性
 重合法によっては不斉炭素の絶対配置に規則性が現れる。これを立体規則性( tacticity :タクティシティー,タクチシチーという。
 すべての不斉炭素が同じ絶対配置を持つような構造をアイソタクチック( isotactic :イソタクチックともいう)といい,絶対配置が交互に並ぶものをシンジオタクチック( syndiotactic )という。また,ランダムになった構造をアタクチック( atactic )という。
 
 立体規則性の例
 反応条件や官能基の立体障害が立体規則性に影響する。ポリスチレン合成条件と立体規則性の例を次に紹介する。
 過酸化ベンゾイル( (C6H5CO)2O2 )をラジカル開始剤として用い,スチレン( C6H5CH=CH2のラジカル重合で合成したポリスチレンはランダムなアタクチック構造になる。
 ツィーグラー‐ナッタ触媒を用いて合成することで,アイソタクチック構造ポリスチレンを多く含む生成物が得られる。
 メタロセン触媒(有機金属化合物)を用いる配位アニオン重合することで,シンジオタクチック構造ポリスチレンが得られる。
 下図には,ポリスチレンの 2 種の立体配置について,一般的なフィッシャー投影式( Fischer projection )より,立体配置がイメージし易いナッタ投影式( Natta projection )を用いて紹介する。

立体規則性(ポリスチレン)の例

立体規則性(ポリスチレン)の例

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 【参考:高分子関連の反応】

 連鎖反応( chain reaction )
 連続反応の一種で,一つの反応で生成された化学種が次の反応を引き起こす過程が連続して進行する反応である。重合反応,爆発反応,核分裂などに見られる。
 この反応が十分なエネルギーを放出する発熱反応の場合は,外界からエネルギーを供給しなくても,反応に関わる化学種が消費されるまで連鎖的に進む。
 逐次反応( successive reaction )
 連続反応の一種で,連鎖反応以外の反応を逐次反応という。前段階の反応で生じた生成物が次の段階の反応物となるいくつかの反応がつぎつぎに起こり,最終生成物に至る反応である。
 逐次反応と呼ぶ場合は,反応中間体が単離,確認されている場合である。
 リビング重合( living polymerization )
 連鎖重合において移動反応・停止反応などの副反応を伴わない重合である。生成するポリマーの末端の重合活性( living )が維持され,重合度は一定のペースで増大する。このため,鎖の長さのそろったポリマーが得られる。
 ラジカル重合( radical polymerization )
 ラジカル反応によって行う重合である。重合体成長の末端がラジカル(遊離基)で,イオン重合に対し遊離基重合ともいう。
 この重合法は,ラジカル分解しやすい過酸化物,アゾ化合物,ハイドロパーオキシドなどを加熱や電磁波(紫外線・放射線)照射でラジカル化(開始反応)し,重合により成長(成長反応)した生成物を安定化(停止反応)することで重合体を得る。
 工業的に生産されているビニル重合体の多くは,ラジカル重合による。
 イオン重合( ionic polymerization )
 重合体成長の末端がイオンである付加重合をイオン重合といい,成長イオンがカチオン(陽イオン)の場合はカチオン重合といい,アニオン(陰イオン)の場合をアニオン重合という。
 反応には開始剤が必要で,カチオン重合ではプロトン酸やルイス酸が,アニオン重合ではアルカリ金属や有機金属化合物が用いられる。
 配位重合( coordinated polymerization )
 単量体が成長鎖に直接付加(付加重合)して高分子鎖が成長する場合の他に,単量体(モノマー)に触媒に配位してから成長鎖に付加する場合がある。後者の場合を配位重合という。
 触媒として,アルミニウムや亜鉛の有機金属化合物(ジエチル亜鉛‐水系触媒,ツィーグラー‐ナッタ触媒)などを用いると,初めに単量体に金属イオンが配位し活性化される。次いで,これに単量体が攻撃して付加反応が起きる。
 例えば,ポリエチレン,ポリプロピレンなどの合成に用いるツィーグラー‐ナッタ触媒には,四塩化チタン( TiCl4 )や三塩化チタン( TiCl3 )をトリエチルアルミニウム( Al(CH2CH3)3 )やメチルアルミノキサン( [-Al(CH3)O-]n : MAO )のような有機アルミニウム化合物と混合し調製したものが用いられる。
 この重合の特徴は,成長反応が制御されるため,高分子の立体構造が規制(後述の立体規制性)される。
 ツィーグラー‐ナッタ触媒( Ziegler-Natta catalyst )
 エチレン,プロピレン,ブタジエン,イソプレン,アセチレン等の重合やエチレン・プロピレンの共重合など,オレフィンの重合に用いる触媒で,日本語表記ではチーグラー・ナッタ触媒ともいわれる。
 ツィーグラー‐ナッタ触媒は,周期表で第 1 , 2 , 13 族の典型金属のアルキル化合物と第 4~7 族の遷移金属化合物の組合せで,立体規則性重合の触媒として有効な一連の触媒系の総称として用いられている。

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