化 学 (有機化学)

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 ここでは,身近なプラスチック,ゴム(エラストマー),繊維以外の高分子材料として, 【塗料とは】【接着剤とは】【接着剤の分類】【接着剤試験方法】【粘着剤とは】に項目を分けて紹介する。

 【塗料とは】

 塗料( coating material , coating , paint )とは,流動性を持ち物体の表面に塗り拡げられ,薄い膜となって乾燥,固化,密着し,対象物の保護,美装や対象物に新たな機能を付与することを目的に使用される材料をいう。その多くは,有機高分子材料が用いられる。
 
 塗料は,塗料概論で紹介したように,塗膜形成要素(展色剤)として用いられる油脂,天然樹脂,加工樹脂,合成樹脂などが,塗装後の乾燥・固化過程で大気中の酸素,水や塗膜副要素(添加剤)として加えた硬化剤との化学反応で高分子化合物の膜として機能を発揮する。
 
 塗料は,建築物用,構造物用,自動車用,鉄道車両用,船舶用など産業分野別の要求性能に応じた区分がある。身近な家庭用塗料についても,家庭用品品質表示法で使用目的(用途)に応じて次の様に分類される。
 「屋外木用」,「屋内木用(床を含む)」,「屋内木用(床を除く)」,「木床用」,「鉄用(さび止め)」,「トタン用」,「屋外壁用」,「屋内壁用(浴室・台所の壁を含む)」,「屋内壁用(浴室・台所の壁を除く)」,「浴室・台所の壁用」
 
 構造物や建築物に用いられる保護を目的とする塗料・塗装系に関しては,塗料各論で紹介した。
 
 塗料の展色剤に用いられる高分子材料(樹脂についは,JIS K5500「塗料用語:Glossary of terms for coating materials 」での定義を中心に,塗料(樹脂)で紹介している。

 

 【接着剤とは】

 JIS K6800「接着剤・接着用語:Glossary of Terms Used in Adhesives and Adhesion 」の定義によると,接着剤( adhesive ,glue )とは,物体の間に介在することによって物体を結合することのできる物質をいう。
 化学的又は物理的作用(例えば,重合,酸化,ゲル化,水和,冷却又は揮発性成分の揮散)によって接着強さが発現する過程をセッティング( setting )という。
 被着材間にある接着剤の層を接着層( glue line )といい,接着された二面間の結合の強さを接着強さ( bond strength )や接着力といい,引張りせん断強さ,圧縮せん断強さ,はく離強さなどで表される。
 
 接着剤に用いる化合物
 接着剤には,天然樹脂のセルロース,合成樹脂の酢酸ビニル樹脂,エチレン・酢酸ビニル樹脂,塩化ビニル樹脂,エポキシ樹脂,ウレタン樹脂,スチロール樹脂,アクリル樹脂,ポリアミド樹脂,シアノアクリレート,合成ゴムのニトリルゴム,スチレン・ブタジエンゴム,クロロプレンゴムなど多種の高分子化合物が用いられる。
 
 接着層の変状について
 接着層にかかる応力は,接着面に対し垂直方向の応力がかかる場合を引張り,接着面に対し平行方向の応力がかかる場合を剪断(せんだん)という。
 接着層を人為的に破壊し,被着材を分離する行為をはく離といい,接着層の劣化などで自然に分離した状態のはがれと区分するのが一般的である。
 
 接着した製品(積層品)において生じるはく離やはがれは,一様には起こらず,接着剤の厚さ,積送品の寸法,接着剤の寿命,積送品の置かれる環境(応力,温度,湿度など)などの外的条件により左右される。破壊状態を観察する場合には,破壊箇所により次の様に分類される。
 積層品の接着接合部の破壊を層間はく離( delamination )といい,見掛け上接着層の内部に生じた破壊を凝集破壊( cohesion failure , cohesive failure ),接着剤と被着材との界面で生じた破壊を接着破壊( adhesive failure , adhesion failure :界面破壊ともいう)に分けられる。
 また,接着剤が健全で,見掛け上被着材内部で生じた破壊を被着材破壊( adherend failure )という。

