腐食概論:鋼の腐食

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         【海水の特徴】

 海洋学で伝統的に用いられている塩分濃度(salinity)による水の分類では,塩分濃度 0.05%以下の水を淡水(fresh water),淡水と塩水の混合で塩分濃度 0.05~3.0%の汽水(brackish water),塩分濃度 3.0~5.0%の塩を含んだ水(saline water),塩分濃度が飽和に近い又は飽和塩水 5.0%以上の塩水(brine)などに分ける。
 一般的な認識では,海水を塩水に分類しがちであるが,学術的には,海水(sea water)は“塩を含んだ水(saline water)”に分類される。

 海水の一般的な性質は,次の通りである。
  pH : 8.1~8.9(海表面),7~8(深海)
  氷点 : -1.9℃
  密度 : 1.02~1.035×106(g・m-3
  比抵抗(電気抵抗率): 20~30Ω・cm(20℃)(導電率で33~50mS・cm-1
  (参考:平均的河川水の導電率は 0.1 mS・cm-1程度)
  塩分濃度 : 3.1~3.8%(地域差があり河口付近では汽水

【海水成分】
 海水中の塩分濃度は海域で異なるが,海水の塩分の組成比は,海域が異なってもほぼ一定である。
 塩化ナトリウム(NaCl)77.9%,塩化マグネシウム(MgCl2)9.6%,硫酸マグネシウム(MgSO4)6.1%,硫酸カルシウム(CaSO4)4%,塩化カリウム(KCl)2.1%,残分がその他成分となっている。
 代表的な海水のイオン組成(ion composition)を下表に示す。


海水に含まれる主要なイオン
出典:参考資料1)
  成 分     化 学 式     質 量 (%)  
  ナトリウムイオン    Na+    1.0556 
  マグネシウムイオン    Mg2+    0.1272 
  カルシウムイオン    Ca2+    0.04 
  カリウムイオン    K+    0.038 
  ストロンチウムイオン    Sr2+    0.0008 
  塩化物イオン    Cl    1.898 
  硫酸イオン    SO42−    0.2649 
  炭酸水素イオン    HCO3    0.014 
  臭化物イオン    Br    0.0065 
  ふっ化物イオン    F    0.0001 

【溶存酸素濃度】
 海水に含まれる溶存酸素(dissolved oxygen)の濃度は,海表面からの距離で異なる。海表面は,大気との混合でほぼ飽和濃度となるが,水深と共に急激に低下し,水深 400~800mで最小値(ゼロに近い値)となる。深海では,水深と共に溶存酸素濃度の増加があると考えられているが,深海の水質に関する調査事例が少ないため明確ではない。
 
【温度】
 海水温は,太陽光の影響を受ける海表面で最も高く,水深 50m程度までに急激な低下がある。例えば,海表面の水温が 17~20℃の場合に,水深 50mで 10℃程度まで低下する。それより深い個所は,水深と共に徐々に低下すると考えられている。
 
【地域差】
 金属の腐食が問題となる海水は,主に海表面の海水,陸地に近い海水であることが多い。これらの海水は地形により性質が大きく変わる。特に,淡水の流入する河口付近や湾内の海水は,地域差が大きい。このため,腐食を考慮する場合は,当該地の海水の性質を把握する必要がある。

 【参考資料】
 1)松井義人,一国雅巳 訳『メイスン 一般地球化学』(岩波書店1970年)

 【参考】
 塩分濃度(salinity)
 単に塩分ともいわれる。塩を含む水(海水など) 1kg 中に含まれている固形物質の全量をグラムで表したものをいい,単位には千分比 ‰(パーミル)が用いられる。
 塩分の表示には,複雑な化学分析により求めた絶対塩分と電気伝導率から換算してた実用塩分がある。
 絶対塩分(absolute salinity , salinity)
 1980年代以前から用いられている伝統的な塩濃度の表し方で,1kg の水に含まれる塩の質量比,単位 g/kg (千分率;‰ パーミル)で表される。
 絶対塩分を求めるために,塩を含む水に含まれる全ての炭酸塩を酸化物に変え,臭素(Br)と沃素(I)を塩素(Cl)で置換し,有機物は完全に酸化するなどの煩雑な分析操作が必要である。
 実用塩分(practical salinity)
 実用塩分単位(practical salinity unit)の頭文字をとった psu で表記される。
 伝統的には,溶けている物質の質量の比で定義され,千分比 ‰(パーミル)で表記される絶対塩分が用いられていたが,溶解する複数の塩の分析が煩雑であることから,塩を含む水の特性である電気伝導率(electric conductivity)によって定義する実用塩分が 1980年代から用いられるようになった。
 電気伝導率から換算される実用塩分は,絶対塩分表示とほぼ同じ値になるよう工夫されている。例えば,海水の塩分は,絶対塩分で 35‰(パーミル)と表示し,実用塩分で 35 psu 又は単に 35 と表示する。
 イオン(ion)
 原子,又は分子が 1 個,又は数個の電子を授受することで電荷を持つ物質を指す。
 最外殻の軌道電子を放出することで,単原子,又は原子団(複数の原子が結合)は正の電荷を持つ陽イオンになる。
 最外殻の電子軌道に電子を受け取ることで,単原子,又は原子団は負の電荷を持つ陰イオンになる。
 歴史的には,ファラディーが電気分解の実験で,陽極(アノード:anode )に向かう粒子と陰極(カソード:cathode )に向かう粒子を発見し,これらの粒子をイオン(ion)と名付け,陽極に向かう粒子を陰イオン(anion :アニオン),陰極に向かう粒子を陽イオン(cation :カチオン) と呼んだのが始まりである。
 陰イオン(anion , negative ion)
 アニオン(anion)ともいい,負の電荷を帯びたイオンをいう。イオン(ion)とは,原子や原子団(分子)が電子を得たり失うことで電荷を帯びた状態をいう。
 陽イオン(cation , positive ion)
 カチオン(cation)ともいい,正の電荷を帯びたイオンをいう。イオン(ion)とは,原子や原子団(分子)が電子を得たり失うことで電荷を帯びた状態をいう。
 溶存酸素(dissolved oxygen)
 DOと略称され,水中に溶解している酸素の量を意味し,一般的には水の汚染の程度を示す指標として用いられる。海洋や河川では,4~5mg/L を下回ると水中生物の生命が脅かされるといわれている。
 酸素の溶解量は水温,溶解塩類の濃度,気圧などにより影響を受ける。ちなみに,1気圧の蒸留水の飽和溶存酸素量は,20℃で 8.84mg/L ,25℃で 811mg/L ,30℃で 7.53mg/L である。

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