腐食概論:腐食の基礎

 技術用語関連のページ探しは
    “キーワード索引”

 関連機関へのリンク,腐食関連書籍は
    “お役立ち情報”

  ☆ “ホーム” ⇒ “腐食防食とは“ ⇒ “腐食の基礎“ ⇒

 ここでは,【腐食現象の分類】【腐食形態による分類例】【腐食原因や機構による分類例】に項目を分けて紹介する。

  【腐食現象の分類】

 腐食現象は,前節で紹介した「環境による分類」のほかに,下図に示すように,腐食形態や腐食機構によっても分類される。

腐食形態・腐食機構による分類

腐食形態・腐食機構による分類

 腐食形態の違いによる分類は,第一に,金属表面にほぼ均一に生じる均一腐食(uniform corrosion)全面腐食(general corrosion , entire surface corrosion)ともいう)と,局部的に集中して生じる局部腐食(local corrosion)に大別される。
 
 局部腐食は,更に発生原因や腐食機構の違いで次のように分類される。
 鋼構造物などでの観察事例の多い局部腐食には,構造物の構造の影響を受ける濃淡電池腐食(concentration cell corrosion),使用材質の違いで生じる異種金属接触腐食(bimetallic corrosion , galvanic corrosion)がある。
 
 ステンレス鋼などの不動態化(passive state)する金属において,すきま間腐食(crevice corrosion)孔食(pitting corrosion),及び応力腐食割れ(stress corrosion cracking)(SCC)は,材料性能に大きく影響する腐食現象として知られる。
 
 特殊な条件が整った場合の局部腐食として,金属材料の結晶粒界に選択的に生じる粒界腐食(intergranular corrosion),腐食と応力の相乗効果で金属が応力単独の場合より早期に強度低下する腐食疲労(corrosion fatigue),特定の合金成分が選択的に溶解する選択腐食(selective leaching)脱成分腐食;dealloying ともいう)がある。
 選択腐食の中で,黄銅から亜鉛が溶解する場合を,特に脱亜鉛腐食(dezincification)という。
 
 塗膜などの被覆下を糸状に進む糸状腐食(filiform corrosion),電気鉄道からの漏れ電流による地中埋設金属の迷走電流腐食(stray current corrosion)電食ともいう)などが知られている。
 
 高張力鋼を用いたボルトの遅れ破壊,すなわち水素脆性(hydrogen embrittlement)は,その原因の一つに,ボルト内部の局部腐食で発生した水素がある。
 
 特殊な物理的状況下で観察される摩耗腐食(erosion-corrosion)(エロージョン・コロージョン),キャビテ-ション・コロージョン(cavitation corrosion)擦過(さっか)腐食(fretting corrosion)(フレッティング・コロージョン)なども局部腐食現象である。

   ページのトップ

  【腐食形態による分類の例】

 均一腐食(uniform corrosion)
 読み「きんいつふしょく」,金属表面にほぼ均一に生じる腐食。全面腐食ともいう。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 局部腐食(localized corrosion)
 読み「きょくぶふしょく」,金属表面の腐食が均一でなく,局部的に集中して生じる腐食。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 局部的に集中して起こる腐食。【JIS H 0201「アルミニウム表面処理用語」】
 金属種や腐食要因の違いで孔食,すき間腐食,異種金属接触腐食など様々ある。
 粒界腐食(intergranular corrosion)
 読み「りゅうかいふしょく」,金属材料の結晶粒界に選択的に生じる腐食。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 一般的には,金属表面に腐食生成物が多量に堆積し目視で認識困難であるが,放置すると材料の破断などの原因になる。
 結晶粒の界面(結晶粒界)は,二つの結晶粒の格子が乱れた不連続領域になっている。結晶粒界は,結晶粒内部に比べて,不純物が入り込む機会が多く,金属の腐食にとって欠陥部として働き,甚だしい場合に局部腐食として問題となる。
 腐食割れ(dry corrosion)
 読み「ふしょくわれ」,腐食と応力の相乗効果で金属が応力単独の場合より早期に割れる現象。応力腐食割れ,腐食疲労などがある。
 目視では確認困難で,応力計測から予測される疲労寿命より著しく短い期間に疲労亀裂の発生や破断に至る場合がある。
 選択腐食(selective leaching)
 読み「せんたくふしょく」,脱成分腐食(dealloying)ともいわれる。特定の合金成分が選択的に溶解する腐食。黄銅から亜鉛が溶解する場合を脱亜鉛腐食(dezincification)という。【JIS Z0103「防せい防食用語」

