腐食概論:鋼の腐食
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大気腐食(実環境因子の影響)
簡便な立地条件を用いた腐食環境の推定
参考資料 1)での検討結果を参考に,金属の腐食環境について,大気汚染程度を考慮した簡便な区分を次に示す。
日本は,周囲を海で囲われているので,多くの地域で何らかの海塩粒子(sea salt particle)の影響を受ける。海塩粒子以外に金属の腐食に影響する大気汚染物質としては,硫黄化合物,塵埃などが考えられる。
そこで,金属腐食に与える影響を考慮した環境区分では,海塩粒子とそれ以外の因子の多少で区分することができる。厳密さを欠くが,概略の腐食性を見積もる際の参考にできる簡便な方法である。
- 【海塩粒子以外の因子による区分】
- 大都市・工業地域
生産・商業活動,生活活動に伴う人工的大気汚染物質の多い地域。
なお,日本では,大気汚染防止法の効果により,前項のISO 9223の典型的環境例で紹介した大都市や工業地域ほどの腐食性はない。 - 地方都市,田園,山間地域
人工的な大気汚染物質の少ない地域。 - 火山・温泉(硫黄温泉)地域
自然現象による大気汚染物質(硫化水素ガスなど)の多い地域。
- 【海塩粒子による区分】
- 海上地域
海水面に近いほど海塩粒子の影響が大,海水面近傍はしぶき(splash)の影響も受け,激しい腐食環境となる。海水面から数十mを超える高さでは,海塩粒子の影響が小さくなり,海浜地域程度,若しくはそれ以下となる。 - 海浜地区
海岸線から300m以内の地域。飛来海塩粒子(airborne sea salt particles)の影響が最も厳しい地域である。海岸線との間に,建築物や森林等の障害物があると海塩粒子の影響は激減する。 - 沿岸地域
海岸線から300mを越えて2km 以内の地域。飛来する海塩粒子の影響が比較的大きい地域である。南西諸島の島などは,海岸線から2kmを越えても,台風の影響などで飛来海塩粒子が多く,島全体を海浜地区と考えるのが望ましい。 - 準沿岸地域
海岸線から2kmを越えて20km以内の地域。飛来する海塩粒子の影響が比較的小さい地域。 - 内陸地区
海岸線から20kmを越えた地域。飛来する海塩粒子の影響が無視できる地域である。
【気候の違いによる区分】
日本列島を季節風・気温・湿度などの気象条件の異なる次の9地域に区分することも有用である。
a) 北海道・西(北海道の日本海側)
b) 北海道・東(オホーツク海,太平洋側)
c) 太平洋・北(伊豆半島以北の太平洋側・甲信地方)
d) 太平洋・南(東海・中部・近畿・四国・九州地方の太平洋側)
e) 瀬戸内海(四国・中国・九州地方の瀬戸内海側)
f) 日本海・北(能登半島以北の日本海側)
g) 日本海・南(福井・近畿・中国地方の日本海側)
h) 九州・西(玄界灘に面した九州西部)
i) 南西諸島(鹿児島県の南部の島から琉球列島に属する島)
【参考資料】
1)社団法人日本建材産業協会:“経済産業省委託:鉄鋼系社会資本材料の耐候性・耐食性試験評価方法に係わる調査研究”,平成8 年度報,平成11年度報告
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