腐食概論:鋼の腐食

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       【大気の腐食性(腐食度)】  ☞  【大気の腐食性評価】

【腐食度,侵食度の単位について】
 1年を平均太陽年(mean solar year)の365.242日,鉄の密度を7.864g・cm-3とすると,腐食度(corrosion rate),侵食度(penetration rate)の関係は次のようになる。
   腐食度:1mdd=1mg・dm-2・d-1=36.524g・m-2a-1
   侵食度への換算:1mdd=0.004644mm・a-1=4.644μm・a-1
   ここに,dm=10cm,d:day,a:平均太陽年
 
 なお,年の記号として,過去には暦年を意味する y,yr又は yearが用いられてきた。しかし,正確性に欠け,用いない方が望ましいとされ,今日では,JIS等で平均太陽年(平均回帰年ともいう)を意味する a を用いている。
 
 【腐食度と環境因子について】
 1960年代に,参考資料 1) などで,長期間暴露データの整理や腐食の予測に,指数関数を適用できることが示され,簡単な腐食予測式として次式が提案され,広く用いられている。
   腐食予測式: Y=A・tn
   ここに,Y:侵食量(mm), t:暴露期間,A,n:定数(鋼材種,環境因子に依存)である。
 
 式の性質上, A 暴露 1年目の腐食量と考えがちである。しかし,参考資料 2) によると,実際には,暴露後の数年間は,さび層が安定しないため,暴露 1年後の試験結果を上式の A とすることには問題があるとしている。
 しかし,参考資料 2) では,数多くの暴露試験結果から環境因子(気象因子及び大気汚染因子)との相関を検討した参考資料 3)で提案される 9 つ腐食回帰式(次項で紹介)のうちの一つである式 2) を用いて A を求めることに対して,一定の理解を示している。
 定数 n については,前項の【腐食した鋼の腐食】で紹介した模式図のように,一般に普通鋼(構造用鋼など)で 0.5(放物線速度式になる)程度になり,耐候性鋼で 0.2~0.3 になると言われている。
 しかし,参考資料 2)では,暴露試験結果との比較により, n が 1近くになる場合,すなわち 10年経過しても保護性のさびが形成されないこともあるとしている。

 【参考資料】
 1)陸上鉄骨構造物防食研究会:“各種金属材料および防錆被覆の大気腐食に関する研究(第5報) 金属素材類暴露5カ年の結果”,防蝕技術, Vol.16, No.4, pp.153-158(1967)
 2)増子昇:“環境汚染と金属の腐食”,生産研究, Vol.29, No.11, pp.557-560(1977)
 3)陸上鉄骨構造物防食研究会:“各種金属材料および防錆被覆の大気腐食に関する研究(第9報) 大気腐食量の実測値と計算値の考察”,防食技術, Vol.22, No.3, pp.106-113(1973)

 【参考】
 平均太陽年(mean solar year)
 太陽年(回帰年)は,黄道上の分点(春分・秋分)と至点(夏至・冬至)から出て再び各点に戻ってくるまでの周期をいう。そこで,基点の異なる春分回帰年,秋分回帰年,夏至回帰年,冬至回帰年の平均(約 365.2422日)を平均太陽年,平均回帰年という。
 回帰年(tropical year)
 読み「かいきねん」,太陽年(solar year)ともいい,太陽が黄道上の分点(春分・秋分)と至点(夏至・冬至)から出て再び各点に戻ってくるまでの周期(約 365.2422日)をいう。基準とする分点や至点で値が異なるので,それらの平均を平均回帰年や平均太陽年という。回帰年は,地球軌道の変化のため毎年僅かに短縮している。
 腐食度(corrosion rate)
 ある期間に生じた単位面積当たりの腐食量をその期間で除して求められる値。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 この値は,暴露期間中に時々刻々変化する腐食速度(金属の腐食反応速度)とは異なる。また,同じ条件の試験であっても,暴露期間が異なると腐食度も異なる。単位は,単位面積当たり,1年(平均太陽年)当たりのグラム数(g・m-2・a-1)で表わす。
 大気暴露試験で得られる腐食度は,暴露開始時期の違い(例えば春開始と秋開始など)の影響も受ける。このため,腐食度で腐食性評価を行う場合には,暴露環境条件に加えて,暴露開始時期,暴露期間(暴露1年目や暴露X-Y年など)などの情報を併記するのが望ましい。
 侵食度(penetration rate)
 侵食度は,求めた腐食度から単位時間当たりの厚み減少量μm・a-1)に換算した値で,金属の厚み方向への影響を直感的に理解し易いため広く用いられている。
 一般には,腐食度を金属の密度で除して得られる厚みの平均減少量である。腐食度と同様に,暴露期間で値が変わるので注意が必要である。
 侵食度は算術平均値であり,全面の均一な腐食の場合は実態と整合するが,局部腐食では的確な評価ができない。従って,不均一な腐食が観察される場合は,侵食度を用いるべきではない。
 なお,過去の文献等では,侵食度というべきところを腐食度と記すものも少なくないので,使用する単位で判断する必要がある。
 環境因子(environmental factor)
 一般的には,生物の生存,生活に影響する環境の条件をいう。腐食工学では,鋼などの金属の腐食に影響する環境条件(environmental conditions)をいう。例えば,大気腐食(屋外)では,気温,湿度,降水,海塩粒子,二酸化硫黄などが環境因子として取り上げられる。
 JIS Z 2381 「大気暴露試験方法通則:General requirements for atmospheric exposure test」では,環境因子を“暴露試験場における気象因子及び大気汚染因子の総称。”,気象因子を“気象観測の対象となる気温,湿度,太陽放射エネルギー量,降水量,風向,風速などの因子。”,大気汚染因子を“人為的・自然的に発生する硫黄酸化物,窒素酸化物,硫化水素,海塩粒子などの暴露試験に影響を及ぼす因子。”と定義している。
 気象因子(meteorological factors)
 JIS Z 2381 「大気暴露試験方法通則:General requirements for atmospheric exposure test」では,気象因子を“気象観測の対象となる気温,湿度,太陽放射エネルギー量,降水量,風向,風速などの因子。”と定義している。一般的には,気象要素(meteorological element)ともいい,気象学でいう気候要素(climatic factor)と同等の意味で用いられる。
 気象(meteorological phenomena)とは,大気の状態や大気の中で起きる現象をいい,気候(climate)とは,その地域を特徴づける大気の状態をいう。
 気候要素(climatic factor)とは,ある気候を構成する種々の要素で学術的には気温,降水量,風向・風速の三大要素に加えて気圧,湿度,蒸発散量,雲量,日照時間,日射量,水温,地温,降水時間,土壌水分量などが挙げられる。
 なお,気候因子(climatic factor)といった場合は,気候の地域差を生じる原因となる緯度・高度・水陸分布・地形・海流などを指し,この結果として,各地の気候要素(気温,降水量,風向・風速など)に影響を与える。

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