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 【接着剤の分類】

 接着剤の種類は,その形態により,水性型接着剤,溶剤型接着剤,熱溶融型(ホットメルト)接着剤,反応型接着剤に分けられる。
 JIS K6800「接着剤・接着用語:Glossary of Terms Used in Adhesives and Adhesion 」では,
 水性接着剤( water borne adhesive ):“水を溶媒又は分散媒とした接着剤”
 溶剤型接着剤( solvent adhesive ):“有機溶剤を溶媒とした接着剤”
 ホットメルト接着剤( hot melt adhesive ):“溶融状態で塗付し,冷えると固まって接着する接着剤”
 反応型接着剤( reactive adhesive ):“化学反応によって硬化する接着剤”
と定義している。
 なお,一般的には,○○形接着剤と表記されるが,参考とした JIS 用語規格( 2006年版)では○○型接着剤と表記されているので,ここではを用いた。
 
 JIS K6800「接着剤・接着用語」に定義されている接着剤の分類に用いられる用語を次に紹介する。
 一液型接着剤( one-component adhesive , one-part adhesive ):他成分の添加なしに,適当な手段(光,熱,電子線など)によって硬化する接着剤。
 エマルジョン(エマルション)型接着剤( emulsion adhesive ):合成樹脂を水に乳化分散させた接着剤。ラテックス型接着剤ともいう。
 オリゴマー型接着剤( oligomer adhesive ):オリゴマー(低重合体)に架橋剤,分子鎖延長剤などを配合し,適当な手段(光,熱,電子線など)で硬化させる接着剤。
 加熱硬化型接着剤( heat setting adhesive , heat curing adhesive ):加熱によって硬化する接着剤。
 カプセル型接着剤( encapsulated adhesive ):特定成分を保護皮膜(マイクロカプセル)に内包し,適当な手段(圧力,熱など)によって皮膜を破壊するまでは安定性を保持できる接着剤。
 感圧型接着剤( pressure sensitive adhesive ):常温で圧力を加えるだけで接着する接着剤。
 嫌気性接着剤( anaerobic adhesive ):酸素の存在によって硬化が抑制され,酸素が遮断されると硬化する接着剤。
 構造用接着剤( structural adhesive ):長期間大きな荷重に耐える信頼できる接着剤。
 コンタクト型接着剤( contact adhesive ):両方の被着材に塗付し,溶媒を乾燥した後,タックのあるうちに軽い圧力ではり合わせることによって,高い初期接着強さを発現する接着剤。
 常温硬化型接着剤( room temperature setting adhesive , cold setting adhesive ):熱を加えないで硬化する接着剤。
 二液形接着剤( two component adhesive , two-part adhesive ):二つの成分(主剤と硬化剤又は架橋剤など)に分かれていて,使用直前に混合され,硬化する接着剤。
 発泡型接着剤( cellular adhesive , foamed adhesive , foaming adhesive ):見掛けの比重を下げ,同じ量で塗付面積を増大させたり,シール又は充てん機能を付与するためにガスや発泡剤を配合した接着剤。
 フィルム状接着剤( film adhesive ):熱,圧力,溶剤などによって接着させるフィルム状の接着剤。支持体のあるものとないものがある。
 ラテックス型接着剤( latex adhesive ):天然ゴム又は合成ゴムを水に乳化分散させた接着剤。

