塗料に用いる樹脂

 JIS K 5500「塗料用語」の用語定義の中から,塗料用樹脂に関する用語を抜粋したもの,及び塗料用語辞典(色材協会),塗料原料便覧(日本塗料工業会)などを参照したSEKIGIN独自の解説を紹介します。なお,解説中の“参考追記:”は,JIS用語規定を分かりやすくするため,SEKIGIN担当者が追記した内容です。
 用語は【樹脂・油脂とは】,【樹脂の熱特性】,【合成樹脂】,【天然樹脂】,【油脂(天然)など】に分けて紹介します。
用語 対応英訳 定義・解説 出典
樹脂 resin 固体,準固体又は凝似固体の有機物。
通常分子量が高く,熱すると一般に広い温度範囲で軟化又は溶融する。適切な溶剤に可溶で,その溶液を塗布すると連続した皮膜を作る。このような物質を総称して樹脂という。天然樹脂と合成樹脂の2種がある。
天然樹脂にはセラックのように動物の分泌物として得られるものや,揮発性油を多量に含むバルサム,又は揮発性油の少ないオレオレジンのような形で樹木から分泌されるもの,及びこれらのものが地中に埋もれて半ば化石化したコーバルゴムのようなものなどがある。
合成樹脂には,フェノール樹脂,ユリア樹脂,アルキド樹脂などの縮合樹脂と,ビニル樹脂,クマロン樹脂などの重合樹脂がある。
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合成樹脂 synthetic resin それ自身は樹脂の特性を持っていない,反応性分から重合,縮合のような制御された化学反応によって作られた樹脂。 K5500
合成樹脂 synthetic resin 有機又は無機高分子化合物からなる物質の中で,重合,縮合のような制御された化学反応によって人為的に製造されたものを指す。
合成樹脂塗料とは,合成樹脂に溶剤または乾性油を加え加熱した塗料である。塗料には,溶剤を加えない「無溶剤型」,溶剤を加えた「溶剤型」,乳液状の「エマルション型」などがある。合成樹脂塗料には「エポキシ樹脂」,「アルキド樹脂」,「塩化ビニール樹脂」,「アクリル樹脂」,「酢酸ビニール樹脂」,「フェノール樹脂」など様々なものが用いられている。
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天然樹脂 natural resin,resin 樹木又は虫類の分泌されてできた,主に塊状のもの,又はこれらが地中に埋れて半化石状態になったものの総称。
ロジン,セラック,ダンマル,コーパル,こはくなど。
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天然樹脂 natural resin,resin 樹皮より分泌される樹液に含まれる不揮発性の固体または半固形体の物質のことを指しており,樹脂といえば天然樹脂のことを指していた。
しかし,有機化学の発達で化学的には別種の物質であるが,天然樹脂と似た性質を持つ物質が合成されるようになった。そこで,従来樹脂と呼ばれていたものを天然樹脂と呼んで区別するようになった。
天然樹脂には,樹木又は虫類の分泌物から形成したもの,又はこれらが地中に埋れて半化石状態になったものがある。天然樹脂として,動植物由来のロジン,天然ゴム,セラック,ダンマル,コーパル,こはくなど,鉱物質ではアスファルトが実用されている。
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天然油 natural oil 天然物から採取した脂肪油。
主成分は脂肪酸のグリセリンエステル。乾燥性の程度によって,乾性油・半乾性油・不乾性油に分ける。乾燥性の目安として,よう素価が用いられる。
よう素価130以上を乾性油,130~100を半乾性油,100以下を不乾性油ということがあるが,明確な区分の定義はない。(ASTM では,区分の定義はないとしている。)
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用語 対応英訳 定義・解説 出典
【熱特性】      
熱可塑性 thermoplastic, thermoplasticity 熱を加えれば軟らかくなり,冷却すれば硬くなることを繰り返す性質。 K5500
熱可塑性樹脂 thermoplastic resin ガラス転移温度または融点まで加熱することによって軟らかくなり,目的の形に成形できる樹脂。
樹脂は用途により汎用プラスチック,エンジニアリングプラスチック,スーパーエンジニアリングプラスチックに分けられる。塗料としての用途には,加熱して塗膜を形成する焼付塗料として利用されている。
汎用プラスチック;家庭用品,電気製品の外箱,雨樋やサッシなどの建材,梱包資材等に大量に使われ,ポリエチレン(PE),ポリプロピレン(PP),ポリ塩化ビニル(PVC),ポリスチレン(PS),ポリ酢酸ビニル(PVAc),ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂),アクリル樹脂(PMMA)などがある。
