腐食概論鋼の腐食

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 鋼腐食の基礎

 キャビテーション・コロージョン(空洞現象と腐食の相乗効果)

 キャビテーション(cavitation;空洞現象
 金属表面に接触する液体の圧力が繰返し激しく変動する場合に,金属表面で高速での微細な気泡の発生・崩壊が生じる現象をいう。

 気泡の破壊エネルギーがある一点に集中することで金属表面に損傷を与える。この現象をキャビテーション損傷(cavitation damage)という。  
 キャビテーション損傷により,金属表面の不動態皮膜(passive film)などの保護皮膜が破壊され,新鮮な金属面の露出により腐食が進む。この現象をキャビテ-ション・コロージョン(cavitation corrosion)という。
 
 損傷事例には,ポンプ(pomp)のロータ(rotor,回転体),プロペラ(propeller),タービン(turbine)のブレード,ディーゼルエンジン(diesel engine)のシリンダー(水冷側)などの機械部品で観察される。
 対策としては,気泡の発生を避けるような設計変更,表面に弾性体を被覆する,腐食抑制剤を用いるなどがある。
 【参照】
 キャビテーション損傷(cavitation damage)
 キャビテーション損傷とは,金属表面でこれに接触する液体の圧力の繰返し変動によって気泡の発生,崩壊が起こることによって金属に生じる損傷。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 腐食生成物(corrosion product)
 腐食によって生成した物質。通常は固体物質を指し,金属表面に付着するか又は環境中に分散して存在する。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 (rust)
 読み「さび」,銹とも書かれる。錆は,金属の表面で,金属と環境因子(酸素や水など)との酸化還元反応(腐食という)で生成した水不溶性又は難溶性の腐食生成物(酸化物,水酸化物,炭酸塩,硫化物,塩化物など)をいう。
 腐食生成物は,その見た目から赤錆(酸化鉄(Ⅲ),鉄含水水酸化物,酸化銅(Ⅰ)など),黒錆(酸化鉄(Ⅱ),四三酸化鉄,酸化銅(Ⅱ),硫酸銀など),緑青(塩基性炭酸銅,塩基性硫酸銅,硫酸銅など),白錆(塩化銀,塩基性炭酸亜鉛,酸化アルミニウム,酸化スズなど)などともいわれる。
 不動態被膜(passive film)
 不動態化(passivity)で生じた金属表面に腐食作用に抵抗する酸化被膜をいう。
 不動態(passive state)とは,標準電位列で卑な金属であるにもかかわらず,電気化学的に貴な金属であるような挙動を示す状態。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 本来,ひ(卑)である電極電位を示し,不安定であるべき金属があたかも貴である金属のように振る舞う状態。この状態では,電極電位も貴の値を示す場合が多い。【JIS H 0201「アルミニウム表面処理用語」】
 一般的には,金属をとり囲む環境の影響で,電気化学列で卑な金属(腐食しやすい金属)が,表面を酸化物で覆われるなどして本来の活性を失い,貴な金属のように挙動する状態を不動態といい,この状態になることを不動態化(passivity)と理解されている。
 不動態化は,酸化力のある酸にさらされた場合,陽極酸化処理によっても生じる。不動態となる酸化被膜(不動態被膜)の典型的な厚みは,数 nm である。
 すべての金属が不動態となるわけではなく,不動態になりやすいのは,アルミニウム,クロム,チタンなどやその合金である。

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