腐食概論:腐食の基礎

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 鋼の腐食とは

  【基本用語の解説】

 JIS規格などに採用される主な用語は,【金属・材料関連用語】【腐食防食関連用語】に記載する。
 次に示す用語は,腐食関連の参考書や文献等で使用される用語の中で,意味を誤解され易いものを中心に紹介する。
 
「年を意味する記号 “a”」
 過去の文献等では,1年を記号 y(又は yrや year)で表わすものが多い。これらは暦年を意味する。暦年の表記では,閏年があるなど単位として不適切とされ,近年では,平均太陽年(tropical year:暦表年や回帰年などともいう)を示す a(又はatropを用いることが推奨されている。aは,ラテン語のannum(アンヌム:年)の略である。
 天文学ではユリウス年を用い,単位は a(又はaJ)で平均太陽年と同じ記号を用いるが,定義が若干異なるため,1ユリウス年は約1.000021383平均太陽年に相当する。
 JIS Z 8202-1 2000「量及び単位−第1部:空間及び時間」附属書B(参考)「特に換算率に関し参考として示すその他の SI 以外の単位」においても,年,回帰年の記号を a, atropとしている。なお,1回帰年とは,太陽が平均春分点を引き続き 2 回通過する間の時間間隔と規定している。この値は,定数ではなく,100年の間に約0.53秒変化する値である。

「腐食速度」(corrosion rate)
 厳密には,金属の腐食反応の速度を意味する。金属表面における腐食反応については,腐食の基礎【腐食の開始と継続】に示したように,腐食環境の条件(濡れ状況,温度,酸素濃度など),金属表面の立体的変化,腐食生成物の吸着など,腐食反応機構以外の影響を強く受け時々刻々変化(変化が曲線的)する。
 例えば,一般的な T時間経過した金属の質量変化量(W)を計測し,質量変化量を時間(T)除したW/T値は,時間平均の質量変化量でり,ある時点の変化速度,すなわち厳密な意味での腐食速度(変化曲線の微分で得られる勾配)ではない。
 従って,ある環境における金属の腐食性評価や一般的に実施する腐食試験(塩水噴霧,複合サイクル試験,屋外暴露など)の結果は,次に示す腐食度侵食度で表記するのが望ましい。
 なお,化学反応速度の単位は,単位体積当たり,単位時間当たりのモル数(mol・m-3・s-1)で表わすのが一般的である。金属表面の反応では単位面積当たり・単位時間当たりで示される。

「腐食度」(corrosion rate)
 定められた条件下に一定期間暴露し,その間の金属の質量減少量を計測し,表面積と暴露期間で除した値を腐食度という。
 この値は,暴露期間中に時々刻々変化する腐食速度(金属の腐食反応速度)とは異なる。また,同じ条件の試験であっても,暴露期間が異なると腐食度も異なる。単位は,単位面積当たり,1年(平均太陽年)当たりのグラム数(g・m-2・a-1)で表わす。
 大気暴露試験で得られる腐食度は,暴露開始時期の違い(例えば春開始と秋開始など)の影響も受ける。このため,腐食度で腐食性評価を行う場合には,暴露環境条件に加えて,暴露開始時期,暴露期間(暴露1年目や暴露X-Y年など)などの情報を併記するのが望ましい。

「侵食度」(penetration rate)
 侵食度は,求めた腐食度から単位時間当たりの厚み減少量μm・a-1)に換算した値で,金属の厚み方向への影響を直感的に理解し易いため広く用いられている。
 一般には,腐食度を金属の密度で除して得られる厚みの平均減少量である。腐食度と同様に,暴露期間で値が変わるので注意が必要である。
 侵食度は算術平均値であり,全面の均一な腐食の場合は実態と整合するが,局部腐食では的確な評価ができない。従って,不均一な腐食が甚だしいケースでは,侵食度を用いるべきではない。
 なお,過去の文献等では,侵食度というべきところを腐食度と記すものも少なくないので,使用する単位で判断する必要がある。

「水の分類」
 腐食分野の文献等では,水を次のように分類する例が多い。
 塩分濃度による分類淡水(fresh water:0.05%以下),汽水(きすい,brackish water:0.05~3.0%),塩を含んだ水(saline water:3.0~5.0%),塩水(brine:飽和に近い又は飽和塩水5.0%以上)
 存在場所による分類海水陸水
 陸水とは,地球上に存在する水のうち,海水を除いたものの総称。従って,陸水には,湖沼,河川,地下水,温泉,氷雪などが含まれる。一般的には淡水が多いが,乾燥地帯や南極大陸などに塩分濃度の高い水がある。また,温泉水,鉱水など種々の成分を含む水もある。

「電食」(stray current corrosion)
 誤用の多い用語である。厳密には,土壌中に埋設された金属が,外部電源からの漏れ電流によって腐食する“迷走電流腐食(stray-current corrosion)”について用いるのが正しい。
 誤用の多い例として,異種金属接触腐食(galvanic corrosion),すなわちガルバニック腐食を指して用いられることがある。
 余談であるが,機械分野や電気分野では,ある種のアーク損傷を電食と呼ぶこともある。

「ミクロ電池(セル)腐食」(micro-cell corrosion)と「マクロ電池腐食」(macro-cell corrosion)
 ミクロ電池腐食(俗にミクロ腐食ということもある)は,金属表面の微視的な範囲にアノード部とカソード部が発生し,これが移動しながら腐食が進行するため,均質な全面腐食(均一腐食ともいう)に至る腐食である。
 マクロ電池腐食(俗にマクロ腐食ということもある)は,アノード部とカソード部が“ほぼ固定”され,局部的な腐食が進行する現象で,異種金属接触腐食,濃淡電池腐食(concentration cell corrosion),通気差電池腐食(differential aeration corrosion)などの局部腐食現象で用いる。

「孔食」(pitting corrosion)
 JIS Z 0103(防せい防食用語)の定義では金属内部に向かって孔状に進行する局部腐食と定義されている。しかし,その大きさについての明確な定義はなく,主観的な表現が多く,人により意図する程度が異なっている。
 一般には,入り口の大きさ(直径 W )と深さ( d )との関係が d > Wの局部腐食をいう場合が多い。しかし,d ≦ Wのものも“浅い孔食”,“皿状孔食”などと表現する技術者もいる。

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