腐食概論鋼の腐食

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 土壌腐食の基礎(土壌に埋設された金属の腐食)

 ミクロ腐食とは(均一腐食)

 土壌と接触している鋼表面の表面状態,化学組成のわずかな違いから,微視的なアノード(anode)とカソード(cathode)で構成されるミクロ腐食電池(micro-galvanic cell)が多数形成される。
 ミクロ腐食電池によるミクロ電池腐食(micro-galvanic cell corrosion)では,アノード部とカソード部の位置を移動しながら腐食が進むので,全面腐食(general corrosion)ともいわれる均一腐食(uniform corrosion)に至る。
 ミクロ電池腐食に影響する土壌の因子には,含水比,電気抵抗率(抵抗率),通気性,pH,水可溶性成分(水溶解成分),生物(バクテリア)が挙げられる。それぞれについて腐食への影響程度の観点から解説する。

 含水比(water content)
 乾燥した土壌でも,一般的には含水比 2~3%である。含水比が多いほど土壌の電気抵抗率が低下し,鋼の腐食性が増大する。
 しかし,含水比がある値を超えると,電気抵抗率が低下しなくなる。同時に酸素の拡散が制約されるようになる。このため,鋼の腐食性が急激に低下する。

 電気抵抗率(electrical resistivity)
 土壌の電気抵抗率は,土壌の組成と含水比で決まる。抵抗率以外にも鋼の腐食に影響する因子が多いので,抵抗率のみから腐食性を推定するのは困難であるが,目安として,参考資料1)には次に示す数値の提案がある。
   0.5kΩ・cm以下:腐食性非常に大
   0.5~1.0kΩ・cm:腐食性大
   1.0~2.0kΩ・cm:腐食性中
   2.0~10kΩ・cm:腐食性小
   10kΩ・cm以上:腐食性非常に小
 通気性
 通気性は,主に土壌の組成と含水比に支配される。含水比が高いと空気の供給が不十分となる。
 粘土質が多い土壌や湿潤土壌では,通気性が小さく酸素の移動が制約される。
 表層部に近い土壌中の空気は,大気に比べて二酸化炭素量が 10~100倍と非常に多い。しかしながら,酸素の量は大気とほとんど変わらない。
 5m以上の深さでもかなりの酸素が含まれていると考えられている。

 pH(potential hydrogen , power of hydrogen)
 通常の土壌の水素イオン濃度指数(power of hydrogen)は,pH 5.0~8.0の範囲にある。pH 4以下の土壌は,腐食性が非常に高いと推測されるが,実用の土壌は pHのみで腐食性を判定するのは困難な状況が多い。
 また,pHの低い土壌では,ミクロ腐食電池よりマクロ腐食電池(macro-galvanic cell)を生じ,局部腐食(local corrosion)に至ることが多い。

 水溶解成分
 土壌に含まれる水に,鋼の腐食に影響する種々のイオンが溶解している。その成分に関しては,土壌組成,地下水など周辺環境の影響を受けるので一概には延べられない。

 バクテリア(bacteria)
 土壌中に次のバクテリアが存在すると激しい腐食を伴う。
 鉄バクテリア(iron bacteria):酸素が供給される環境で,鉄の酸化エネルギーを利用するバクテリアである。
 硫黄バクテリア(sulfur bacteria):水中の硫化水素( H2S),チオ硫酸塩( M2S2O3)や硫黄(S)を硫酸( H2SO4)まで酸化するバクテリアである。
 硫酸塩還元バクテリア(sulfate-reducing bacteria):硫酸イオン( SO42+)を硫化水素(HS)まで還元するバクテリアである。

 【参考資料】
 1) A. W. Peabody; NACE Basic Corrosion Course (1974)

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