腐食概論:鋼の腐食

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     【結露の発生 (1)】 ☞ 【結露の発生 (2)】

 物体の表面が結露(dew formation)が生じるか否かは,物体の表面温度と気温との温度差,及び外気の相対湿度(relative humidity)との関係で決まる。
 【放射冷却】において,電磁波の放射で地表面や地表面を覆う物体の温度が低下し,この結果として地表面周辺の気温が低下することを示した。
 【絶対湿度】で,大気中の水蒸気量が変わらないときに,気温の低下で相対湿度が上昇することを説明した。
 構造物の結露では,地表面の温度に影響される気温変化,橋梁等の屋外構造物表面温度の変化が問題となるので,それぞれを分けて解説する。

 【地表面の温度】
 地表面の温度については,参考資料1)に記載される具体的な計測例が参考になる。参考資料1)では,1999年の 2月7日 12時30分から 14時30分と 7月13日 12時20分から 14時に,航空機を用いて沖縄県本島北部の地表面を熱画像式赤外線放射温度計で計測している。
 2月7日の測定では,市街地 28.6℃,砂地 27.9℃,赤土 25.8℃,草地 25.2℃,農耕地 23.60℃,海 21℃,森林 19.6℃,ダム湖 17.3℃であった。
 7月13日の測定では,市街地 46.40℃,砂地 44.6℃,赤土 39.5℃,草地 38.3℃,農耕地 36.3℃,森林 32.7℃,ダム湖 31.3℃,海 30℃であった。
 地表面の温度は,冬季,夏季によらず,市街地>砂地>赤土>草地>農耕地≫森林,(海),ダム湖の順であった。市街地とダム湖では,冬季に約 11℃,夏季で約 15℃もの温度差がある。
 これらのことから,地表面の温度は地表面を覆う物質の影響を強く受けることを意味する。
 
 参考資料2)によると,地表面上の高さ 1m の気温に影響するのは,地表面の広さ数百メートル以上の地表面温度である。従って,物体の温度と気温を比較する場合には,その周辺の環境が重要であることが分かる。
 例えば,都市部の構造物を考慮する場合には,コンクリートとアスファルトで覆われた地表の影響を,地方都市,田園,山間に位置する構造物においては,草地,農地や森林で覆われた地表の影響を,近くに,河川,湖沼がある場合には,それらの影響を想定しなければならない。

 【物体の温度変化】
 物体の温度変化については,【放射冷却】で解説した電磁波(光)の放射率(emissivity)に加えて,物体の熱容量(heat capacity),及び熱伝導(thermal conduction)を,さらに,物体が水を含む場合には水の気化熱(heat of vaporization)をも考慮しなければならない。
 参考資料2)では,“物体の日射による温度上昇,放射冷却による温度低下の傾向は,物体の熱容量と熱伝導率の積が指標となる。”と指摘している。
 すなわち,物体の熱容積と放射率が同一の場合は,同じ熱伝導率なら熱容量が大きい物質ほど温まり難く,冷め難い。同じ熱容量なら,熱伝導率が大きいものほど,表面温度の変化が遅いことになる。
 一例として,表面を覆う物質別に,昼間の温度変化を実測した例(参考資料3)から抜粋)を下図に示す。

表面状態別の温度変化の例

表面状態別の温度変化の例
出典:参考資料 3)