エンジニアリングプラスチック;家電品の歯車や軸受け,CDなどの強度や壊れにくさを要求される部分に使用され,ポリアミド(PA;ナイロン),ポリアセタール(POM),ポリカーボネート(PC),変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE,変性PPE,PPO), ポリブチレンテレフタレート(PBT),ポリエチレンテレフタレート(PET),グラスファイバー強化ポリエチレンテレフタレート(GF-PET),環状ポリオレフィン(COP)などがある。
スーパーエンジニアリングプラスチック;エンプラよりもさらに高い熱変形温度と長期使用出来る特性を持つ,略してスーパーエンプラとも呼ばれる。ポリフェニレンスルファイド(PPS),ポリテトラフロロエチレン(PTFE),ポリスルホン(PSF),ポリエーテルサルフォン(PES),非晶ポリアリレート(PAR),液晶ポリマー(LCP),ポリエーテルエーテルケトン(PEEK),熱可塑性ポリイミド(PI),ポリアミドイミド (PAI)などがある。
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熱硬化性 thermosetting property, thermosetting 樹脂などが,加熱すれば硬化して不溶性・不融性になり,元の軟らかさには戻らない性質。 K5500
熱硬化性樹脂 thermosetting resin 重合を起こして高分子の網目構造を形成し,硬化して元に戻らなくなる樹脂。
加熱硬化タイプ,A液(基剤)とB液(硬化剤)を混ぜて硬化させる常温硬化タイプがある。硬く,熱や溶剤に強い特徴を生かし,家具の表面処理,耐熱部品,塗料などに使用されている。熱硬化性樹脂には,アルキド樹脂,エポキシ樹脂(EP),ポリウレタン(PUR) ,シリコン樹脂(SI),フェノール樹脂(PF),メラミン樹脂(MF),尿素樹脂(ユリア樹脂,UF),不飽和ポリエステル樹脂(UP),熱硬化性ポリイミド(PI)などがある。
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用語 対応英訳 定義・解説 出典
【合成樹脂】      
アクリル樹脂 acrylic resin, acrylics いろいろなアクリル又はメタクリルモノマーから,及び,それ以外のモノマーも加えて,重合又は共重合によってつくられる合成樹脂。 K5500
アクリル樹脂 acrylic resin, acrylics アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルの重合体で,透明性の高い非晶質の合成樹脂。
アクリル樹脂には熱可塑性アクリル樹脂,熱硬化アクリル樹脂がある。比重が小さく(約1.2),硬く衝撃に強い性質(ロックウェル硬度Mスケール100,シャルピー衝撃強さ約17MJ/m2)を持ち,高い光透過性(日射透過率 約88%)を有するため,有機ガラスとして自動車から航空機および建築物まで広い用途がある。
アクリル基:CH2=CH‐CO‐,メタクリル基:CH2=C(CH3)‐CO‐
MMA(Methyl Methacrylate)モノマー:CH2=C(CH3)‐CO‐CH3
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アミノ樹脂 amino resin アミン類又はアミド類とアルデヒド類との縮重合によって,又はアルコール類でエーテル化して作られる合成樹脂。 K5500
アミノ樹脂 amino resin メラミンとホルムアルデヒドとの重縮合により製造されるメラミン樹脂,尿素とホルムアルデヒドとの重合反応によって製造される尿素樹脂(ユリア樹脂)がある。
メラミン樹脂は引張強度,硬度及び耐衝撃性が尿素樹脂より優れている。光沢を持ち,耐水性,耐候性及び耐磨耗性に優れる為,家具,化粧版,食器などに利用されている。また,電気絶縁性,対アークトラッキング性が高く,難燃加工,スイッチ等の電気部品にも用いられる。欠点として,塩酸,硫酸,硝酸などの強酸に弱い。
尿素樹脂は,過去には漆器の素地,電気部品や玩具として実用されていたが,加熱でホルマリンが溶出することが見出された後は,他の合成樹脂にとってかわられた。
メラミン樹脂塗料とはアルキド樹脂とメラミン樹脂とを混合した塗料で,アルキド・メラミン樹脂塗料と呼ばれる焼付け塗料である。アルキド樹脂が樹脂本体の高分子鎖を形成し,メラミン樹脂は加熱時の架橋剤として作用する。光沢のある焼付け塗料として自動車や電気製品などに広く利用される。
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アルキド樹脂 alkyd resin, alkyds 多塩基酸及び脂肪酸(又は脂肪油)と多価アルコール類との縮重合によって作られる合成樹脂。
多価アルコールとしてグリセリン,ペンタエリトリトールなど,多塩基酸として無水フタル酸,無水マレイン酸など,脂肪酸としてあまに油,大豆油,ひまし油などの脂肪酸が使われる。樹脂中に結合する脂肪酸の割合が大きいものから小さいものへの順に,長油アルキド・中油アルキド・短油アルキドという。