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 【接着剤試験方法】

 接着剤の品質,特性,性能評価に用いる JIS 規定の試験方法には次の物がある。
 JIS K 6831「接着剤−接着強さの温度依存性の求め方」,JIS K 6833-1「接着剤−一般試験方法−第1部:基本特性の求め方」,JIS K 6833-2「接着剤−一般試験方法−第2部:サンプリング」,JIS K 6833-3「接着剤−一般試験方法−第3部:構造用接着剤の基本性能一覧とその使用規格」,JIS K 6848-1「接着剤−接着強さ試験方法−第1部:通則」,JIS K 6848-2「接着剤−接着強さ試験方法−第2部:接着前の金属及びプラスチックの表面調整のための指針」,JIS K 6848-4「接着剤−接着強さ試験方法−第4部:金属,プラスチックを除く被着材の表面調整のための指針」,JIS K 6849「接着剤の引張接着強さ試験方法」,JIS K 6850「接着剤の引張せん断接着強さ試験方法」,JIS K 6851「接着剤の木材引張せん断接着強さ試験方法」,JIS K 6852「接着剤の圧縮せん断接着強さ試験方法」,JIS K 6853「接着剤の割裂接着強さ試験方法」,JIS K 6854-1「接着剤−はく離接着強さ試験方法−第1部:90度はく離」,JIS K 6854-2「接着剤−はく離接着強さ試験方法−第2部:180度はく離」,JIS K 6854-3「接着剤−はく離接着強さ試験方法−第3部:T形はく離」,JIS K 6854-4「接着剤−はく離接着強さ試験方法−第4部:浮動ローラ法」,JIS K 6855「接着剤の衝撃接着強さ試験方法」,JIS K 6856「接着剤の曲げ接着強さ試験方法」,JIS K 6857「接着剤の耐水性試験方法」,JIS K 6858「接着剤の耐薬品性試験方法」,JIS K 6859「接着剤のクリープ破壊試験方法」,JIS K 6860「接着剤の耐候性試験方法通則」,JIS K 6861「α−シアノアクリレート系接着剤の試験方法」,JIS K 6862「ホットメルト接着剤の溶融粘度試験方法」,JIS K 6863「ホットメルト接着剤の軟化点試験方法」,JIS K 6864「接着剤−構造用接着剤の引張せん断疲れ特性試験方法」,JIS K 6865「接着剤−高強度接着接合の衝撃条件下における動的割裂抵抗性試験方法−くさび衝撃法」,JIS K 6866「接着剤−主要破壊様式の名称」,JIS K 6867「接着剤−構造接着接合品の耐久性試験方法−くさび破壊法」,JIS K 6868-1「接着剤−構造接着のせん断挙動の測定−第 1 部:突合せ接合中空円筒ねじり試験方法」,JIS K 6868-2「接着剤−構造接着のせん断挙動の測定−第 2 部:厚肉被着材を用いた引張試験方法」などがある。

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 【粘着剤とは】

 粘着剤( pressure sensitive adhesive )は,一般的には接着剤の一種と考えられるが,JIS Z0109「粘着テープ・粘着シート用語:Glossary of terms used in pressure sensitive adhesive tapes and sheets 」では,
 “粘着の性質をもつ材料。例えば,エラストマーに粘着付与剤を配合して適切な粘弾性をもたせて作る。粘着剤は塗工前の形態別に溶剤系,水系,ホットメルト系などあり,種類は,ゴム系,アクリル系,シリコーン系などがある。”
と定義されている。
 
 粘着剤関連の試験・製品 JIS 規格
 JIS C 2107「電気絶縁用粘着テープ試験方法」,JIS Z 0237「粘着テープ・粘着シート試験方法」,JIS Z 1524「包装用布粘着テープ」,JIS Z 1528「両面粘着テープ」,JIS Z 1529「印刷用粘着フィルム」,JIS Z 1538「印刷用粘着紙」,JIS Z 1901「防食用ポリ塩化ビニル粘着テープ」
 
