腐食概論:鋼の腐食
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大気腐食の基礎
大気汚染物質の一つであった硫黄酸化物の推移
かつての日本では,硫黄化合物の濃度が高く,工場環境(industrial atmosphere)が腐食の激しい環境として区分されていた。しかし,現在は,後述するように工場地帯(industrial area)の環境が改善され,腐食環境区分として意味をなさなくなっている。現在の日本では,温泉地帯などの特殊な環境を除き,鋼腐食に影響する成分として,硫黄化合物より塩化物(cloride)が卓越している。
【大気汚染防止法の効果】
1960年代に,深刻な公害問題として,工場地帯の環境が問題視され,1968年6月に大気汚染防止法(Air Pollution Control Act)が制定された。しかし,この法律でも大気汚染(aerial environment pollution)の改善が見られなかったため,1970年に大幅改正が行われ,都道府県による上乗せ規制が設けられた。これにより,大気汚染の改善が見られるようになった。参考資料1)では,工業地帯の腐食の激しいことで知られていた広島県岩国地区において,各種金属の暴露試験と同時に,環境計測(JIS Z 2382「大気環境の腐食性を評価するための環境因子の測定」準拠)も実施している。
下図には,参考資料1)に掲載されるデータの中から,月平均の硫化水素(H2S)付着量(酢酸亜鉛ろ紙法)の推移を示す。図からわかるように,1971年から1972年に付着量が劇的に減少している。
【参考資料】
1):長沢,村島,青木,田中,片山:「工場環境における架線材料の耐食性」鉄道総研報告vol.3,No.9(1989.9)
【参考】
大気汚染防止法(Air Pollution Control Act)
法律第97号 第一条(目的)
この法律は、工場及び事業場における事業活動並びに建築物等の解体等に伴うばい煙、揮発性有機化合物及び粉じんの排出等を規制し、水銀に関する水俣条約(以下「条約」という。)の的確かつ円滑な実施を確保するため工場及び事業場における事業活動に伴う水銀等の排出を規制し、有害大気汚染物質対策の実施を推進し、並びに自動車排出ガスに係る許容限度を定めること等により、大気の汚染に関し、国民の健康を保護するとともに生活環境を保全し、並びに大気の汚染に関して人の健康に係る被害が生じた場合における事業者の損害賠償の責任について定めることにより、被害者の保護を図ることを目的とする。
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