腐食概論:腐食の基礎

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  【均一腐食:清浄表面の濡れ】

 金属の大気腐食(atmospheric corrosion)では,【環境因子と腐食速さ】で解説したように,表面に形成する水膜の厚みと組成の影響を強く受ける。
 大気環境での水膜形成の要因には,降雨,結露,及び大気中の水蒸気吸着がある。ここでは,清浄な金属表面の水蒸気の吸着,及び結露による濡れ現象について紹介する。

 【水蒸気の吸着】
 大気の水蒸気圧と鋼表面への水分子吸着量の関係は,下図の一般的な吸着等温線(adsorption isotherm)に従うと考えられる。水蒸気圧が比較的低い段階で,金属表面前面に水分子が単分子層として吸着する。

水蒸気の吸着等温線

水蒸気の吸着等温線

水分子の構造

水分子の構造

 水分子は,右図のように,電子雲が偏った構造のため,金属表面の影響を受け分子が特定の方向を向いて吸着する。水蒸気圧の増加に伴い,水の吸着が進むが,このとき一方向を向いて吸着している水分子の単分子層の上に,方向性を持って規則正しく吸着することになる。
 水分子複数層吸着すると,金属表面の影響が小さくなり,水分子がランダムに吸着できるようになる。この段階までの水分子は,移動が制約されているので,水膜として存在しても腐食反応は進まない。
 
 上図に示すように,ある水蒸気圧を超えると,吸着する水分子の量が急激に増え,分子の移動が可能な液状の水膜になる。清浄な鋼表面では,相対湿度80%以上でこの状態になり,腐食反応が継続できる状態になる。
 このため,ISO 9223「Corrosion of metals and alloys -corrosivity of atmospheres-Classification」では,「0℃よりも高い気温のときに,相対湿度が 80%以上であるときの時間」濡れ時間と定義している。
 
 【結露による濡れ】
 結露(dew formation)による濡れは,良く知られるように,物体の温度が外気温より低い時にしばしば観察される現象である。
 大気中で結露するか否かは,大気の気温と相対湿度で決まる露点(dewpoint)と物体の温度の関係で決まる。
 大気環境の構造物などの温度が気温より低くなる主要因は,放射冷却(radiational cooling)である。放射冷却は,夜間の気象,構造物周辺の環境,及び構造の影響を受ける。
 屋外環境では,晴天で相対湿度の高い日の明け方など,構造物の温度上昇より気温上昇が大きい時間帯で結露が観察され易い。

  【主な用語の概説】

 吸着(adsorption)
 気相/液相,液相/液相,気相/固相,液相/固相などの 2相の界面で,物質の濃度が周囲よりも増加する現象をいう。吸着していた物質が界面から離れることを脱着または脱離(desorption)と呼ぶ。
 界面の原子は,物質内部とは異なり,周囲との相互作用に関わる原子が少なく,自由エネルギーが大きくなる(界面自由エネルギー)。このため,界面の原子は,界面自由エネルギーを小さくするため,近接した分子などの化学種と結合する。
 吸着は,結合様式により,ファンデルワールス力による物理吸着,共有結合やイオン結合による化学吸着に分けられる。
 吸着等温線(adsorption isotherm)
 気体の場合の圧力,液体の場合の濃度を変化させたとき,平衡吸着量をグラフにプロットしたものをいう。
 潮解(deliquescence)
 対象とする物質(固体)の飽和水溶液の水蒸気圧と問題とする環境の水蒸気の分圧(湿度)を比較し,環境の水蒸気の分圧が大きい場合に,物質が環境中の水分子を吸収し,物質を含む水溶液を形成する現象をいう。
 固体が残存している場合は,飽和水溶液を形成する。固体がすべて水溶液になった後は,水溶液の水蒸気圧が環境の水蒸気の分圧に一致する濃度まで希釈される。この現象を起こす物質には,塩化マグネシウム(MgCl2), 水酸化ナトリウム(NaOH),塩化カルシウム(CaCl2) ,クエン酸(C6H8O7)などがある。
 結露(dew formation)
 露点以下の温度で水蒸気が凝縮すること。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 水蒸気を含んでいる空気が冷却して露点以下になり,水蒸気が液化して露を結ぶ現象。【JIS H 0201「アルミニウム表面処理用語」】
 露点(dewpoint)
 水蒸気を含む空気やガスを冷却するとき,その水蒸気圧が飽和水蒸気圧と等しくなる温度。この温度以下になると水蒸気は液化する。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 雰囲気中の水分が凝縮し始める温度。備考:ガス浸炭の場合は,露点でカーボンポテンシャルを調節できる。【JIS G 0201「鉄鋼用語(熱処理)」】

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