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アルキド樹脂 alkyd resin アルキド樹脂は,アルコール(alcohol)と酸(acid)又は酸無水物(acid anhydride)反応の反応によるエステル化合物である。
アルキドは,アルキッドとも呼ばれ,ポリエステルに属する樹脂である。
塗料や印刷インキの業界で使用されるものを特にアルキドと称することが多い。
塗料などに用いる場合には,着色剤との適合や耐久性を付与するため,油脂をも反応に加えた油変性アルキドとして用いることが多い。油脂は脂肪酸とグリセリンからなるエステルである。油脂に酸とポリアルコール類を加えて反応させると,硬さ,強靭さ,耐薬品性,電気抵抗などの性質を調節した樹脂が作れる。反応後の樹脂は,取り扱いを容易にするため溶剤に溶かすことが多い。変性アルキド樹脂を用いた塗料の例を次に示す。
変性アルキド樹脂塗料の種類
硬質樹脂変性アルキド樹脂塗料:ロジン変性アルキド樹脂塗料,マレイン酸樹脂変性アルキド樹脂塗料,フェノール樹脂変性アルキド樹脂塗料,エポキシ樹脂変性アルキド樹脂塗料
他の樹脂との混合アルキド樹脂塗料:繊維素誘導体塗料,アミノアルキド樹脂塗料,シリコーン変性アルキド樹脂塗料,塩化ゴム混合アルキド樹脂塗料
不飽和モノマー変性アルキド樹脂塗料:スチレン化アルキド樹脂塗料,ビニルトルエン化アルキド樹脂塗料,アクリル化アルキド樹脂塗料
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イソシアネート樹脂 isocyanate resin, isocyanates 芳香族,脂肪族又は脂環族のイソシアネート類による遊離若しくはブロックされたイソシアネート基を含む合成樹脂。
イソシアネート類は,モノマー又は通常ポリマー,アダクト(付加物)若しくはプレポリマーとして,反応性ヒドロキシル基をもつ化合物とともにポリウレタン塗料に使用される。
参考追記:プレポリマー (prepolymer) とは,モノマーの重合,縮合反応を適当な所で止めた中間生成物である。硬化剤などを使用し容易に重合や架橋反応が起きる。
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エポキシ樹脂 epoxy resin, epoxy resins 分子中にエポキシ基を2個以上含む化合物を重合して得た樹脂状物質。
エピクロヒドリンとビスフェノールとを重合して作ったものなどがある。
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エポキシ樹脂 epoxy resin プレポリマーのエポキシ基(エポキシド,epoxide)で架橋ネットワーク化させることで硬化させることが可能な熱硬化性樹脂。
プレポリマーも製品化した樹脂ともエポキシ樹脂と呼ばれる。プレポリマーの組成は種々あるが,ビスフェノールAとエピクロルヒドリンの共重合体が多用されている。硬化剤にはポリアミンや酸無水物が使用される。プレポリマーの組成と硬化剤の種類との組み合わせで多様の物性の実現が可能であること,寸法安定性,耐水性・耐薬品性及び電気絶縁性が高いことから電子回路の基板,封入剤,接着剤,塗料,FRPの積層剤として利用されている。
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セルロース cellulose 分子式 (C6H10O5)n で表される炭水化物(多糖類)。β-グルコースが重合したもので,分子は水素結合によってシート状になっている。
植物細胞の細胞壁および繊維の主成分で,繊維素とも呼ばれる。地球上の最も多い炭水化物である。綿はそのほとんどがセルロースである。
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工業用ニトロセルロース nitro cellulose 塗料,フィルムなどの製造に使われる硝酸セルロース。
ニトロセルロースラッカーの塗膜形成要素として用いる。工業製品は取り扱い上の安全のため,通常はアルコール等の溶剤で湿潤されている。
JIS K 6703「工業用ニトロセルロース」:一般工業用(セルロイド用及び火薬用のニトロセルロースを除く)のニトロセルロースについて規定されています。
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酢酸セルロース cellulose acetate 繊維素(セルロース)の酢酸エステル。
参考追記:アセチルセルロース(acetylcellulose)ともいわれ,繊維(アセテート繊維)や映画フィルム、録音テープのベース材として利用されている。
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硝酸セルロース cellulose nitrate, nitrocellulose 繊維素であるセルロースの硝酸エステル。
参考追記:ニトロセルロース (nitrocellulose),セルロイド (celluloid)ともいわれ,歴史上初の熱可塑性樹脂として知られている。
