化 学 (有機化学)

  ☆ “ホーム” ⇒ “生活の中の科学“ ⇒
 
 ここでは,カルボン酸の製法に関連し,【グリニャール試薬を用いた製法】【モノカルボン酸の製法】【アミノ酸の製法】【ジカルボン酸の製法】【ヒドロキシ酸の製法】【芳香族カルボン酸の製法】に項目を分けて紹介する。

 【グリニャール試薬を用いた製法】

 グリニャール試薬( Grignard reagent )は,有機マグネシウムハロゲン化物(一般式 R−MgX )で,カルボン酸をシステマテックに合成する方法として用いられる。
 
 カルボキシ基の幹部分に相当するグリニャール試薬を作成し,これに二酸化炭素を吹き込む方法やドライアイス(固体の二酸化炭素)上に注ぐ方法でカルボキシ化(二酸化炭素への求核置換反応:グリニャール反応)できる。
 従って,この方法で作製できるカルボン酸は,グリニャール試薬を作ることができるハロゲン化アルキルに限られる。
 
 すなわち,グリニャール試薬は,エーテル溶媒中でハロゲン化アルキルに金属マグネシウムを作用>させ,炭素-ハロゲン結合を炭素-マグネシウム結合に置き換えること生成される。生成する炭素-マグネシウム結合では炭素が陰性,マグネシウムが陽性に強く分極している。

カルボン酸の生成反応例

カルボン酸の生成反応例

  ページの先頭へ

 【モノカルボン酸の製法】

 アルコールの酸化反応で紹介したように,第一級アルコールアルデヒドを過マンガン酸カリウム( KMnO4 ),酸化クロム(Ⅵ)( CrO3 :三酸化クロム,無水クロム酸),重クロム酸ナトリウム( Na2Cr2O7 )などの強い酸化剤で酸化することによってカルボン酸が得られる。
 
 通常は,第一級アルコール酸化クロム(Ⅳ)の酸水溶液を用い,アルデヒドでは,他にアンモニア性硝酸銀( AgNO3 , NH4OH : Tollens 試薬)や亜塩素酸ナトリウム( NaClO )も用いられている。
 ギ酸( HCOOH )は,メタノール( CH3OH )やホルムアルデヒド( HCHO )の酸化で得られる。
 酢酸( CH3COOH )は,エタノール( C2H5OH )やアセトアルデヒド( CH3CHO )の酸化で得られる。
 ヘキサン酸( CH3(CH2)3COOH )は,1–ヘキサノール( CH3(CH2)3CH2OH )やヘキサナール( CH3(CH2)3CHO )の酸化でが得られる。
 
 ニトリル( R–C≡N )を強塩基の水溶液中で加熱(加水分解すると,アミド( R–C(O)NH2を経由してカルボン酸( R–C(O)OH )が得られる。

  ページの先頭へ

 【アミノ酸の製法】

 アルデヒド(又はケトン)とアンモニア,シアン化水素とでアミノ酸を合成する反応をストレッカー反応( Strecker reaction )という。
 アルデヒドとアンモニアからイミン( R–C(=NH)–H )を作り,ここにシアン化物イオンの求核反応でアミノニトリル( R–CH(–NH2)–C≡N )を作る。アミノニトリル加水分解(濃塩酸で加熱などの条件)することでα-アミノ酸( R–CH(COOH)NH2が得られる。

  ページの先頭へ

 【ジカルボン酸の製法】

 シュウ酸( HOOC-COOH )
 ギ酸ナトリウム( COONa )の加熱分解シュウ酸ナトリウム( (COO)2 Na2 )が得られる。水酸化カルシウムで,シュウ酸カルシウム( (COO)2 Ca )として沈殿させ,単離後により強い酸(硫酸)でシュウ酸を遊離させて得ることができる。工業的には,アルカリ処理した木片から抽出している。
 
