腐食概論腐食の基礎

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 ここでは,腐食現象に関連し, 【異種金属接触腐食の程度】, 【主な用語】 を紹介する。

 腐食現象の分類

 異種金属接触腐食の程度

 前項で紹介したように,異種金属接触腐食(bimetallic corrosion , galvanic corrosion)の可能性は,使用する金属種と使用環境から評価できるが,その腐食程度については,金属間の電位差に加えて,2種の金属の接触状況を考慮しないと推定できない。
 
 例えば,海水中で電極電位の卑な(Fe)が貴な(Cu)と接触し,かつ,溶存酸素の拡散で腐食速度が律速(酸素拡散律速)されるという基本条件が成立しているとする。
 このとき,カソード反応は酸素の拡散速度で律速されている。すなわち,カソード(銅及び鉄)での単位面積当たりの酸素消費量が一定と考えられるので,アノード(鉄)の反応量(腐食度は,カソードの表面積に影響されることになる。
 
 ここで,カソードとアノードの面積比の影響について考える。
 鋼の表面積と銅の表面積の合計が同じ面積(1m2)とする。
 場合①:鋼の面積が銅より圧倒的に多い場合,鋼と銅の面積比 9:1
 場合②:鋼の面積と銅の面積が同じ場合,面積比 5:5
 場合③:鋼より銅の面積が圧倒的に多い場合,面積比 1:9
と仮定した時の鋼の腐食量を求める。

 腐食反応の基本
 第一に,腐食速度は,酸素拡散律速なので,面積が同じ場合の酸素消費量は同じ量となる。このことは,酸素の還元に使われる電子の量も同じことを意味する。
 第二に,酸素の還元に使われる電子は,電位の卑な鋼のイオン化により供給される。

 従って,仮定した場合①~③の何れも,鋼を単独で暴露した場合の鋼の溶解量(鉄イオン量)P0 と同じになる。
 カソードは,鋼表面のミクロ腐食電池形成(micro-galvanic cell)によるカソード,鋼と銅の接続で形成されるマクロ腐食電池(macro-galvanic cell)のカソード(銅の表面全体)になる。
 従って,全面積が同一で,鋼の露出表面積が異なる場合①~③の鋼の単位面積当たりの腐食量(腐食度)を求めると,
  場合①:(1+1/9)P0
  場合②:(1+5/5)P0
  場合③:(1+9/1)P0
 となる。すなわち,鋼単独の場合に比較して,場合①で約1.1倍,場合②で2倍,場合③では10倍の腐食量になる。
 このように,異種金属接触腐食では,接触する電位の貴な金属の面積の影響が大きい。
 以上は,原理を説明するために理想化した場合である。実際には,金属種,面積比以外に,接触する水の導電性,水膜の厚み,水のpH(酸性では,水素発生型腐食となり,中性とは異なる挙動を示す)の影響も大きい。

面積比の影響

異種金属の面積比の影響

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 主な用語の概説

 電極(electrode)
 電気化学では,広義には金属などの電子伝導体の相と電解質溶液などのイオン伝導体の相とを含む少なくとも二つの相が直列に接触している系(電極系ともいう)。狭義にはイオン伝導体に接触している電子伝導体の相。【JIS K 0213「分析化学用語(電気化学部門)」】
 電極を示す名称には,カソード・アノード,正極(+極)・負極(-極),陰極・陽極などの名称が使われている。特に,陰極・陽極の用語は,技術分野で示す意味が異なり,混乱した使用例が見られるので,注意が必要である。
 なお,カソード(cathode)は還元反応を生じる電極,アノード(anode)は酸化反応を生じる電極をいう。
 電極電位(electrode potential)
 JIS K 0213 「分析化学用語(電気化学部門)」では
 a ) 電極が溶液相などのイオン伝導体相と接しているとき,後者の内部電位に対する前者の内部電位。注記:この値を直接実測することは不可能である。
 b ) 注目している電極系を,ある参照電極と組み合わせてガルバニ電池を構成させたとき,注目する電極に取り付けた金属端子の内部電位から,参照電極に取り付けた同種の金属端子の内部電位を差し引いた値。
 すなわち,電極電位の絶対値を測定することは不可能で,知ることができるのは,基準とした電極との電位差である。
 腐食度(corrosion rate)
 ある期間に生じた単位面積当たりの腐食量をその期間で除して求められる値。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 この値は,暴露期間中に時々刻々変化する腐食速度(金属の腐食反応速度)とは異なる。また,同じ条件の試験であっても,暴露期間が異なると腐食度も異なる。単位は,単位面積当たり,1年(平均太陽年,記号 a )当たりのグラム数(g・m-2・a-1)で表わす。
 大気暴露試験で得られる腐食度は,暴露開始時期の違い(例えば春開始と秋開始など)の影響も受ける。このため,腐食度で腐食性評価を行う場合には,暴露環境条件に加えて,暴露開始時期,暴露期間(暴露 1年目や暴露 X-Y年など)などの情報を併記するのが望ましい。
 マクロ腐食電池(macro-galvanic cell)
 アノードとカソードがはっきりと区別できる程度の大きさをもち,その位置が固定されている腐食電池をいい,異種金属接触電池,通気差電池などがこれに属する。【JIS Z 0103「防せい防食用語」】

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