セルロイド製品は,光や酸素などの影響でセルロースと硝酸に分解・劣化するため長期保存に向かないこと,分解過程で強酸性ガスが発生し金属腐食に影響すること,燃焼性が高いことなどから,多くの製品が他の合成樹脂に代替され,現在はピンポン玉など用途が限られている。
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シリコーン silicone シロキサン結合の主骨格を持つ人工高分子化合物の総称。
ただし,慣用的に低分子シラン類を含む有機ケイ素化合物全般を指す場合もある。
ジクロロジメチルシランなどの各種シラン類を加水分解し,生成したシラノール (R3Si-OH) を脱水縮合したオリゴマー(※1),ポリマーである。 モノマーが10以下の比較的低分子のものをポリシロキサン (polysiloxane) やシロキサンと呼ぶ。なお,合成樹脂として用るものを「シリコン樹脂」や「シリコン」と呼ばれることがあり,元素のケイ素 (silicon) と紛らわしいので注意が必要である。
主骨格のシロキサン結合 (Si-O-Si) は,有機物の炭素-炭素結合に比較し,結合エネルギー,原子間距離,結合角が大きく,分子全体がらせん構造をとっている。このため,有機高分子材料には見られない次に示す特長がある。
主骨格の結合が強いため,200℃(条件により400℃)を超える高温に耐える。さらに,シロキサン結合のバンドギャップが大きく,電気絶縁性が比較的高く,誘電率が小さいことなどから,絶縁耐力に優れ,紫外線や放射線に影響も小さい。
有機性の置換基により無機物にはない特性(柔軟性,親水性,疎水性など)を持たせることができる。使用される置換基は,ポリエーテル,エポキシ,アミン類,カルボキシル基、アラルキル基など多様で,メチル基またはフェニル基のみを導入したストレートシリコーンに対し,変性シリコーンと呼ばれる。
シロキサン結合が2000以下の直鎖構造の分子は,オイルの性質を有し,シリコーンオイル, グリース(耐油性が劣る材質の潤滑),オイルコンパウンド(高い熱伝導率,放熱用,電気用,光学用),消泡剤(小さい表面張力利用,各種溶液の処理工程で利用),化粧品(伸びがよくべたつかない肌触り),日用品(繊維表面に馴染む,摩擦係数が小さい,ティッシュペーパー,リンス,柔軟仕上剤)などに利用されている。
シロキサン結合が5000~10000の直鎖構造分子はゴムの性質を示し,二次加硫してゴムコンパウンド(各種シーリング材,ダイヤフラム,保護用部品など),RTVゴム(触媒を加えることで重合反応する室温硬化型ゴムとして,保護材,放熱材,歯科医療などの型取り剤など)に利用されている。他に,医療素材(バルーンカテーテル,人工心肺膜),シリコーンハイドロゲル(酸素透過型コンタクトレンズ,形成外科・美容整形手術の充填剤など)にも用いられている。
(※1)オリゴマー(oligomer)比較的少数のモノマーが結合した重合体で,モノマーの数によりダイマー(dimer:二量体),トライマー(trimer:三量体),テトラマー(tetramer:四量体)などと呼ぶ。
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シリコーン樹脂 silicone resin, silicone modified resin 有機シリコーン重合体又はその変性品を主成分とするシロキサン基を含む合成樹脂。 K5500
シリコーン樹脂 silicone resin, silicone modified resin ケイ素化合物を主成分とする高分子の合成樹脂。
「ケイ素樹脂」,単に「シリコーン」や「シリコン」などとも呼ばれる。オルガノポリシロキサン (-Si-O-Si-O- 鎖が主鎖,Si上に有機基を有する構造) を主鎖としており,置換基(有機基)により,その物性(屈折率・比重・ガラス転移点・親水性・疎水性・風合いなど)が大きく変化する。シリコーンの項参照。
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水溶性樹脂 water-soluble resins 分子内に親水基を多く持つ樹脂状化合物及び塩基性中和物の重合体で水に溶解するもの。
天然樹脂と合成樹脂とがある。硬化性の合成樹脂は,水性塗料の塗膜形成要素として使われる。縮合,重合などで親水基が失われて高分子化すれば硬化して水不溶性になる。
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水溶性樹脂 water-soluble resins 水に溶ける性質を持つポリマー。
身近なものでは,澱粉,寒天,ゼラチンなどの天然ポリマーが挙げられる。日常生活の中では,ポリアクリル酸やポリエチレンオキシドのようなポリマーが,洗剤,紙,繊維,食品の原料や加工材料として幅広く使われている。アクリル酸系水溶性ポリマーは,その分子量により,分散⇒増粘⇒凝集⇒膨潤と機能が変化するため,分散剤,粘度安定剤,増粘剤,パップ材,凝集剤,高吸水性樹脂など幅広い用途で用いられている。塗料分野では,顔料分散剤として活用されている。
