腐食概論鋼の腐食

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 大気腐食の基礎

 大気とは

 地球科学では,地球環境を「気圏(大気圏,atmosphere),水圏(hydrosphere),地圏(geosphere){陸圏(landsphere),岩石圏(lithosphere)},生物圏(biosphere)」などに区分している。
 大気(atmosphere)とは重力によって地球を取り囲むように保たれている気体をいう。
 大気圏とは,地球の大気の球状層をいう。大気圏と宇宙空間との境界は,確定されておらず,便宜的に次に示す熱圏の高度80kmから120kmあたりとされている。
 
 大気圏は,温度変化を基準に鉛直方向に,次の四つの層に区分されている。鉛直方向の区分は,大気が主に水平方向に運動し,1つの層内で循環していることなどが理由と考えられる。
 対流圏 (Troposphere)
 9~17km,高度とともに気温が低下する。気象現象は対流圏で起きる。対流圏は,赤道付近で17km程度,極で9km程度と地球自転の影響で厚みが異なる。
 成層圏 (Stratosphere)
 9~17kmから 50kmまで,高度とともに気温が上昇する。成層圏には,オゾン層が存在する。
 中間圏 (Mesosphere)
 50kmから 80kmまで,高度とともに気温が低下する。
 熱圏 (Thermosphere)
 80kmから 800kmで高度とともに気温が上昇する。
 
 大気腐食を取り扱う環境は,対流圏の中でも地表面に近い範囲である。従って,地域差やさまざまの気象現象の影響を受ける。
 地表面付近の大気の平均的な気体組成(水分を除く)は次の通りである。なお,気体成分としての水蒸気は,地域や時間での変動が著しく大きい成分である。そのため,下表の気体組成は,乾燥した空気の組成を示している。


地表面の乾燥大気の気体成分構成(vol%)
出典:化学便覧
  成分    百分率    成分    百分率 
  窒素(N2   78.088    酸素(O2)    20.949 
  アルゴン(Ar)    0.93    二酸化炭素(CO2)*    0.04 
  ネオン(Ne)    1.8×10-3    ヘリウム(He)    5.24×10-4 
  メタン(CH4   1.4×10-4    クリプトン(Kr)    1.14×10-4 
  一酸化二窒素(N2O)    5×10-5    水素(H2   5×10-5 
  一酸化炭素(CO)    1×10-5    オゾン(O3)*    2×10-6 
:二酸化炭素,オゾン及び水分は,高さ,地域,時間で変動する成分

 水以外で変動する成分には,二酸化炭素とオゾンがある。二酸化炭素は生物の活動などに伴い,オゾンは生物活動,紫外線量などで変動するが,組成全体に影響するほどの大きな変動ではない。
 【参考】
 気圏(earth's atmosphere)
 大気圏ともいい,水圏・地圏に対して用いられ,地球の大気の球状層をいう。
 水圏(hydrosphere)
 気圏・地圏に対して用いられ,地球の表面で水の占める部分。水圏の大部分は海洋である。
 地圏(geosphere)
 水圏・気圏に対して用いられ,地球の固体部分を指す場合と地球全体を指す場合がある。
 地圏は,内核(Inner Core),外核(Outer Core),マントル(Mantle),地殻(Crust)から構成される。
 陸圏(landsphere)
 読み「りくけん,りっけん」,地球表面の水におおわれていない範囲(陸地)を指す。
 岩石圏(lithosphere)
 地球上層部の岩石でできている部分。プレート(Plate)と同義で地球表層の 100~150km 部分の硬い岩盤を指す。
 生物圏(biosphere)
 地球上の生物が生活できる環境を有している部分をいい,地表,地下,水中など岩石圏,水圏に含まれ,通常は空中(大気圏)を含まない。

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