腐食概論:鋼の腐食

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            【暴露試験例】

 同一時期に同一条件で 10年を超える暴露試験例を紹介する。この試験は,「アルミニウムハンドブック 第6版」に掲載されるパナマ運河地帯の海洋環境,内陸環境,海浜環境で 16年間実施した例である。
 パナマ運河は,中米のカリブ海と太平洋を結ぶ約80kmの運河で,その約 1/3ほどが湖(Gatun湖)で構成されている。
 暴露環境:海浜大気(カリブ海側Limon Bay),内陸大気(Limon Bayから 8km内陸),海水中(Naos島),干満帯(Naos島),淡水中(Gatun湖:軟水)

【暴露試験結果】


パナマ運河地帯 16年暴露試験片の板厚み平均減少量(μm)
出典:社)日本アルミニウム協会編「アルミニウムハンドブック」第6版(2001)p.63
 試験金属   海浜大気   内陸大気   海水中   干満帯   淡水中 
  炭素鋼(C:0.25%)    402    290    1222    1148    715 
  低合金鋼(Corten鋼)    204    108    2045    1252    620 
  ステンレス鋼(SUS316)    0    0    *    *    0 
  アルミニウム合金(1100)    3    2    26    15    * 
  銅(99.9%)    19    7    152    33    25 
  亜鉛(99.5%)    41    14    208    185    111 
*:孔食が激しく,意味のある侵食度を計算できない。

 低合金鋼は,いわゆる耐候性鋼で,乾湿の繰り返される大気環境では炭素鋼の半分以下の腐食量であるが,塩水との濡れ時間が長い海水中や干満帯では腐食量が炭素鋼より多くなっている。
 ステンレス鋼は,何れの環境でも全面腐食には至らないが,塩化物イオンを多量に含む海水中及び干満帯の暴露試験片で孔食の発生が顕著になっている。
 アルミニウム合金,銅及び亜鉛は,鋼に比較すると著しく腐食量が小さい。何れの金属も塩化物イオンを含む水と接触する環境で,大気腐食の 5倍以上の腐食量になっている。

 次の表には,同試験片で観察された孔食(又は,激しい凹凸)の平均深さを示す。

パナマ運河地帯 16年暴露試験片の平均孔食深さ(mm)
出典:社)日本アルミニウム協会編「アルミニウムハンドブック」第6版(2001)p.63
 試験金属   海浜大気   内陸大気   海水中   干満帯   淡水中 
  炭素鋼(C:0.25%)    1.30    0.56    2.29    1.68    1.83 
  低合金鋼(Corten鋼)    0.46    0.46    2.51    1.52    2.24 
  ステンレス鋼(SUS316)    <0.13    <0.13    6    1.40    <0.13 
  アルミニウム合金(1100)    <0.13    <0.13    0.43    0.99    2.49 
  銅(99.9%)    <0.13    <0.13    0.79    <0.13    <0.13 
  亜鉛(99.5%)    <0.13    <0.13    1.57    0.74    0.45 

 炭素鋼及び低合金鋼では,平均腐食量(侵食量)の約2倍の深さの凹凸が観察されている。
 ステンレス鋼では,海水の影響を受ける環境で著しい孔食に至っている。特に海水中では炭素鋼の2倍以上の深い孔食に至っている。
 アルミニウム合金では,海水より淡水中で深い孔食が観察されている。
 
【暴露環境について】
 暴露試験結果の理解を助けるため,暴露地の環境を,日本で腐食の激しいことで知られる宮古島の気象条件と比較する。
 パナマ運河地帯の気温は,年間を通じ最低気温 20℃以上,最高気温 30℃以上と日本の5月から9月の宮古島程度である。
 パナマ運河地帯は,雨季と乾季が明確で,雨季( 5月~11月)の降水量は 1,700mm程度と台風シーズンの降雨を除いた宮古島と同程度である。
 パナマ運河地帯の相対湿度は,乾季で 70%RH以下の日が多く,雨季には 80%RHを超える日が多い。宮古島では,年間を通じ 70%RH以上で春から秋にかけては 80%RHを超える日が多い。
 パナマ運河地帯の海水温は,年間を通じ 25~30℃で,宮古島では冬季の21℃程度を除き 25~30℃である。
 このように,パナマ運河地帯の気象条件は,金属の腐食に対し,宮古島と同等程度,若しくは,それ以上の影響を与えると推定される。

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