化 学 (物質の状態と変化)

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 【気体の溶解】

 固体や液体が液体に溶解する場合に比較し,気体が液体に溶解する場合は,圧力の影響を強く受ける。このため,扱いが固体や液体の溶質とは異なる。さらに,気体分子と溶媒分子との相互作用(特に化学反応)により大きく挙動が変わる。
 
気体の溶解度の表記
 溶解度の表記には,歴史的に【参考】で紹介する複数の表記法がある。現在の高等学校教育では,推奨する表記法を定めず,単位や条件への注意を喚起している。この中で,化学便覧では,【参考】で紹介するブンゼンの吸収係数,その他 2 の値が多く紹介されている。
 液体への溶解度表記では種々の表記法を用いるが,固体への溶解については,主にその他2の表記法,g / 100 g(溶媒)が用いられる。

液体への溶解

 【実在気体の溶解量】で紹介するように,0 ℃の水 1 mL に対する溶解度が,アンモニア( 1299 mL ),二酸化炭素( 1.7 mL ),酸素( 0.0489 mL )と著しく大きい差がある。この差は,気体分子と溶媒である水との相互作用に起因している。
 気体の溶解現象の原理は,ガス状の気体分子が水分子との接触で生成した水和物( aq )として水中に分散することと理解されている。酸素など溶解度の小さい気体は水分子とは反応しないので,直ちにガス状の気体分子( gas )と水和した気体分子( aq )の平衡状態(溶解度)に至る。
    酸素: O2 ( gas ) ⇆ O2 ( aq )
 
 一方,アンモニアや二酸化炭素などの溶解度の大きい気体は,水和物と水分子とが化学反応し,水和イオンを生じる。
    アンモニア : NH3 ( gas ) ⇆ NH3 ( aq ) + H2O ⇆ NH4+ ( aq ) + OH- ( aq )
    二酸化炭素: CO2 ( gas ) ⇆ CO2 ( aq ) + H2O ⇆ H2CO3 ( aq ) ⇆ HCO3- ( aq ) + H+ ( aq ) ⇆
             CO32- ( aq ) + 2H+ ( aq )

 
 このため,水和した気体分子( aq )の濃度が低下する。
 この種の気体では,ガス状の気体分子と水和物との平衡に加えて,水和物と水分子のイオン反応を加えた反応系の平衡で溶解度が決定する。化合物種により平衡定数が大きく異なるので,結果として溶解度も化合物種により大きく異なる。
 
溶解度と温度
 溶媒分子と化学反応しない気体分子の溶解度は,温度の上昇と共に減少し,溶媒の沸点で溶解度 0 となる。水を溶媒として用いた場合には,大気圧の沸点 100 ℃で溶解度が 0 となる。
 次には,空気の主要成分である窒素と酸素の温度依存性(化学便覧より)を紹介する。なお,その温度での溶解量が,固体の溶解度と比較しやすいその他2の表記法,g / 100 g(溶媒)の単位に変換して紹介する。


溶媒別の空気成分の溶解度( 1 気圧, mg / 100g H2O )の温度依存性「化学便覧など」
温度 ( ℃ ) 窒素 ( N2 ) 酸素 ( O2 ) 温度 ( ℃ ) 窒素 ( N2 ) 酸素 ( O2 )
0 2.94 6.95 50 1.22 2.66
20 1.90 4.34 70 0.85 1.86
25 1.75 3.93 80 0.66 1.38
30 1.62 3.59 90 0.38 0.79
40 1.39 3.08 100 0.00 0.00

【参考】

● 固体への溶解例
 通例ではないが,固体に気体が溶解する事例もある。この現象は,活性炭などの固体表面への気体の吸着現象とは異なり,固体の
 結晶格子中の欠陥や空隙への気体分子や原子の取り込み,水素吸蔵合金のように水素の溶解,有機高分子中の骨格構造の中に取り込むなどの現象がある。
 化学便覧には,チタンへの水素の溶解度( 20℃,3.66g / 100g ),鉄への窒素の溶解度( 910℃,25mg / 100g ), 銅への二酸化硫黄の溶解度( 1500℃,0.95g / 100g )などが紹介されている。
 
● 気体の溶解度表記
 1) ブンゼンの吸収係数( Bunsen's absorption coefficient )
 対象とする気体の分圧が 1 気圧( 760 mmHg ,101325 Pa )のとき,温度( t ℃)での単位体積( 1 mL )の溶媒に溶解する気体の体積( mL )を標準状態( 0℃,1 気圧)の体積に換算した値をいう。これは,溶解度係数とも呼ばれる。類似の表記として,気相の全圧で規定した表記法(その他 1 参照)もある。
 2) オストヴァルトの溶解度係数( Ostwald's solubility coefficient )
 温度( t ℃)で,対象とする気体の分圧が 1 気圧( 760 mmHg ,101325 Pa )のとき,単位体積( 1 mL )の溶媒に溶解する気体の体積( mL )を,その実験温度( t ℃),1 気圧で計測した値をいう。
 従って,気体の状態方程式からブンゼンの吸収係数(α)オストヴァルトの溶解度係数(β)には次の関係が成立する。
   β=α×( 273.15 + t )/ 273.15
 3) Kuenenの吸収係数
 対象とする気体の分圧が 1 気圧のとき,温度( t ℃)の溶媒 1 g に溶解する気体の体積( mL )を,を標準状態( 0℃,1 気圧)の体積に換算した値をいう。
 類似の表記として,気相の全圧を規定した表記法(その他 2 参照)もある。
 4) その他 1
 気相の全圧(気体の分圧+溶媒蒸気圧)が 1 気圧のとき,温度( t ℃)での単位体積( 1 mL )の溶媒に溶解する気体の体積( mL )を標準状態( 0℃,1 気圧)の体積に換算した値をいう。
 5) その他 2
 気相の全圧が 1 気圧のとき,温度( t ℃)の溶媒 100 g に溶解する気体の量( g )をいう。

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