 関連用語
 JIS Z0109「粘着テープ・粘着シート用語」に規定される粘着剤の分類などに関連する用語を次に紹介する。
 塗工( coating ): 塗工機によって支持体に粘着剤,下塗剤又ははく離剤を塗ること。
 溶剤系粘着剤( solvent pressure sensitive adhesive ): 溶剤に溶解された粘着剤。塗工後乾燥により溶剤を蒸発させることによって粘着剤の性質を示す。
 水系粘着剤( water borne pressure sensitive adhesive ): 水に分散又は溶解された粘着剤。塗工後水分を蒸発させることによって粘着剤の性質を示す。
 ホットメルト系粘着剤( hot melt pressure sensitive adhesive ): 無溶剤形の粘着剤。熱によって溶融して塗工可能となり,塗工後常温になると粘着剤の性質を示す。
 カレンダー形粘着剤( calendered pressure sensitive adhesive ): 無溶剤形の粘着剤。カレンダーによって塗工する粘着剤。
 化学反応形粘着剤( chemical reaction pressure sensitive adhesive ): 塗工後化学反応により高分子化して,適切な粘弾性をもち,粘着剤化するもの。例えばアクリル系オリゴマーを重合して作られる。
 ゴム系粘着剤( rubber pressure sensitive adhesive ): ゴム(天然ゴム,合成ゴム)に粘着付与剤を混ぜ合わせて粘着剤としたもの。溶剤系,水系,ホッ トメルト系及びカレンダー形がある。
 アクリル系粘着剤( acrylic pressure sensitive adhesive ): アクリル系ポリマーを主体とする粘着剤。アクリル酸エステル,メタクリル酸エステルが主に使用される。溶剤系,水系,ホットメルト系及び化学反応形がある。
 シリコーン系粘着剤( silicone pressure sensitive adhesive ): シリコーンゴムとシリコーンレジンからなる粘弾性体を主体とする粘着剤。通常架橋させて使用される。
 硬化形粘着剤( curable pressure sensitive adhesive ): 使用の際に粘着剤が架橋して硬化するもの。硬化の方法は熱,紫外線,電子線,吸湿,嫌気などがある。
 非硬化形粘着剤( non-curable pressure sensitive adhesive ): 粘着剤が使用の前後において同じ粘弾性を示し,架橋による硬化がないもの。一般的な粘着剤はこの形のものである。
 
 被着体( adherend , substrate ): 粘着テープ又は粘着シートが接着される物体。
 粘着テープ( pressure sensitive adhesive tape ): 支持体の片面又は両面に粘着剤を塗工し,ロール状に巻いた比較的幅の狭いものの総称で,使用時には巻き戻しが容易であるもの。
 両面粘着テープ( pressure sensitive adhesive double coated tape ): 支持体の両面に粘着剤を均一に塗工したもの,又は粘着剤を均一なフィルムにしたもの。
 粘着シート( pressure sensitive adhesive sheet ): 支持体の片面又は両面に粘着剤を塗工し,ロール状に巻いた比較的幅の広いもの又は板状のものの総称。
 印刷用粘着シート( pressure sensitive adhesive sheet for printing, label stock ): 支持体の片面に粘着剤を塗工し,はく離ライナーをはり合わせ,ロール状に巻いたもの又は板状のもの。表面に図,文字などを印刷して用いる。
 粘着ラベル( pressure sensitive adhesive label ): 装飾,表示又は封かんを目的として,主に印刷用粘着シートに印刷し,任意の形状に打ち抜いたもの。
 
 保持力( holding power , shear adhesion ): 粘着テープ又は粘着シートを被着体にはり,長さ方向に静荷重をかけたとき粘着剤がずれに耐える力。一般に一定時間にずれる距離,又は被着体から落下する時間で表す。
 凝集力( cohesion , cohesive strength ): 粘着テープ又は粘着シートの粘着剤が内部破壊に耐える力。
 タック( tack , quick stick ): 粘着剤の主要性質の一つで,軽い力で短時間に被着体に粘着する力。
 樹脂化( freezing ): ゴム系粘着剤の粘着テープ又は粘着シートを長期間使用したとき,粘着剤が硬くなること。その結果,容易にはがせなくなったり,はがした跡が汚れる。

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