腐食概論:鋼の腐食
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土壌腐食の基礎(土壌に埋設された金属の腐食)
土壌について
土壌腐食(soil corrosion)に影響する因子には,土壌組成,含水率,通気性,pH,溶解成分,バクテリア等の微生物,及び電気抵抗率(導電率)などである。これに関しては,次項の【ミクロ腐食とは】で紹介する。
ここでは,基本となる土壌の分類,土壌に含まれる水の分類など,土壌を扱う際の基礎情報を紹介する。
【土壌の分類】
土壌の基本的な分類は,土粒子の大小によって行われる。
粒子の大きい順に,礫(れき;gravel),粗砂(coarse sand),細砂(fine sand),シルト(silt),及び粘土(clay)に大別される。
国際土壌化学連合(The Integrated Undersea Surveillance System ,IUSS)の分類では,粒径 2mm以上を礫,200μm~2mmを粗砂,20μm~200μmを細砂,2μm~20μmをシルト,2μm未満を粘土としている。
実際の土壌は,これらの混合物である。混合物の状態を評価するため,日本の工学分野では普遍的に採用されている国際土壌学会法とは別に,日本の実情に即した基準として地盤工学会(旧土質学会)の定めた JGS 0051 「地盤材料の工学的分類方法(日本統一土質分類法)」を用いる場合が多い。なお,日本の農耕地の土壌分類には,農林水産省所管の研究機関が開発した「農耕地土壌分類」が適用されている。
この中で,粒径の多きい礫を除く,砂,シルト,粘土の成分比を三角座標で表した土性三角図(soil texture triangle)で分類(三角座標分類ともいわれる)した名称も一般的に用いられている。例えば,砂 20~50%,シルト 30~50%,粘土 0~20%の土壌は,ローム(loam)と称される。
余談であるが,75mm~256mmまでを石(cobble),256mm以上を岩塊(boulder)といい土質材料とは区別され,岩石材料として扱われる。
【土壌中の水の分類】
土壌中の水は,その存在状態によって次のように分類される。
自由地下水(free ground water);地表に最も近い不透水層の上に存在する地下水をいう。その表面が地下水面となる。
重力水(gravitational water);重力の作用を受けて,土中の間げき中を自由に流れる水をいう。
毛管水(capillary water);毛管現象(capillarity , capillary phenomenon),すなわち水の表面張力(surface tension)の作用で土の毛管や間げきに保たれた水分をいう。毛管水は,表面張力と重力の作用を受けて移動する。このため,降雨によるがけ崩れや道路の路床あるいは路盤の強さにも影響を与える。
吸湿水(hygroscopic water);水蒸気で飽和している空気中に土壌を置き,平衡状態に達したときの土壌粒子の表面に吸着されている水をいう。
【物性を示す用語】
土壌の物性は.土粒子,水,空気の占める割合によって変わる。物性値の定義は次のとおりである。
乾燥密度(dry density):土粒子のみを考慮した密度=土粒子の質量/土塊の体積
湿潤密度(wet density):間隙水を含めた密度=土塊の質量/土塊の体積
含水比(water content,%):=100×水の質量/土粒子の質量
【参考】
土壌腐食(soil corrosion
読み「どじょうふしょく」,土壌中で起きる金属の腐食。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
土質の違い,通気性の違いなどによるマクロ腐食電池形成による腐食,微生物の影響を受けた腐食などがある。人工的な環境として,電車線路や高圧線からの漏れ電流による埋設管などの局部的腐食を特に迷走電流腐食(電食)(stray current corrosion)と呼ぶ。
マクロ腐食電池(macro-galvanic cell)はマクロセルともいわれ,アノードとカソードがはっきりと区別できる程度の大きさをもち,その位置が固定されている腐食電池をいい,異種金属接触電池,通気差電池などがこれに属する。【JIS Z 0103「防せい防食用語」】
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