腐食概論:鋼の腐食

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         【すき間腐食】

 JIS Z0103「防せい防食用語」では,すき間腐食(crevice corrosion)を“濃淡電池腐食(concentration cell corrosion)の一種で,金属又は金属と他の材料との間にすき間が存在する場合,すき間の内外においてイオン,酸素などの濃淡電池が構成されて生じる腐食。”と定義している。
 実際に“すき間”に発生する腐食は,次の 2種類に分けられる。
 
 厳密な意味での“すき間腐食”で,“すき間”の寸法が 10µm程度といった極めて狭い間隔を持ち,ステンレス鋼(stainless steels)などの不動態化(passivity)した金属で,塩化物イオン(cloride ion)等の影響を受けた場合に,極めて狭いすき間内部に生じる濃淡電池腐食である。
 なお,極めて狭い間隔とは,ボルト等で締め付けたときできるようなすき間,フジツボ等の海洋性生物が付着したときのすき間などに相当する。
 
 不動態化しない金属において,“すき間”の入口と内部との酸素濃度差が原因で発生する酸素濃淡電池腐食についても,“すき間腐食”と称している例が少なくない。厳密な意味でのすき間腐食とは機構が異なり,酸素の濃淡のみで生じる通気差電池(differential aeration cell)による腐食と考えられ,通気差腐食(differential aeration corrosion)と称するのがより適切である。

【すき間腐食の原理】
 ステンレス鋼などの不動態化した金属においては,狭隘な“すき間”が生じ,その“すき間”の入口と内部で,仮に酸素濃度の濃淡による電池が形成しても,不動態皮膜が健全なため,実用上問題となるような濃淡電池腐食は生じない。
 しかし,水溶液中に塩化物イオン(Cl-が存在すると,酸素濃淡電池の電位差により,アノード部となる“すき間”内部に塩化物イオンが移動・蓄積してゆく。
 この結果として,すき間内部の pH低下と塩化物イオンによる不動態皮膜の破壊が生じ,著しい局部腐食に至る。これが,厳密な意味での“すき間腐食”である。
 すき間腐食は,海水中でステンレス鋼を使用する場合に問題となる腐食現象であり,SUS304程度のステンレス鋼では,容易にすき間腐食を起こす。
 すき間腐食に対して抵抗性の高いステンレス鋼には,25%以上のクロム(Cr)に数%のモリブデン(Mo)を添加した高純度フェライト系ステンレス鋼やオーステナイト系ステンレス鋼などがある。
 
 【参考】
 濃淡電池腐食(concentration cell orrosion)
 読み「のうたんでんちふしょく」,金属表面に接触する水溶液中のイオンや溶存酸素の濃度が局部的に異なるために生じた電池による腐食。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 濃淡を原因とする電位差で生じた電池(マクロ腐食電池)による腐食で,広義の電池作用腐食(ガルバニック腐食;galvanic corrosion)の一種である。なお,酸素の濃淡電池形成の場合を通気差腐食(differential aeration corrosion)などともいう。
 マクロ腐食電池(macro-galvanic cell)はマクロセルともいわれ,アノードとカソードがはっきりと区別できる程度の大きさをもち,その位置が固定されている腐食電池をいい,異種金属接触電池,通気差電池などがこれに属する。【JIS Z 0103「防せい防食用語」】
 局部腐食(local corrosion)
 読み「きょくぶふしょく」,金属表面の腐食が均一でなく,局部的に集中して生じる腐食。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 局部的に集中して起こる腐食。【JIS H 0201「アルミニウム表面処理用語」】
 金属種や腐食要因の違いで孔食,すき間腐食,異種金属接触腐食など様々ある。
 不動態(passive state)
 これまでの文献等では,用語としてを用いていたが,現在は,JIS 用語を含め,を用いる例が多い。
 標準電位列で卑な金属であるにもかかわらず,電気化学的に貴な金属であるような挙動を示す状態。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 本来,ひ(卑)である電極電位を示し,不安定であるべき金属があたかも貴である金属のように振る舞う状態。この状態では,電極電位も貴の値を示す場合が多い。【JIS H 0201「アルミニウム表面処理用語」】
 一般的には,金属をとり囲む環境の影響で,電気化学列で卑な金属(腐食しやすい金属)が,表面を酸化物で覆われるなどして本来の活性を失い,貴な金属のように挙動する状態を不動態といい,この状態になることを不動態化(passivity)と理解されている。
 不動態化は,酸化力のある酸にさらされた場合,陽極酸化処理によっても生じる。不動態となる酸化被膜(不動態被膜)の典型的な厚みは,数 nm である。
 すべての金属が不動態となるわけではなく,不動態になりやすいのは,アルミニウム,クロム,チタンなどやその合金である。
 ステンレス鋼(stainless steels)
 クロム含有率を 10.5%以上,炭素含有率を 1.2%以下とし,耐食性を向上させた合金鋼。常温における組織によってマルテンサイト系,フェライト系,オーステナイト系,オーステナイト・フェライト系及び析出硬化系の 5 種類に分類される。【JIS G 0203「鉄鋼用語(製品及び品質)」】
 ステンレス鋼に関する JIS 製品規格には,JIS G 4303「ステンレス鋼棒:Stainless steel bars」,JIS G 4304「熱間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯:Hot-rolled stainless steel plate, sheet and strip」,JIS G 4305「冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯:Cold-rolled stainless steel plate, sheet and strip」,JIS G 4308「ステンレス鋼線材:Stainless steel wire rods」,JIS G 4309「ステンレス鋼線:Stainless steel wire rods」,JIS G 4313「ばね用ステンレス鋼帯:Cold rolled stainless steel strip for springs」,JIS G 4314「ばね用ステンレス鋼線:Stainless steel wires for springs」,JIS G 4315「冷間圧造用ステンレス鋼線:Stainless steel wires for cold heading and cold forging」,JIS G 4316「溶接用ステンレス鋼線材:Stainless steel wire rods for welding」,JIS G 4317「熱間成形ステンレス鋼形鋼:Hot-formed stainless steel sections」,JIS G 4318「冷間仕上ステンレス鋼棒:Cold finished stainless steel bars」,JIS G 4319「ステンレス鋼鍛鋼品用鋼片:Stainless steel blooms and billets or forgings」,JIS G 4320「冷間成形ステンレス鋼形鋼:Cold-formed stainless steel sections」,JIS G 4321「建築構造用ステンレス鋼材:Stainless steel for building structure」,JIS G 4322「鉄筋コンクリート用ステンレス異形棒鋼:Stainless steel bars for concrete reinforcement」がある。

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