腐食概論鋼の腐食

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 淡水環境の腐食

 淡水環境の腐食

 ここでは,淡水環境(fresh water environment)における鋼腐食の理解に資するため,淡水の分類や水質,淡水腐食(corrosion in fresh water)の特徴などを紹介する。

1.「淡水とは」

 「淡水」(fresh water)の分類には,存在場所による分類,成分による分類,含まれる塩分濃度での分類がある。各分類の解説に加えて,代表的な水質例を紹介する。

2.「淡水中の腐食概要」

 2.1 「淡水中の金属腐食について」
 淡水中での銅,亜鉛,ステンレス鋼,アルミニウム及び鋼の均一腐食(uniform corrosion)に関する一般的な特徴を解説する。
 2.2 「淡水中の局部腐食」
 異種金属接触腐食(bimetallic corrosion, galvanic corrosion)やすき間腐食(crevice corrosion)は別途紹介しているので,ここでは,主に,環境の不均一が原因で発生する局部腐食(local corrosion )について解説する。

3.「淡水中の鋼腐食に影響する要因について」

 淡水中の鋼腐食に影響する溶存酸素,流速,及び水質の影響について解説する。
 3.1 「溶存酸素濃度の影響」 腐食速度に影響する溶存酸素濃度(dissolved oxygen)の影響について解説する。
 3.2 「溶存酸素の拡散」 溶存酸素の鋼表面への拡散(diffusion)について解説する。
 3.3 「流速の影響」 流速(current speed , current velocity)が溶存酸素拡散,すなわち腐食に与える影響を解説する。
 3.4 「水質の影響」 淡水中の鋼腐食に影響する水質について。
  3.4.1 「水質の影響(pH)」 pH()の鋼腐食機構に与える影響について解説する。
  3.4.2 「水質の影響(陰イオン)」 塩化物イオンなど陰イオン(anion , negative ion)の鋼腐食機構に与える影響について解説する。
  3.4.3 「水質の影響(陽イオン他)」 鋼腐食機構に影響する陽イオン(cation , positive ion)や固形分の影響について解説する。
  3.4.4 「水質の影響(温度)」 化学反応である鋼腐食反応に与える温度の影響について解説する。

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 主な用語の概説

 淡水(fresh water)
 一般的には,河川水・湖沼水・地下水など塩分濃度の極めて低い水を差す。
 海洋学で伝統的に用いられている絶対塩分による分類では,淡水(fresh water: 0.5 ‰以下),汽水(brackish water:淡水と塩水の混合 0.5~30 ‰),塩を含んだ水(saline water: 30~50 ‰),塩水(brine: 50 ‰以上の飽和に近い又は飽和塩水)になる。
 均一腐食(uniform corrosion)
 読み「きんいつふしょく」,金属表面にほぼ均一に生じる腐食。全面腐食ともいう。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 局部腐食(local corrosion)
 読み「きょくぶふしょく」,金属表面の腐食が均一でなく,局部的に集中して生じる腐食。【JIS Z0103「防せい防食用語」】局部的に集中して起こる腐食。【JIS H 0201「アルミニウム表面処理用語」】
 金属種や腐食要因の違いで孔食,すき間腐食,異種金属接触腐食など様々ある。
 酸素拡散律速(diffusion-controlled process of oxygen)
 水の関与する金属腐食では,酸化反応が起きる場所と還元反応の場所が異なる。例えば,鉄の腐食では,鉄の酸化反応とそれに対応する酸素の還元反応が鉄表面の異なる場所で起きる。
 この時,鉄の酸化反応と酸素の還元反応の結果で生じる鉄イオンの生成速度ν[Fe2+]は,反応速度論に従うと,反応物質の活量の積に比例する。すなわち,鉄表面の酸素濃度に比例する。また,鉄の酸化還元の反応速度は,静止する水中での酸素移動速度(拡散速度)より著しく大きいので,鋼表面に到達した酸素は,直ちに還元される。
 結果として,鉄イオンの生成速度は,鋼表面に到達する酸素の量,すなわち酸素の拡散束(流束)に依存し,酸化還元反応の速度定数には依存しないことになる。この現象を,一般的には酸素拡散律速の腐食といっている。
 pH(potential hydrogen ,power of hydrogen)
 水素イオン濃度指数(potential hydrogen ,power of hydrogen),又は水素イオン指数(hydrogen ion exponent)といわれる。
 水素イオン活量の逆数の常用対数。 注記 これは概念上の定義で実測できない値である。実用の操作的定義については JIS Z 8802(pH 測定方法)を参照。【JIS K 0211 分析化学用語(基礎部門)】
 この規格に規定した pH 標準液の pH 値を基準とし,ガラス電極 pH 計によって測定される起電力から求められる値。注記 ピーエッチ又はピーエイチと読む。【JIS Z 8802「pH 測定方法」】
 イオン(ion)
 イオン(ion)とは,原子や原子団(分子)が電子を得たり失うことで電荷を帯びた状態をいう。
 歴史的には,ファラディーが電気分解の実験で,陽極(アノード:anode )に向かう粒子と陰極(カソード:cathode )に向かう粒子を発見し,これらの粒子をイオン(ion)と名付け,陽極に向かう粒子を陰イオン(anion , negative ion:アニオン),陰極に向かう粒子を陽イオン(cation , positive ion:カチオン) と呼んだのが始まりである。

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