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スチレン樹脂 styrene resin スチレンの重合又は他のモノマー類との共重合によって得られる合成樹脂。
参照追記:ポリスチレン,スチロール樹脂ともいわれる。
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ビニル樹脂 vinyl resin ビニル基を含むモノマー類の重合によって得られる合成樹脂。
備考:スチレン,アクリル,酢酸ビニルなどの樹脂は,該当するモノマーから同じ方法で作られる。
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ビニル樹脂 vinyl resin 広義にはビニル基を有する化合物の重合または共重合で得られる樹脂の総称。
狭義には塩化ビニル樹脂をいう。ポリ塩化ビニル樹脂の項参照。
他に,酢酸ビニル樹脂,塩化ビニリデン樹脂などがある。
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フェノール樹脂 phenolic resin 各種のアルデヒド,特にホルムアルデヒドと,フェノール及びその同族体又は誘導体との縮重合によって作られる合成樹脂。 K5500
フェノール樹脂 phenolic resin フェノールやその同族対,誘導体とホルムアルデヒドの縮重合で作られる熱硬化性樹脂の一つ。
ベークライト,石炭酸樹脂ともいわれる。
世界で初めて植物以外の原料から人工的に合成されたものである。電気的,機械的特性が良好で,耐熱性,難燃性に優れる。耐油,耐薬品性も高いが,アルカリに弱い。
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フッ素樹脂 fluorocarbon polymers フッ素を含むオレフィンを重合して得られる合成樹脂の総称である。
耐熱性耐薬品性の高さや摩擦係数の小さいことが特徴である。デュポン社の商標「テフロン®」が有名でフッ素樹脂の代名詞となっている。中でも最も大量に生産されているフッ素樹脂はポリテトラフルオロエチレン〈四フッ化樹脂〉である。フッ素樹脂にはフッ素化により次の分類がある。
 完全フッ素化樹脂 :ポリテトラフルオロエチレン(四フッ素化樹脂,略号:PTFE)
 部分フッ素化樹脂:ポリクロロトリフルオロエチレン(三フッ素化樹脂,略号:PCTFE, CTFE),ポリフッ化ビニリデン(略号:PVDF),ポリフッ化ビニル(略号:PVF)
 フッ素化樹脂共重合体: ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(略号:PFA),四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(略号:FEP),エチレン・四フッ化エチレン共重合体(略号:ETFE),エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(略号:ECTFE)
 常温硬化型のふっ素樹脂塗料(塗料名称では,JIS規格を含め,ひらがな表記が標準)には三フッ化又は四フッ化形のフルオロエチレンビニルエーテル樹脂(FEVE)とイソシアネートで硬化するタイプが多く用いられている。
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ポリウレタン樹脂 polyurethane resin 多官能イソシアネート類と反応性ヒドロキシル基をもつ化合物との反応によって作られる合成樹脂。
参考追記:常温硬化型のふっ素樹脂塗料は,ポリウレタン樹脂の定義範疇の樹脂を用いた塗料である。
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ポリウレタン樹脂 polyurethane resin ポリウレタンとは,ウレタン結合を有するポリマーの総称である。
ウレタン結合は,多官能イソシアネート類と水酸基などの活性水素を有する化合物ほ付加反応により生成される。
ウレタン結合:R‐NH-COOR‘は,イソシアネート基(-N=CO)とアルコール基(‐R‐OH)が縮合してできる。イソシアネートは,水(反応しやすい)やカルボキシル基と反応しCO2発生で発泡する。
一般的にはポリイソシアネートとポリオールから生成される。ポリウレタンの特徴は,伸縮性や熱可塑性,熱硬化性などを条件によって様々に変化させて作れることにある。例えば,熱可塑性ポリウレタンのためのポリオールとして,ポリエステル系(アジピン酸エステル系,ラクトン系),ポリエーテル系(エラストマー),ポリカーボネート系,ポリエーテル・エステル系などの選択で特性を変えることができる。しかし,ポリウレタン樹脂の耐熱性や耐水性は他の合成ゴムに比べ低く,水分による加水分解や空気中の窒素酸化物(NOx),塩分,紫外線,熱,微生物などの影響で徐々に分解される。
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ポリエステル樹脂 polyester resin 多価塩基酸と多価アルコールとの縮重合によって作られる合成樹脂。