 日出後の温度上昇は,アスファルト>コンクリート>裸地>芝生の順に早く,
 南中時を過ぎてからの温度低下裸地>アスファルト>コンクリート>芝生の順に早い結果になっている。
 アスファルト,コンクリート
 赤外線の放射率はアスファルト(0.95以上)>コンクリート(0.9程度),熱容量はアスファルト(1.4×106Jm-3K-1)<コンクリート(2.1×106Jm-3K-1),熱伝導率は(0.7Wm-1K-1)<コンクリート(1.7Wm-1K-1)である。
 アスファルトはコンクリートより赤外線を効率よく熱に変換し,熱容量,熱伝導率とも小さいので,太陽光を受けているときの表面温度上昇が早く,放射冷却も早い結果になったと考えられる。
 裸地
 放射率は 0.95前後とコンクリートとアスファルトの中間程度,熱容量は,土の比熱(0.2cal g-1K-1程度)と比重(約 2.6)から,単位容積当たりに換算すると約 2.2×106Jm-3K-1となりコンクリートと大差はない。
 熱伝導率はローム質土壌で 1Wm-1K-1程度とコンクリートより小さいがアスファルトより大きい。
 これらの値を比較すると,裸地の表面は,コンクリートより放射率が高く,熱伝導率が小さいので温まり易く,冷め易いと考えられる。アスファルトに対しては,放射率が小さく,熱容量と熱伝導率が大きいので温まり難く,冷め難い冷めやすいと考えられる。
 しかし,図では,3者の中では最も温まり難く,冷め易い結果になっている。これは,土壌に含まれる水の蒸発熱の影響と考えらる。
 芝生
 芝の放射率,熱容量,及び熱伝導の値は不明であるが,一般的な植物の葉が 80%以上の水を含んでいることから,水の熱容量(4.18×106Jm-3K-1),熱伝導(0.57Wm-1K-1)に近く,熱容量 3.5~4.0×106Jm-3K-1熱伝導 0.27~0.57Wm-1K-1といわれている。
 放射率を天然木の 0.9~0.95と同等と考えた場合,熱容量は大きいが,熱伝導が小さく,葉の容積も小さいので,容易に温度が上昇すると考えられる。しかし,図では,温度上昇が最も小さい結果となっている。これは,植物固有の光合成と水の蒸散作用などの生物反応の影響によると考えられる。
           
 【参考資料】
 1)木村玲二,石島英,横山拓哉:“赤外線放射温度計による地表面温度と熱収支モデル計算による地表面温度の比較”,天気Vol.48, No.6 pp.371-382(2001.06)
 2)近藤純正:“地表面に近い大気の科学―理解と応用―”,東京大学出版会,p.324(2000)
 3)近藤純正:“水環境の気象学-地表面の水収支・熱収支-”,朝倉書店,p.348(1994)
 
 【参考】
 結露(dew formation)
 露点以下の温度で水蒸気が凝縮すること。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 水蒸気を含んでいる空気が冷却して露点以下になり,水蒸気が液化して露を結ぶ現象。【JIS H 0201「アルミニウム表面処理用語」】
 熱伝導(thermal conduction)
 伝熱過程(熱伝導,対流,及び熱放射)の 1 種で,物質の移動を伴わず,物質間の接触個所を通して,高温側から低温側へ温度勾配を駆動力として熱が移動する現象を熱伝導という。伝熱への熱伝導の寄与は,気体や液体では小さく,固体で大きい。
 熱伝導では,運動エネルギーが格子振動や伝導電子の振動を介して移動する。
 格子振動が卓越するダイヤモンドを除く物質では,伝導電子による寄与の方が大きいので,金属は,半導体や絶縁体よりも熱伝導性が良い。しかし,非常に硬いダイヤモンドは例外で,格子振動を介した熱伝導性の寄与が非常に大きく,金属より熱伝導性が良い。
 熱容量(heat capacity)
 一定圧力下で,ある物体の温度を1度上げるのに要する熱量で,単位はJ・K(ジュール毎ケルビン)である。
 1モルの物質の熱容量については,モル熱容量(molar heat capacity)といい,単位はJ・mol-1・K-1である。
 単位質量の物質を単位温度上げるのに必要な熱量は,比熱容量(specific heat capacity)といい,単位はJ・g-1・K-1で表わされる。
 気化熱(heat of vaporization)
 蒸発熱(heat of evaporation)ともいい,液体が気体に相転移(蒸発)するときに吸収するエネルギー(潜熱)をいう。
 蒸発(evaporation)とは,液体が気体に変わる現象をいう。気化(vaporize)ともいい,熱を与え続けると,蒸発と共に液体の温度も上昇するが,ある温度に至ると熱を与えても温度の上昇が止まり,容器界面などからも激しく蒸発し始める。この温度を沸点(boiling point)という。
 潜熱(latent heat)は,転移熱(heat of transition)といもいい,物質が温度を変えないで,相転移するために吸収または発生する熱をいう。すなわち,相転移が進行中の温度が一定のままとなる。例えば,融解熱,凝固熱,凝縮熱,蒸発熱,昇華熱などがある。

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