 アジピン酸( HOOC (CH2)4 COOH )
 ナイロンの原料など工業的に重要なアジピン酸は,ベンゼン( C6H6 )に触媒(ニッケルやパラジウム)を用いて接触水素添加(水素化)してシクロヘキサン( C6H12を得る。
 シクロヘキサンを触媒(コバルトやマンガンの酢酸塩やナフテン酸塩)で酸化して得られるシクロヘキサノン(ケトン)とシクロヘキサノール(アルコール)の混合物(KAオイル)を硝酸で酸化することでアジピン酸が生産される。
 
 マレイン酸とフマル酸( HOOC-CH=CH-COOH )
 ベンゼン,ブタンなどの炭化水素の触媒(バナジウム系)を用いた気相酸化無水マレイン酸を製造し,これを加水分解することでマレイン酸が得られる。構造異性体のフマル酸は,無水マレイン酸転位して製造される。
 
 二重結合を持つアルケンを過マンガン酸カリウムで酸化した場合,塩基性の条件でジオールが,中性や酸性の条件では,酸化開裂反応で二重結合が切断されケトンカルボン酸が得られる。
 例えば,オレイン酸( CH3(CH2)7CHCH(CH2)7COOH )の酸化開裂ノナン酸( CH3(CH2)7COOH )とノナン二酸( HOOC(CH2)7COOH )が得られる。

  ページの先頭へ

 【ヒドロキシ酸の製法】

 脂肪族のヒドロキシ酸の多くは,発酵生成物や果実などに多く含まれる。このため,工業的な生産にも発酵技術によるものが少なくない。
 
 乳酸( CH3CH(OH) COOH )やクエン酸( C(OH)(CH2COOH)2 COOH )
 工業的には,デンプンや糖の発酵技術を用いた生産が主流である。乳酸微生物(乳酸菌)による発酵で,クエン酸コウジカビによる発酵で生産されている。
 
 リンゴ酸( HOOC CH(OH)CH2 COOH )
 微生物を用いた発酵法の他に,ベンゼンの接触酸化によって得られるマレイン酸とフマル酸を 160~ 200℃程度の加圧下で水と反応させて得る方法がある。
 
 サリチル酸( C6H4 (OH) COOH )
 ナトリウムフェノキシド( C6H5 ONa )を加圧・加熱しながら二酸化炭素( CO2 )を作用させてサリチル酸ナトリウム( C6H4 (OH) COONa )を得る(コベル・シュミット反応)。これに強酸(塩酸や硫酸)を加え弱酸であるサリチル酸を遊離させる。

  ページの先頭へ

 【芳香族カルボン酸の製法】

 過マンガン酸カリウムなどの強い酸化剤を用いることで,アルキルベンゼン側鎖の酸化芳香族カルボン酸の塩が得られる。
 
 安息香酸( C6H5 COOH )
 アルキルベンゼン( Ar-R )の酸化安息香酸( Ar-COOH )が得られる。
 この時,R の炭素数に関係なく最終的に安息香酸になる。例えば,トルエン( Ar–CH3 ),プロピルベンゼン( Ar-C3H7 )は,何れも過マンガン酸カリウムで安息香酸にまで酸化される。
 なお,R がアルコールの場合,例えばベンジルアルコール( Ar-CH2OH )の酸化では,ベンズアルデヒド( Ar-CHO )を経由して安息香酸まで酸化される。
 
 フタル酸( C6H4 (COOH)2
 メチル基を二つ持つo -キシレン( C6H4 (CH3)2 )を用い,コバルト(Ⅲ)を触媒として酸化すると,カルボキシル基を2つもつフタル酸が得られる。
 m - キシレンを用いれば,構造異性体のイソフタル酸が,p - キシレンを用いればテレフタル酸が得られる。
 ナフタレン( C10H8 )をバナジウム触媒( V2O5 )と共に高温で空気酸化すると,無水フタル酸が得られる。

  ページの先頭へ