備考:この樹脂は,その構造によって分類される。例えば,飽和及び不飽和ポリエステル樹脂。
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ポリエステル樹脂 polyester resin 多価カルボン酸とポリアルコールとの重縮合体。
ポリアルコール(-OH を複数有する化合物)と多価カルボン酸(-COOH を複数有する化合物)を反応(脱水縮合)させて作ることを基本とする。テレフタル酸とエチレングリコールとから製造されるポリエチレンテレフタレート(Poly-Ethylene-Terephthalate ,PET)の生産量が最も多い。
樹脂の用途によって分類名が異なる。
.繊維やペットボトルなどでは,テレフタル酸とエチレングリコールを主成分とするポリエチレンテレフタレートを,略してペットと称したり,ダクロン(アメリカ・デュポンの商標)、テトロン(帝人と東レの共同商標)などの商品名で称することもある。
成形品やFRP(ガラス繊維などで強化したプラスティック)では,ポリエステルの主鎖に不飽和基(二重結合)を含ませ,スチレンなどのビニル基(H2C=CH-)をもったモノマーと成形時に共重合させたものが用いられ,不飽和ポリエステルと称している。
塗料等では,油脂や他の樹脂(たとえばエポキシ樹脂)を用いて変性(性質を調整)したポリエステル樹脂をアルキド樹脂と称している。アルキド樹脂の項参照。
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不飽和ポリエステル樹脂 unsaturated polyester resin ポリマー鎖の中に後で架橋ができるような炭素―炭素に重結合によって特徴づけられているポリエステル。 K5500
ポリエチレン polyethylene,PE エチレンが重合した構造を持つ高分子化合物。
最も単純な構造をもつ高分子であり,容器や包装用フィルムなど様々な用途に利用されている。
重合法により分子量,分枝数,結晶性が異なり,特性(密度,熱特性,機械特性など)も異なる。
一般に酸やアルカリに安定である。低分子量のものは有機溶剤で膨潤するが,高分子量のものは耐薬性に優れる。
ポリエチレンの密度による分類では,0.92~0.96を高密度ポリエチレン(HDPE, High Density Polyethylene:荷重たわみ温度130℃以下),0.91~0.92を低密度ポリエチレン(LDPE, Low Density Polyethylene:荷重たわみ温度100℃以下),0.9未満を超低密度ポリエチレン(VLDPE, Very Low Density Polyethylene / ULDPE, Ultra Low Density Polyethylene)とされている。他に,直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE, Linear Low density Polyethylene),超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE, ultra high molecular weight-polyethylene:一般に分子量150万以上)といった分類もある。
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ポリプロピレン polypropylene,PP) プロピレンを重合させた熱可塑性樹脂。
包装材料,繊維,文具,プラスチック部品,再利用可能な容器,実験器具,自動車部品,紙幣など幅広い用途をもっている。汎用樹脂の中では高い耐熱性を示すとともに,高い強度,低い吸湿性,耐薬品性に優れるなどの特徴がある。しかし,染色性が悪く,耐光性が低い。
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ポリ塩化ビニル polyvinyl chloride,PVC 塩化ビニル(クロロエチレン)モノマーを重合した熱可塑性樹脂。
一般的な合成樹脂の1つで,塩化ビニル樹脂,俗には塩化ビニール,塩ビ,ビニールなどと呼ばれる。塩化ビニルモノマーを重合させただけの樹脂は硬く脆い。また,紫外線で劣化黄変しやすい。実用製品には,柔軟性を与えるための可塑剤,紫外線劣化を防ぐ安定剤を加えたものが用いられている。
ポリ塩化ビニルの特性として,優れた耐水性・耐酸性・耐アルカリ性・耐溶剤性に加え,難燃性,電気絶縁性が期待できる。優れた物性を持ちながら,ソーダ工業との関係で低価格である。このため,壁紙,衣料,バッグ,インテリア(クッション材、断熱材、防音材、保護材として),電線被覆(絶縁材),包装材料,水道パイプ,建築材料,農業用資材(農ビ),消しゴムなど広い分野で利用されている。
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用語 対応英訳 定義・解説 出典
【天然樹脂】      
アスファルト asphalt 軽質又は揮発性の成分が蒸発して残った複雑な炭化水素化合物の混合物。