   ページのトップ

  【腐食原因や機構による分類の例】

 
 濃淡電池腐食(concentration cell corrosion)
 読み「のうたんでんちふしょく」,金属表面に接触する水溶液中のイオンや溶存酸素の濃度が局部的に異なるために生じた電池による腐食。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 濃淡を原因とする電位差で生じた電池(マクロ腐食電池)による腐食で,広義の電池作用腐食(ガルバニック腐食;galvanic corrosion)の一種である。なお,酸素の濃淡電池形成の場合を通気差腐食(differential aeration corrosion)などともいう。
 マクロ腐食電池(macro-galvanic cell)
 マクロセルともいわれ,アノードとカソードがはっきりと区別できる程度の大きさをもち,その位置が固定されている腐食電池をいい,異種金属接触電池,通気差電池などがこれに属する。【JIS Z 0103「防せい防食用語」】
 すき間腐食(crevice corrosion)
 濃淡電池腐食の一種で,金属又は金属と他の材料との間にすき間が存在する場合,すき間の内外においてイオン,酸素などの濃淡電池が構成されて生じる腐食。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 酸素の濃淡のみで生じる濃淡電池は通気差電池(differential aeration cell)といわれ,これによる腐食を通気差腐食(differential aeration corrosion)という。
 異種金属接触腐食(bimetallic corrosion , galvanic corrosion)
 読み「いしゅきんぞくせっしょくふしょく」,異種金属が直接接続されて,両者間に電池が構成された時に生じる腐食。ガルバニック腐食ともいう。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 電解質を介して電気回路が形成している場合には接触腐食ともいわれる。
 マクロ腐食電池(macro-galvanic cell)による電池作用腐食(ガルバニック腐食;galvanic corrosion)の一種ではあるが,一般に,日本語でガルバニック腐食と称した場合には,異種金属接触電池(galvanic cell)による腐食を指すのが通例となっている。
 孔食(pitting corrosion)
 読み「こうしょく」,金属内部に向かって孔状に進行する局部腐食。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 局部腐食が金属内部に向かって孔状に進行する腐食。【JIS H 0201「アルミニウム表面処理用語」】
 糸状腐食(fillform corrosion)
 読み「いとじょうふそく」,主に塗料又は油脂などで被覆した金属表面に,糸状に進行する腐食。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 主に,塗料又は油脂などで被覆した金属表面に,糸状に進行する腐食。一般に,金属の塗装されていない端面から,又は塗膜の部分的にきずのついた場所から始まる。備考:一般に,糸さびは,長さや成長する方向が不規則であるが,ほぼ平行に大体同じ長さに成長する。【JIS K5500「塗料用語」】
 重ねた板の間又は塗膜の下に生じる糸状の腐食。【JIS H 0201「アルミニウム表面処理用語」】
 迷走電流腐食(stray current corrosion)
 読み「めいそうでんりゅうふしょく」,正規の回路以外のところを流れる電流によって生じる腐食。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 直流電鉄の線路付近の線路から漏れた電流による埋設鋼管などの局部的腐食として問題となる腐食現象である。迷走電流の原因が直流電車線路の場合を特に電食ともいう。
 応力腐食割れ(stress corrosion cracking:SCC
 読み「おうりょくふしょくわれ」,腐食と引張応力との相乗作用によって金属材料に割れを生じる現象。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 溶射被膜に応力と腐食環境の相互作用で亀裂が発生し,そのき裂が時間と共に進展する現象。【JIS H8200「溶射用語」】
 腐食疲労(corrosion fatigue)
 読み「ふしょくひろう」,腐食と繰り返し応力との相乗作用によって,金属材料に生じる強度低下。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 繰り返しの応力単独の場合より金属疲労が促進され,応力から計算される疲労寿命より著しく短命になり,損傷・事故の原因になり易い。
 水素脆性(hydrogen embrittlement)
 読み「すいそぜいせい」,腐食,酸洗い,電解,溶接などによって生じた水素が金属中に吸蔵されて,材質がもろくなる現象。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 前処理及びめっき処理の過程で,被めっき物が水素を吸蔵して延性又はじん(靱)性が低下する現象。【JIS H0400「電気めっき及び関連処理用語」】
 現象が現れるまで時間を要するため,遅れ破壊(delayed fracture)ともいう。
 エロージョン・コロージョン(erosion corrosion)
 流動する水,土砂などの環境物質の摩耗作用と腐食作用の相乗作用によって金属に生じる損耗。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 摩耗腐食(まもうふしょく)ともいわれ,各作用が単独の場合の損傷の単純和より大きい損傷となる。
 キャビテ-ション・コロージョン(cavitation corrosion)
 金属表面で,これに接触する液体の圧力が繰返し変動することで,高速での気泡の発生・崩壊が起こることによって,金属表面にに生じる損傷をキャビテーション損傷(cavitation damage)という。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 キャビテーション損傷で金属表面の不動態皮膜などの酸化皮膜が破壊され,腐食が促進されることをキャビテーション・コロージョンという。
 フレッティング・コロージョン(fretting corrosion)
 空気中で金属とそれに接触する金属又は他の物質との接触面で,微小の滑りが繰り返し起こるときに金属表面に生じる腐食をいう。擦過(さっか)腐食ともいう。【JIS Z0103「防せい防食用語」】

   ページのトップ