化 学 (物質の状態と変化)

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 【濃度調整:溶質が固体の場合】

 物質の計量では,固体の場合には秤を用いた質量の計測が,液体の場合は,質量又は体積測定が一般的である。
 特に,溶液濃度を精度高く求める場合は,計量中の溶媒揮発の影響が少ないメスフラスコなどの体積計を用いることが多い。
 溶質が固体の場合には,溶質の質量を天秤で測定し,混合後の溶液の体積を体積計で計測するのが一般的である。この場合の濃度は,物質量濃度(モル濃度),質量濃度(質量体積パーセント濃度)や質量分率(質量パーセント濃度)で表示することが多い。
 ここでは,具体例として固体溶質として塩化ナトリウム( NaCl )を用い,溶媒に約 1 L (リットル),又は 1 kg の水を用いた場合の溶液濃度の求め方について紹介する。
 加えて,溶質に結晶水(水和水)を持つ化合物として,硫酸銅(Ⅱ)五水和物( CuSO4・5H2O )を例に,硫酸銅水溶液濃度を求める際の考え方を紹介する。

物質量濃度(モル濃度)

 溶液の滴定分析,化学反応に関わる実験や反応機構など考える際には,溶液 1 L 中に含まれる溶質の物質量としての物質量濃度( mol / m3 )で表示するのが便利である。
 モル濃度は,全体の体積(溶媒+溶質)に対する溶質のモル数で表す。単位は,SI 表示では mol / m3 であるが,実用では,直観的に把握しやすい mol / L (モル/リットル)を用いる例が多い。なお,体積は温度で変化するので,標準条件以外では,濃度調整時の温度を明記しなければならない。
 例(塩化ナトリウム水溶液)
 20℃で 1 L (リットル)のメスフラスコ(許容誤差 0.4 mL )に,塩化ナトリウムを 100 g 入れ,適当量の水を加え,塩化ナトリウムが溶解したのを確認してから,メスフラスコの目盛線の上縁とメニスカス(液面の屈曲)の最深部が一致するまで水を加えた時のモル濃度は,塩化ナトリウムの式量( 58.44 )を用いて,100 / 58.44 mol / L = 1.711 mol / L = 1711 mol / m3 となる。
 例(硫酸銅水溶液)
 溶質が結晶水(水和水)を持つような化合物でも,次に紹介する質量濃度や質量分率とは異なり,結晶水の量を考慮する必要はなく,対象とする溶質のモル数のみを計算すればよい。
 例えば,硫酸銅(Ⅱ)五水和物の質量( A ),式量( 249.6 )では,硫酸銅(Ⅱ)五水和物 249.6g で硫酸銅(Ⅱ) 1 mol になるので,硫酸銅(Ⅱ)のモル濃度は, A / 249.6 mol / L = ( A / 249.6 ) × 103 mol / m3 となる。

質量濃度(質量体積パーセント濃度)

 質量濃度は,全体の体積(溶媒+溶質)に対する溶質の質量で表す。単位は,SI 表示で kg / m3 であるが,数値を変えずに,直観的に把握しやすい g / L (グラム/リットル)を用いる例が多い。なお,体積は温度で変化するので,標準条件以外では,濃度調整時の温度を明記しなければならない。
 質量体積パーセント濃度で表示する場合は,g / ml 表示時の数値に対し,その百分率で表示する。
 例(塩化ナトリウム水溶液)
 20℃で 1 L (リットル)のメスフラスコ(許容誤差 0.4 mL )に,塩化ナトリウムを 100 g 入れ,適当量の水を加え,塩化ナトリウムが溶解したのを確認してから,目盛線まで水を加えることで,質量濃度 100 kg / m3 の( 10 wt / Vol %)の塩化ナトリウム水溶液 1 ± 0.0004 L を得ることができる。
 例(硫酸銅水溶液)
 溶質が結晶水(水和水)を持つ化合物では,結晶水を除いた量を溶質の量としなければならない。
 例えば,硫酸銅(Ⅱ)五水和物では結晶水を除いた硫酸銅(Ⅱ)の質量を計算して濃度を求めなければならない。すなわち,加えた硫酸銅(Ⅱ)五水和物の質量( A ),式量( 249.6 ),硫酸銅(Ⅱ)の式量( 159.6 )から,硫酸銅(Ⅱ)の濃度は,硫酸銅(Ⅱ)の質量を 0.615 A ( = A × 159.6 / 249.6 )として計算する。

質量分率(質量パーセント濃度)

 質量分率は,全体の質量(溶媒+溶質)に対する溶質の質量の比( kg / kg )で表示する。質量パーセント濃度で表す場合は,百分率を質量分率 X %,又は X wt %と表示する。
 例(塩化ナトリウム水溶液)
 1 kg の水に,塩化ナトリウムを 100 g 溶解した時の質量分率は,
   0.1 / ( 1 + 0.1 ) ≒ 0.0909 ( kg / kg ) = 0.909 wt %
となる。
 なお,この溶液の質量は 1.1 kg である。9 wt %の塩化ナトリウム水の密度(25℃)約 1061 kg / m3 から,25 ℃での溶液の体積は,1.1 / 1061 = 0.001037 m3 = 1.037 L と計算される。一方,塩化ナトリウム固体 100 g の体積は,塩化ナトリウムの密度( 2180 kg / m3 = 2.18 g / ml)から,100 / 2.18 ≒ 45.9 ml と計算され,水 1 ㎏の 25 ℃での体積(997.044 ml )とを合計した体積 1.0429 L より,溶液の体積( 1.037 L )は小さくなる。
 質量濃度で例示した方法で試料を作成した場合は,その温度での溶液の密度( ρ kg / m3 )を計測することで,質量濃度 X kg / m3 は,X / ρ ( kg / kg ) で質量分率に換算できる。
 例(硫酸銅水溶液)
 溶質が結晶水(水和水)を持つ化合物での考え方は,結晶水を除いた量を溶質の量とし,用いた水の量に結晶水量を加えた量を溶媒の量とする。実質的には,結晶水量を溶質の質量,溶媒の質量の何れに考えても全体の質量は変化しないので,質量濃度の場合と同様に,結晶水を除いた量を溶質の量として計算すればよい。
 硫酸銅(Ⅱ)五水和物では,硫酸銅(Ⅱ)五水和物の質量( A ),水の質量( B )とした時,水和物の式量( 249.6 ),硫酸銅(Ⅱ)の式量( 159.6 )から,溶質の質量は 0.615 A ( = A × 159.6 / 249.6 )となり,質量分率( wt %)は,
    100 × 0.615A / [ ( B + 0.385A )+ 0.615A ]= 100 × 0.615A / ( B + A ) となる。

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