腐食概論:鋼の腐食
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大気腐食の基礎
放射冷却による霧,すなわち放射霧の発生について
日没後に,地面や地表の物体は,放射冷却(radiational cooling)で温度が急激に低下する。これに伴い周辺の気温も低下する。
一方で,絶対湿度(absolute humidity)(空気中の水蒸気量)は,外部からの補給(水源などから)や移動(風や結露)がない限りは保持される。
これにより,【絶対湿度】の項で説明したように,気温の低下に伴って相対湿度(relative humidity)が増加する。
下図は,日本の屋外構造物が経験する温・湿度範囲において,絶対湿度別に気温と相対湿度の関係を示したものである。
この状態よりさらに気温が下がると,過剰の水蒸気が凝結,すなわち放射霧(radiation fog)が発生する。これにより,大気中から水蒸気が除去され,温度が低下しても相対湿度 100%が保持される。
下図に,2012年9月8日から 9日にかけての,茨城県水戸気象台における計測データ(毎時)を示す。このデータは,良く晴れた日で,夜間の平均風速が 1m/s程度以下となった日(昼間は風速 4m/s程度)の気温と相対湿度である。
図には,気象データ(時間平均値)から計算された絶対湿度も追記している。なお,気象台のデータには,この日の午前3時に霧と記録されていた。
日没直後 18時の気温 26.7℃,相対湿度 84%から,9月9日午前 3時には気温が概ね 4℃低下の 22.6℃に達し,相対湿度 99%と記録されている。この時点で霧の発生が観測された。
霧の継続時間についての記録はないが,相対湿度 99%以上の状態は日出後約 3時間の午前 8時まで継続している。
一般的には,日出後に速やかな気温の上昇と相対湿度の低下に至るが,当日は霧が発生していたため,太陽エネルギーが霧の蒸発に使われ,気温の上昇率が抑えられ,高い相対湿度が 3時間以上継続したと考えられる。
【参考】
霧(fog)
微少な水滴が空気中に浮遊し,水平方向の視程 1km未満のもの。1km以上のものは“もや”という。
発生形態により,蒸発霧(川,湖,海の水面からの水蒸気が冷たい空気に触れて発生),移流霧(湿った暖かい空気が冷たい地面や海面に触れた時に発生する海霧など),放射霧(地面が放射冷却で冷やされて発生する盆地霧など),前線霧(前線の両側の異なる性質の空気塊が混ざり発生),滑昇霧(湿った空気が山の斜面を昇るときの断熱冷却で発生)に分けられる。なお,氷晶からなる霧は氷霧という。
絶対湿度(absolute humidity)
大気中などの水蒸気量を直接示すために用いられる。一般的には,大気の一定体積(1m3)当たりの水蒸気の量(g)で表わす容量絶対湿度 VH(volumetric humidity ; g/m3)で表される。
すなわち,容積 Va(m3)に含まれる水蒸気の質量を Mw(g)とすると,容量絶対湿度 VH=Mw/Va で定義される。
相対湿度 RH との関係は,T:温度(℃),E:水蒸気圧,Es(T):飽和水蒸気圧,とした場合に次式で与えられる。
VH= (RH/100)・Es(T)・216.7/(T+273.15)
相対湿度(relative humidity)
相対湿度(RH)とは,ある温度(T)で計測された水蒸気圧(E)と,その温度での飽和水蒸気圧( Es (T))(saturated water vapor pressure) に対するの百分率と定義されている。
RH(%)=100×E/Es (T)
露点(dewpoint)
露点温度ともいい,水蒸気を含む空気やガスを冷却するとき,その水蒸気圧が飽和水蒸気圧と等しくなる温度。この温度以下になると水蒸気は液化する。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
雰囲気中の水分が凝縮し始める温度。備考:ガス浸炭の場合は,露点でカーボンポテンシャルを調節できる。【JIS G 0201「鉄鋼用語(熱処理)」】
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