化 学 (物質の状態と変化)

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 【無機塩の水溶解】

 ここでは,イオン化合物の溶解現象を理解するため,塩化ナトリウムが水に溶解するときの挙動について紹介する。
 
 塩化ナトリウムの溶解
 塩化ナトリウム( NaCl )結晶は,【イオン結晶構造】で紹介したように,正の電荷を持つナトリウムイオン( Na+ )と負の電荷を持つ塩化物イオン( Cl- )が交互に整然と配列している。
 塩化ナトリウム結晶を水に浸漬すると,結晶表面に水分子が吸着する。水分子は,【双極子とは】,及び 【水素結合】で紹介したように,分子内に電荷の偏りがある。
 このため,正の電荷を持つナトリウムイオンには,負に分極している水分子の酸素原子が,負の電荷を持つ塩化物イオンには,正に分極した水分子の水素原子が強く引き付けられる。これを溶媒和(水の場合は特に水和)という。
 
 溶媒和(水和)のエネルギーは,イオン結合のエネルギーを弱めるほどの大きいエネルギーを持つので,溶媒和することで,ナトリウムイオンと塩化物イオンの間の結合が弱まり,周りを水分子で囲まれたイオン(水和イオン)として水中に拡散することができる。
 なお,固体として残る塩化ナトリウムや水溶液は,それぞれに電気的な中性を保つため,離脱する陽イオンと陰イオンの数は同じでなければならない。
 これが次々と起こり,塩化ナトリウムが水に溶解することになる。

塩化ナトリウムの溶解(イメージ図)

塩化ナトリウムの溶解(イメージ図)

 水溶液中の水和イオンの量が増えると,水和イオンの固体表面への衝突が増え,溶解とは逆の過程を経てナトリウムイオンや塩化物イオンが固体表面への付着量が増加する。離脱と付着の量が同じ(平衡状態)になった時の溶液の濃度が溶解度となる。

無機塩の溶解度例

 主な無機塩(イオン化合物)の 25 ℃における水に対する溶解度例を下表に示す。表を見て分かるように,水中でイオンに解離する物質であるが,溶媒量を凌ぐほど多量に溶ける物質から極少量しか溶けない物質まで様々である。
 なお,表に示した塩より難溶性の塩については,溶解度での表記が困難なため,イオン濃度の積で表す溶解度積で表記するのが一般的である。


主な化合物(固体)の溶解度( 25℃,g / 100g H2O )「化学便覧などより」
物質名 化学式 式量 溶解度 物質名 化学式 式量 溶解度
  塩化亜鉛 ZnCl2 136.3 412.3   塩化カリウム KCl 74.55 35.8
  硝酸銀 AgNO3 169.87 239.3   炭酸ナトリウム Na2CO3 105.99 29.4
  水酸化カリウム KOH 56.11 118.3   炭酸水素ナトリウム NaHCO3 84.01 10.3
  水酸化ナトリウム NaOH 40.0 113.8   硫化バリウム BaS 169.4 9.0
  塩化銅(Ⅱ) CuCl2 134.46 75.0   炭酸カルシウム CaCO3 100.1 0.81
  塩化鉄(Ⅱ) FeCl2 126.75 64.2   硫酸カルシウム CaSO4 136.14 0.208
  塩化マグネシウム MgCl2 95.21 55.2   水酸化カルシウム CaOH 74.09 0.169
  塩化アルミニウム AlCl3 133.34 46.8   硫酸バリウム BaSO4 233.39 0.00268
  塩化ナトリウム NaCl 58.44 35.9   塩化銀 AgCl 143.32 0.00193

【参考】

●溶媒和( solvation )
 溶質分子や電離して生じたイオンが静電気力や水素結合などで溶媒分子と相互作用しながら拡散する現象である。溶媒が水の場合には,特に水和という。
 極性溶媒にイオン性物質や極性物質が溶けやすいのは溶媒和による。極性溶媒に無極性物質が溶けにくいのは,溶媒和がほとんど起こらないためである。
 なお,無極性溶媒の場合には,溶媒和とは言わない。
● 溶解度積( solubility product )
 濃度溶解度積,溶解度定数ともいわれ,難溶性の塩について,飽和溶液中での陽イオン濃度と陰イオン濃度の積である。
 溶解度積は温度で決まる定数で,イオン濃度の積が溶解度積を超えたときに沈殿し始める。

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