腐食概論鋼の腐食

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 大気腐食の基礎

 絶対湿度とは

 相対湿度(relative humidity)は,その気温の飽和水蒸気圧に対する大気の水蒸気圧比率を示すものである。このため,相対湿度からは大気に含まれる水蒸気の絶対量直感的に知ることはできない。
 そこで,大気中の水蒸気量を直接示すために,絶対湿度(absolute humidity)が用いられる。
 絶対湿度という場合には,一般的には,大気の一定体積(1m3)当たりの水蒸気の量(g)で表わす容量絶対湿度 VH(volumetric humidity)で表される。
 日本の空調関係の業界では,利便性を考慮して,乾燥空気 1kg当たりの水蒸気の量(g)で表わす混合比(mixing ratio , humidity ratio)ともいわれる重量(質量)絶対湿度 SH が用いられることがある。

 ある容積 Va(m3)に含まれる水蒸気の質量を Mw(g)とすると,容量絶対湿度 VH(g/m3
   VH = Mw/Va
で定義される。
 
 理想気体の状態方程式(ideal gas law)は,
   P・V=n・R・T*
   ここで,P:圧力,V:体積,n:物質量,R:気体状数,T*:熱力学温度(絶対温度 K:≒273.15+T(℃))
で表わされる。
 この関係から,容量絶対湿度 VH(g/m3は,
   VH = E・217/(T+273.15) = (RH/100)・Es(T)・216.7/(T+273.15)
   ここで,E:水蒸気圧,T:温度(℃),RH:相対湿度(=100×E/Es(T),Es(T):飽和水蒸気圧(=6.1078・exp{ 17.27T/(T+237.3)})
の関係が得られる。
 すなわち,相対湿度 RH気温 T を計測することで,容量絶対湿度を求めることができる。

 湿度の温度依存性

 下図左に,飽和水蒸気の状態,すなわち相対湿度 RH=100%のときの絶対湿度の気温依存性を,下図右には,同一絶対湿度のときの気温と相対湿度の関係を示す。

絶対湿度の温度依存性

絶対湿度の温度依存性

 左図から,相対湿度100%のときの絶対湿度は,気温の増加と共に加速度的に増加することが分かる。すなわち,例えば,冬季の相対湿度と夏季の相対湿度が同じ値であっても,大気中の水分量が著しく異なるこのことを示す。
 右図から,大気中の水蒸気量が一定の場合(絶対湿度が同じ)には,気温の僅かな変化でも相対湿度が大きく変化することが分かる。
 図右の青線は,絶対湿度18.4gm-325℃ RH 80%相当)となる温度と相対湿度を,みどり線は,絶対湿度13.8gm-320℃ RH 80%相当),赤線は絶対湿度8.65gm-320℃ RH 50%相当)となる温度と相対湿度の関係である。
 相対湿度 RH 100%を超える状態は,過飽和など非常にまれな状況下でしか存在しえない。一般には,相対湿度 100%を超える状況では,過剰の水蒸気が液体となる。すなわち,微細な水滴である霧の発生や物体表面への付着(結露)が発生する。
 25℃ RH 80%の状態で,温度 21℃まで低下した場合,20℃ RH 80%の状態では温度 16℃まで低下した場合に相対湿度 100%になる。すなわち,相対湿度 80%の一般的な気温では,気温より約 4℃低い温度の表面では結露が開始することが分かる。20℃ RH 50%の環境では,結露開始まで8.7℃の温度差が必要になる。
 このことは,昼夜の温度・湿度変化がある屋外環境で,放射冷却などで鋼板表面温度が低下した場合の結露発生の有無に関する重要な知見を与える。

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