黒茶色の半固体。二硫化炭素,アセトン,トルエンなどに溶ける。天然アスファルトと石油アスファルトとがあり,石油アスファルトにはストレートアスファルトとブローンアスファルトとがある。
黒ワニスの塗膜形成要素として,また油ワニス・オイルスティンの着色材として用いる。石油アスファルトは,JIS K 2207参照。
K5500
アスファルト asphalt 天然または石油精製から得られる瀝青(れきせい,ビチューメン)を主成分とする半固体あるいは固体の暗褐色ないしは黒色の粘着性物質。
アスファルトは数千種類以上の化合物の集合体である。それらを個々に取り出すことは事実上不可能で,化学構造の似通ったものを4つのグループに分類されてきた。一般的には飽和分,芳香族分,レジン分,アスファルテンの4組成分に分別される。なお、アスファルテンを除く3組成分をマルテンと称する。アスファルトには,天然アスファルトと石油アスファルトとがあり,石油アスファルトにはストレートアスファルト(常圧蒸留装置,減圧蒸留装置などで得られる残留瀝青物質)とブローンアスファルト(ストレートアスファルトを加熱し,空気を吹き込み酸化重合したもの)とがある。通常舗装用アスファルトといわれるものは,ストレートアスファルトである。塗料分野では,黒ワニスの塗膜形成要素,油ワニス・オイルステインの着色剤として用いられていた。
JIS K 2207「石油アスファルト」:道路舗装,水利構造物,防水,電気絶縁及び一般工業に用いる石油アスファルトについて規定されている。
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ビチューメン bitumen 元来は,色,硬度,揮発性など不定の天然炭化水素化合物の総称。
歴青(瀝青;れきせい),ビチューム,ビチウメン,チャン (chian turpentine) ともいわれる。
現在では,石油化学工業・石炭化学工業でできるタール・アスファルト・ピッチも含めた黒又は黒褐色の液状ないし樹脂状の物質の総称として用いられる。
K5500
ブローンアスファルト blown asphalt ストレートアスファルトに加熱しながら空気を吹き込んで作る。
防水用,電気絶縁用,耐薬品用などの黒ワニスに用いる。
K5500
エステルガム ester gum, rosin ester 食品衛生法での指定添加物の一つ,ロジン又はその重合物などの誘導体のエステル化合物である。
松脂の成分であるアビエチン酸類とメタノール,グリセリン,ペンタエリスリトールをエステル化して作られる。淡黄~淡褐色のガラス状の塊または透明で粘稠な液体。チューインガムの原料のチクルに似た樹脂感をだす食感改良剤として,風船ガムでは被膜の強化剤として,ガムベースに配合して使われる。
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塩化ゴム樹脂,塩素化ゴム chlorinated rubber resin, chlorinated rubber 天然又は合成ゴムに塩素を作用させて作られる樹脂。
参考追記:1960年代までは,天然ゴムを塩素化させた樹脂として活用され,1930年代に耐水性,耐薬品性,耐候性の良さを持つ塗料として塗料化された。1960年代に合成ゴムを塩素化した塩化ゴムが開発された。その後,変性樹脂や可塑性の進歩により,高性能な品質が得られ,橋梁・建築・水門,およびプラント市場の鋼構造物用標準塗装仕様のひとつに採用された。
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ギルソナイト gilsonite 石油が岩石に浸み込んで長年月を経てアスファルトに変質したもので硬質アスファルトとして区分される。
黒色または茶褐色の石炭のようであるが,原油でもない石炭でもない特殊な炭化水素樹脂と言われている。米国ユタ州のみで産出される。アメリカンギルソナイト社の製品。黒インキや暗黒系の塗料などのワニスにギルソナイトを使った「黒ワニス」が活用される。
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セラック shellac, orange shellac ラックカイガラムシ(Laccifer lacca),およびその近縁の数種のカイガラムシの分泌する虫体被覆物を精製して得られる樹脂状の物質。
常温で黄色から褐色の透明性のある固体。精製で白色,透明になる。通常,熱可塑性であるが,一定の温度では熱硬化性を示す。アルコール系溶剤に溶けるが,他の有機溶剤には耐性を示す。JIS K 5909「セラック」 参照。
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ロジン rosin, colophonium マツ科の植物の樹液である松脂(まつやに),又は松の木のくずを水蒸気蒸留して得た物質を,更に蒸留して,テレビン油を流出分離したときの樹脂状の残留物で,ロジン酸(アビエチン酸,パラストリン酸,イソピマール酸等)を主成分とする天然樹脂。
JIS K 5902「ロジン」:生松やにから製造したロジンについて規定。規格ではロジンを2等級に分け,色の明るさを示す番号を付けて分類されている。1級:1~5号,2級:1~8号
