腐食概論鋼の腐食

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 鋼腐食の基礎

 鋼材の選定

 鋼構造物の設計時には,各部位,部材に求められる強度特性に加えて,施工性維持管理面をも考慮した鋼材の選定が行われる。
 例えば,道路橋では「道路橋示方書・同解説 1共通編 2鋼橋編」において,鉄道橋では「鉄道構造物等設計標準・同解説(鋼・合成構造物)」において,使用できる材料の選定と適用方法などが規定されている。
 
 施工性とは,施工時の溶接性や冷間曲げに対する靭性などである。維持管理面では,架設環境の腐食性を考慮した鋼材の選定をいい,具体的には耐候性鋼(atmospheric corrosion resisting steel , weathering steel)めっき鋼材(coated steel)の適否の検討をいう。
 
 構造物用炭素鋼として現在の主流は SM材(溶接構造用圧延鋼材;rolled steels for welded structure)SMA材(溶接構造用耐候性熱間圧延鋼;hot-rolled atmospheric corrosion resisting steels for welded structure)である。
 材料の選定では,概略で主要部材(primary member)に用いるか二次部材(secondary member)に用いるかで分けられる。
 主要部材とは,部材の一部が破壊されることで,構造物の健全性に著しい影響を与え,構造物全体の崩壊に結びつくような部材をいい,鋼橋の場合は,主桁,横桁,縦桁,支点上の補剛材などである。
 二次部材とは,仮に部材の一部が破壊しても構造物の健全性に直接影響の少ない部材をいい,鋼橋の場合には,あや材,対傾材,橋門構,中間補剛材,水平補剛材,防音工などがある。
 
 主要部材に用いる場合は,鋼材の溶接性非破壊検査精度などを考慮しつつ,板厚みで材質区分する例が多い。例えば,先に示した示方書や設計標準などでは,SM490材を用いる場合は,板厚み 9~16mm の場合に SM490B を,25~75mm の場合には SM490C が推奨されるなどである。
 また,二次部材で,溶接(welding)せずにボルト接合(bolt joint)する場合は,SS材(一般構造用圧延鋼材;rolled steels for general structure)を用いることもできるとされている。
 
 下表に,SM材について,JIS G3106「溶接構造用圧延鋼材」に規定される規格値を示す。


溶接構造用圧延鋼材(SM材)の例
  記号    種類    厚さ 
  mm 
化学成分(%) 引張強さ
N/mm2
C SiMn P S
  SM400    A    ≦50    ≦0.23    ―    C×2.5≦    ≦0.035    ≦0.035    400~510 
  50<t≦100    ≦0.25 
  B    ≦50    ≦0.20    ≦0.35    0.60~1.50 
  50<t≦60    ≦0.22 
  C    ≦50    ≦0.18 
  SM490    A    ≦50    ≦0.20    ≦0.55    ≦1.65    490~610 
  50<t≦60    ≦0.22 
  B    ≦50    ≦0.18 
  50<t≦60    ≦0.20 
  C    ≦60    ≦0.18 
  YA, YB    ≦50    ≦0.20 
  SM520    B,C    ≦50    520~640 
  SM570    ≦40    ≦0.18    ≦1.70    570~720 

 【参考】
 鉄道構造物等設計標準(design standards for railway structures)
 鉄道設備を構成する構造物(鋼構造,コンクリート構造,土構造,トンネル構造,基礎構造など)の設計に関連した法令や基準の一つ。
 道路橋示方書(specifications for highway bridges)
 日本における橋や高架の道路等に関する技術基準である。国土交通省が定め,共通編・鋼橋編・コンクリート橋編・下部構造編および耐震設計編の5編で構成される。
 溶接接合(welding)
 溶接には圧接,融接,ろう接があるが,一般には融接のことをいう。
 圧接とは,接合部を加熱して柔軟にし,圧力を加えて接合させる。鉄筋の継手にも使われる。
 融接とは,ガスまたはアークなどで接合部を溶融して接合させる。鋼構造など一般的に使われる。
 ろう接とは,融点の低い金属を溶融添加して接合させる。はんだ付け,ろう付けに用いられる。

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