腐食概論:鋼の腐食
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大気腐食の基礎
大気中での鋼表面の濡れについて
鋼腐食に影響する濡れ時間を,ISO 9223「Corrosion of metals and alloys -corrosivity of atmospheres-Classification」では,「 0℃よりも高い気温のときに,相対湿度が 80%以上であるときの時間」と定義している。この定義は,一般的な感覚である目視で明らかな濡れに加えて,前説で紹介した「清浄な金属表面への水分子の吸着(adsorption)」による水膜の形成を含んだ概念である。
ここでは,狭義の濡れ(wetting),すなわち一般的な感覚である目視で確認できる濡れの中から,降雨を除き,水膜厚みが 1μm以上となる霧(fog)の衝突や結露(dew formation)などによる濡れについて扱う。霧の発生や結露は,基本的に大気,及び固体物質の温度変化に伴う現象である。
【霧】
霧とは,水蒸気を含んだ大気の温度が何らかの理由で下がり,露点(dewpoint)に達し水蒸気が小さな水粒となって空中に浮かんだ状態である。
霧には,放射冷却(radiational cooling)による気温低下で露点温度に達し発生する放射霧(radiation fog),外気温が川や海の水温より下がり発生する蒸気霧(evaporation fog)がある。いずれも秋から春にかけて観察されることが多い。
【結露】
結露とは,固体物質の表面(又は内部)が外気温より低い温度(露点以下)になったとき,固体表面に空気中の水蒸気が凝縮する現象である。
夏季に水道管表面が結露する場面を経験するが,これは外気温に比較して水道管自体が露点以下の低い温度のために起きている。
その他多くの陸上構造物において,結露は放射冷却による構造物の温度変化又は/及び外気温変化の結果として発生する。
【参考】
結露(dew formation)
露点以下の温度で水蒸気が凝縮すること。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
水蒸気を含んでいる空気が冷却して露点以下になり,水蒸気が液化して露を結ぶ現象。【JIS H 0201「アルミニウム表面処理用語」】
露点(dewpoint)
露点温度ともいい,水蒸気を含む空気やガスを冷却するとき,その水蒸気圧が飽和水蒸気圧と等しくなる温度。この温度以下になると水蒸気は液化する。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
雰囲気中の水分が凝縮し始める温度。備考:ガス浸炭の場合は,露点でカーボンポテンシャルを調節できる。【JIS G 0201「鉄鋼用語(熱処理)」】
放射冷却(radiational cooling)
気象用語で,大気,地表面が熱放射(赤外線放射)で冷却することをいう。
霧(fog)
微少な水滴が空気中に浮遊し,水平方向の視程 1km未満のもの。1km以上のものは“もや”という。
発生形態により,蒸発霧(川,湖,海の水面からの水蒸気が冷たい空気に触れて発生),移流霧(湿った暖かい空気が冷たい地面や海面に触れた時に発生する海霧など),放射霧(地面が放射冷却で冷やされて発生する盆地霧など),前線霧(前線の両側の異なる性質の空気塊が混ざり発生),滑昇霧(湿った空気が山の斜面を昇るときの断熱冷却で発生)に分けられる。なお,氷晶からなる霧は氷霧という。
放射霧(radiation fog)
輻射霧,盆地霧などともいわれ,夜間の放射冷却によって地面付近の空気が露点以下に冷やされる場合に発生する霧。
多くの場合は,高気圧に覆われ,風が弱く,よく晴れた日の早朝に(明け方)に発生し,日の出後に地表面の気温が上がると消える。
蒸発霧(evaporation fog)
蒸気霧ともいい,川,湖,海の水面が冷たい空気に覆われたときに暖かい水面から蒸発する水蒸気が冷えて発生する霧。
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