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用語 対応英訳 定義・解説 出典
【油脂(天然)】      
あまに油 linseed oil あまに種子(含油分35~40%)から得られる液状植物油。
リノレン酸を主成分とし,乾性油の代表的な油脂。あまに種子は,カナダ,アルゼンチンなどの寒帯地域で生産される。塗料,印刷インキ,油ワニス,リノリウムなどに用いられる。生あまに油,精製あまに油,ノンブレークあまに油などがある。
K5500
あまに(亜麻仁)油 linseed oil カナダ,アルゼンチンなどの寒帯地域で主に生産されれているアマの種子を圧搾,つぶして溶媒抽出で得たα-リノレン酸,ω-3脂肪酸,リノール酸,オレイン酸をはじめとする不飽和脂肪酸に富む乾性油で,塗料・油ワニス・リノリウム・印刷インク・油布・軟石鹸(なんせつけん)などの原料とされてれいる。 編集
煮あまに油 boiled linseed oil あまに油を原料とするボイル油。JIS K 5421「ボイル油及び煮あまに油」 参照。 K5500
乾性油 drying oil 薄膜にし空気中に置くと,酸素を吸収して酸化し,これに伴って重合が起こって固化し,塗膜を形成する脂肪油。高度不飽和脂肪酸を含む。 K5500
乾性油 drying oil 空気中で徐々に酸化して固まる油のこと。
油絵具やワニスに利用される。ヨウ素価(成分中の不飽和脂肪酸の量を示す指標)で分類され,ヨウ素価130以上を乾性油,100~130を半乾性油,100以下を不乾性油という。
亜麻仁(あまに)油・桐(きり)油・芥子(けし)油・紫蘇(しそ)油・胡桃(くるみ)油・荏(えごま)油・紅花(べにばな)油・向日葵(ひまわり)油などがある。
乾性油の主成分である不飽和脂肪酸(二重結合を持つ)の二重結合が空気中の酸素と反応し,過酸化物やラジカルが生じる。これらが開始剤となり,二重結合間の重合反応が進行することで分子量の大きな網目状の高分子となる。不飽和脂肪酸の量が多いもの,すなわちヨウ素価の高い油ほど固まるのが早い。
不飽和脂肪酸の酸化反応や重合反応は発熱反応である。このため,ヨウ素価の高い油を布などに含ませ,空気にふれる面積を大きくすると,急速に反応が進み自然発火するおそれがある。
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半乾性油 semidrying oil 乾性油ほど早くはないが,空気中で乾燥する性質のある脂肪油。
一般によう素価100~130のもの。
参考追記:大豆(だいず)油・コーン油・綿実(めんじつ)油・胡麻(ごま)油などがある。
K5500
不乾性油 nondrying oil 液状の脂肪油で,空気中で乾燥しないもの。
よう素価100以下の脂肪油。
参考追記:オリーブ油・扁桃(あーもんど)油・落花生(らっかせい)油・椰子(やし)油・椿(つばき)油・菜種(なたね)油・蓖麻子(ひまし)油などがある。
K5500
きり油 tung oil, China wood oil, Chinese wood oil きりの種子から採った乾性油。
共役二重結合をもつエレオステアリン酸のグリセリドを多量に含み,重合しやすく,乾燥が速い。シナきり油と日本きり油が知られている。きり油のゲル化温度は,280℃で12分以内。
K5500
魚油 fish oil, marine oil 主に,いわし,にしん,いかなどの魚体又は内臓から採った脂肪油。高度不飽和脂肪酸を含む。
参考追記:主な脂肪酸成分はパルミチン酸である。他にステアリン酸,ミリスチン酸,アラキジン酸,オレイン酸,ヘキサデセン酸などを含む。
魚油のままでは製革用油,重合油,ボイル油,低級塗料用油として利用される。魚油は硬化油の原料の一つで,硬化(水素添加)した魚油はマーガリン,ショートニング,石鹸の原料として用いられる。
K5500
スタンド油 stand oil, bodied oil 乾性油を加熱重合して作った粘度の高い油。
主に,油ワニスの塗膜形成要素として用いる。原料油は,主にあまに油で,きり油などを混ぜることがある。
K5500
トール油 tall oil 亜硫酸パルプの廃液(参考追記:松材を原料にクラフトパルプを作る時に副成)から採った油状の物質。
脂肪酸エステルと樹脂酸エステルとを含む。塗料用には,加工・分解によって脂肪酸を主成分とした製品が主に使用される。
K5500
脱水ひまし油 dehydrated castor oil ひまし油を化学的に脱水して作った乾性油。
脱水反応で共役二重結合ができ,きり油の代用になる。
K5500
ボイル油 boiled oil 乾性油・半乾性油を加熱し,又は空気を吹き込みながら加熱して,乾燥性を増進させて得た油。JIS K 5421「ボイル油及び煮あまに油」 K5500
サフラワー油 safflowe oil べにばなの種子から採った乾性油。
ペイント・油ワニスの塗膜形成要素として用いる。
K5500
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